第11話 夏休みの予定
能力アップダンジョンを公開してから数日が経った。
「影響も少しは落ち着きましたね」
ダンジョンの入場者数は少しずつ減ってきた。
「それでも、まだ毎日10万人は入ダンしているけどね」
そりゃ、初日の20万人と比べれば半分になったけど、それでも10万人って凄いよね。
「途中は流石に減ったけど、モンスターから受けるダメージが減ったって情報が出たらまた増えたよね」
効果を感じられないからとやめてた人もいたみたいだけど、いわゆる検証勢という人たちが条件を整えて検証した動画を出してからはまた増えた。
防御の場合は、自分に入ってくるダメージっていうわかりやすい対象があったから比べやすかったんだと思う。
「しかし、攻撃と賢さが人気なことは変わりませんでしたね」
「だね。やっぱり効果があるってわかれば自分の欲しい能力を伸ばしたいんでしょ」
それでも他の能力が人気ないわけじゃないけどね。
「近い内に高難易度ダンジョンを出す予定なんですよね?」
「うん」
このダンジョンは今の普通の人だとかなりクリアが厳しいくらいのダンジョンの予定だ。
能力をしっかり上げてから挑む高難易度ダンジョンってところかな。
「それで能力アップの効果を見る感じだね」
これが安定してクリアできるようになったら、もっと難しいダンジョンを導入する。
難易度に関しては、こういう方針にするつもりだ。
「まぁ、成長が遅いようだったらまた何か考えるけど大丈夫でしょ」
「もうそろそろ夏休みですし、ダンジョンに入る人は増えそうですしね」
そう、僕らの学校も来週から夏休みに入る。
こうしてダンジョンに入り浸る学生はすぐに成長していくでしょう。
「あ、そういえば、せっかくの夏休みなんだから何かしらイベントはやりたいよね」
「夏のイベントは定番ですからね」
夏といえば海とかかなぁ……ちょっと考えておこう。
「まぁ、すぐにってわけじゃないから、考える時はまた相談にのってね」
「もちろんです」
こうしてしばらくは様子を見るという期間へと入った。
「……それはそうと、飛鳥さん。最近、父と連絡を取っていますか?」
えっ? なに突然?
「うん? 真田さんとは、定期的に連絡を取ってるけど……最低でも2週間に1回くらいは確実に」
「……なるほど?」
なんでそんなことを聞いてくるんだろう?
「実は最近珍しく父から連絡がありまして」
「うん? いいことじゃないの?」
なんか、真田さんあんまり里楽さんに連絡取ってなかったみたいだから。
「……連絡が来ること自体はいいんです。しかし、『賢さよりも体力を上げなさい』という内容だったんですが」
「あっ……あー……」
なるほど、そういうことか。
「……飛鳥さん、私の攻略のことを父に話しましたね? しかも、動画付きで」
バレたか……
「いや、うん……せっかくだったからね?」
里楽さんが鋭い目で僕のことを見てくる。
今の僕は、盗撮がバレて捕まった犯人のようだ。
……まさにその通りか。
「おかげで、運動用のメニューが送られてきました」
「あー、そりゃまた……」
真田さんと話した時に、動画と一緒に攻略の様子も話したんだけど、それが原因かな……
「いや、でも少しは運動も必要じゃない?」
「……動くのは面倒です」
……ダメ人間がおる。
「飛鳥さん、体力の実を融通してくれませんか?」
「流石にそれはズルでは!?」
いや、でも、里楽さんにはお世話になってるし……難易度をちょっと下げるくらいなら……
「……まぁ、冗談です。代わりに運動する時は付き合ってもらいますからね」
「あ、うん。そのくらいなら」
なんだ、冗談だったのか……
まぁ、運動くらいだったらいくらでも付き合うよ。
多分、雛香も呼べば付き合ってくれると思うし。
「……そういえば、雛香はまだ電話してるのかな?」
ちょうど思いついたので、話を逸らすことに。
「……雛香さんでしたら、まだご両親と通話中です」
後ろを見ると、少し離れたところで雛香が電話をしている。
「うん……そうだね、雛香もそれがいいと思う」
電話の相手は母さんだ。
雛香のダンジョン攻略の様子を2人に送ったんだけど、それについて雛香と話しているみたい。
きっと感想でももらってるんだろう。
「あ、そうなの? じゃあ、お兄ちゃんに変わるね!」
うん? 僕?
雛香がこっちに近寄ってきた。
「お兄ちゃん、ママがお兄ちゃんに変わってって」
「うん? 母さんが?」
一体なんだろう?
「もしもし?」
「あっ? 飛鳥? ママよ!」
うん、声を聞けばわかるって。
「飛鳥、元気にしてるの? また攫われたりしてない?」
またって……いや、そもそもその攫われたってのも誤解だったんだし。
「元気にはしてるよ、それで、いったい何の……」
用? と聞こうとしたのだが……
「雛香ちゃんの攻略の様子見たわよ。あの子ったら頑張ってたじゃない。訓練も続けているみたいで嬉しいわ」
いや、それ僕に話すこと?
その後も矢継ぎ早にぽんぽんと話題を出してくる母さん。
「あ、そうだ、あなたと雛香、もうすぐ夏休みでしょ? こっちに遊びに来るつもりはない?」
そんな本題に入るまでに結構な時間がかかったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます