第12話 日本出国
学校が夏休みに突入した。
その次の日、予定通り両親のいるアメリカへと向かうことになったのだが。
「暑い……」
現在、家から駅へと向かう道筋。夏らしく太陽が真上に輝いている。
毎年思うけど、日本の夏って暑すぎない?
こんなじめじめとつらすぎる……エアコンの効いた室内に帰りたい。
「お兄ちゃん、楽しみだね!」
隣に暑苦しいのが……いや、流石にそれは可哀想か。
「雛香、少し離れてくれ」
いつものようにくっついてくる雛香のせいで余計に温度が上がってる。
というか、雛香は暑くないのかよ。
「雛香はお兄ちゃんがいれば体調万全だから」
何だその理由……僕から涼しい空気でも出てるのか?
ともかく、雛香は離れてくれた。
これで少しは……
「それでも暑いものは暑い……」
多少下がっても感じる暑さは何も変わらない。
「……帰りたいです」
僕の気持ちをわかってくれるのがここにもう一人。
「里楽さん、大丈夫?」
「大丈夫じゃありません」
今この場にはなぜか里楽さんもいる。
母さんから「友達を一緒に連れてきてもいいわよ」 と言われた雛香が里楽さんを誘い。
当然それを断った里楽さんだったが、なぜか真田さんから里楽さんも一緒に連れて行くようにとお願いをされた。
里楽さんも流石にそれは拒否できなかったのかこうして一緒に行くことになったのだ。
まぁ、運動不足って話をしてたから、真田さんもそういうのを心配したんだと思うよ。
……ひょっとして里楽さんのダンジョン攻略の様子を話したせいだったり?
いや、巡り巡って結局里楽さんの運動不足なので。
「……」
だから、里楽さんそんなに恨めしげに僕を睨まな……あ、睨んでるの太陽か。
うん、それならわかる。
「まぁ、向こうに行っちゃえば多少は涼しくなるはずだからね」
「ええ……西海岸でしたっけ?」
「だね、こっちほど湿気がないからかなり違うよ」
場所によるんだろうけど、これから向かうところは年中過ごしやすい気候で有名だ。
「……日本の暑い時期をスキップできると考えれば多少はマシになりますか」
あー、その考え方はいいね。
「むぅ……お兄ちゃん、里楽ちゃんと仲良さそう」
「うん? 雛香?」
一瞬雛香の里楽さんを見る目が変わったような?
いや、気のせいか……
「えいっ!」
と、何を思ったのか、またしても雛香がひっついてきた。
「雛香暑いって……」
「どうせちょっと変わったくらいじゃ何も変わらないんでしょ! だったらくっついてたほうがいいじゃない!」
どういう理屈なんだ?
結局、ひっつかれたまま駅へ、そのまま電車に乗ることになった。
めちゃくちゃ周りから見られたよ。
「はぁ、ここから飛行機で10時間くらいかぁ」
チェックインを済ませて、入場待ちの状態でラウンジで3人でくつろぐ。
「ずっと大人しくしてないといけないから大変だよね」
「まぁなぁ、エコノミーじゃないからそこは楽ではあるけど」
僕らの飛行機代は父さん、母さん持ちだ。
「まぁ、足は伸ばせるから寝ているのが一番だな」
多少ネットはつながるけれど、流石にネットで動画とかは見れないし。
「ゲームもできませんしね……」
里楽さんはゲームばっかりやってるもんね。
「10時間もあればダンジョンを2回は攻略できるのに」
そこまでダンジョンに入りたいと思ってもらえるのはありがたいような……少し落ち着けと思うような……
「……ひょっとしてダンジョンに入れるんじゃないですか?」
「えっ?」
里楽さんがなんか言い出した。
「飛鳥さん、ダンジョンの入口と出口ってどうやって決めてるんですか?」
「うん? 普通にダンジョンに入るときの話だったら、スマホの位置をベースにして入口と出口を作ってるけど」
「そうですよね? ということは、例えば電車の中で入って出た時はどこになりますか?」
「えっ? そりゃ……スマホが移動してるわけだから……あっ……」
あ、あー、そうなると確かに、誰かがスマホだけ持っていればダンジョンに入ったまま移動ができるってわけか。
「ほんと! それなら飛行機の中でもダンジョンに入れるってこと!?」
「いや、確かに理論上はそうだけど……いや、ネット通信はしてるからネットがつながってる必要が……」
「それも、あくまでも個人データのやりとりをしてるだけで、それほど重くないですよね? 動画とかは見れませんがそれくらいだったらできるのでは?」
うん、確かにあくまでもアプリのデータとかの照合がメインだけど……
「……確かにいけるかも」
うん、考えたけど、多分普通にいける。
というか、今まで気が付かなかったけど、もしも電車とかで移動中とかにダンジョンに入った人がいて、そこに取り残されたらもっと早くなにか連絡来てるはずだし。
「よーし! それじゃあ、お兄ちゃん、雛香のスマホだけ持ってきてね!」
「お、おい! ちょっと待て!」
流石にそれは駄目。ずるいとかではなくて。
「飛行機の座席とかで座ってないと変だろ」
お客様の呼び出しとかされても答えられない。
「あ、そっか……」
「ふむ……でしたら、席に座ってからなら問題ありませんね?」
「えっ? 確かに……機内でカーテンとか締めたら何も言われないかもだけど……」
「これでしたら、飛鳥さんに迷惑をかけずにいけますね」
里楽さんもすっかり入るつもりだ……
「……はぁ……いいけど、降りる前にはちゃんと帰ってきてね」
僕はため息をつきつつ、そう言うしかなかった。
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GW投稿も既に6日目。残り明日だけですね。
私の作品は章の中でも3,4個の節で区切りをしていて、掲示板回が目安になっていることが多いです。
今回の場合は、11話が1節の最後、12話が2節の最後になります。区切りが悪いですが気にしない方向で。
おかしいんだよなぁ……プロットだと雛香と2人きりでのアメリカ行きだったはずなのに、なぜか里楽さんも一緒に行くことになってた。
それもこれも里楽さんの運動不足が悪い。
あ、☆評価の方もありがとうございます。
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