第7話 里楽さんの攻略その1
能力アップダンジョンの1日目は特にトラブルもなく無事に終わった。
『最終的な入場者数は20万人を突破いたしました』
改めてとんでもない人数だと思う。
どこかの展示場でやるイベントがそのくらいじゃなかったかな?
あれ? そう考えるとそれなり?
いやいや、冷静に考えると多いか。
流石にそれだけの人数だと、ミミが大変なのはしょうがない。
そんなわけで2日目に突入した。
「ネットの評判では、これ本当に効果があるのか? と懐疑的な声もあるようですね」
朝、里楽さんからそんな報告をもらった。
一応事前に、1個だけではあまり効果はないって告知はしてあるんだけど、やっぱり効果が感じられないと不安なのかな?
でも、効果を上げるわけにもいかないしね。
「それじゃあ、人数は多少は落ち着くかな?」
「……多少でしょうね、今までにポーションや回復の杖などを出していますから、1個程度で効果がないと判断はしないでしょう」
今までの実績ってやつかな?
そうなると今日も変わらず忙しいままか。
「ごめんね、ミミ」
『作業にリソースを割けば問題ありません』
落ち着くまではそういう感じになっちゃうかな。
なにか考えないといけないかなぁ……
「里楽さんは今日はダンジョンに行くんだよね?」
「はい、そのつもりです」
ふむ……
結局昨日は里楽さんとずっと一緒に見てたから賢さのボスとの戦いはまだ見ていない。
里楽さんが挑むところはぜひとも見ておかないとね。
「……どうせ駄目と言っても見るのでしょうし、禁止はしませんが特に面白くはないと思いますよ」
どうやら、僕が見るつもりなのがわかっていたようだ。
「まぁ、面白いかどうかは見てみないとね」
多分、面白い戦いになると思うけど。
里楽さんは準備を整えて、ダンジョンの中へ入っていった。
「それじゃあ雛香も行ってくるね、あ、里楽ちゃんがボスに挑むまでには帰って来るから一緒に見ようね!」
雛香もそんなことを言い残して入っていった。
まぁ、話し相手がいるのは助かるけどね。
「ただいまー、間に合ったよね?」
そんなわけで数時間、宣言通りに雛香が帰ってきた。
「随分早かったな、里楽さんは、まだもうしばらくかかりそうだよ」
「良かった! 久しぶりにお兄ちゃんと2人きりだって思い出して急いでボスを倒してきて良かったよ」
2人きりって……そういえば、里楽さんが一緒にいることも増えたけど……
そんなモチベーションで早く討伐できるものなんか?
いや、1回倒しているボスってのもあったんだろうけど。
結局、雛香は今までに素早さ、攻撃、体力、防御のボスに挑んで今のところ全てに勝っている。
挑んでいないのは、賢さだけ。雛香に1番必要なやつなんだけどなぁ……
「里楽ちゃんは今どのあたり?」
「えっと、今は5階だな」
ペースとしては普通より遅いくらいだと思う。
「そっか、そっか、私にも見せて!」
雛香が僕の隣に座って画面を覗き込む。
ちょっと近い……まぁ、今更か……なんかいい匂いするけど気にするほどじゃない。
「あれ? 里楽ちゃん、弓なんて使ってるの?」
「ああ、最初に拾ったのが弓だったのをそのまま使ってる感じだな」
里楽さんは、ダンジョンに入って最初に弓を拾ってそのままずっと弓を使っている。
途中で別の武器も拾ったけど、それでも変えずに使っているからあえて使っているんだと思う。
「弓って使うの大変じゃない?」
確かに、狙いを定めたり、距離を考えたり、剣とかとはまた違う難しさがあるね。
その分、使いこなせれば一方的に倒せるっていうメリットはあるけど。
「まぁ、見てな」
ちょうどタイミングよく、敵が出てきた。
敵はゴブリンアーチャー、里楽さんと同じく弓を使ってくる敵。
お互いを認識して、構える姿はまるで居合みたいだ。
そして先に矢を放ったのは、ゴブリンアーチャーの方だった。
しかし、その矢は里楽さんに当たることはなく、すっと横に移動して避けた。
移動した直後に里楽さんもカウンター気味に矢を放ち、それは、ゴブリンアーチャーの額めがけて一直線に飛んでいった。
「ナイス!」
うん、いい腕。
射出が遅かったのも攻撃を避けてから放つため。
さっきから、こうやって勝ってきている。
「へぇ、ちゃんと戦えるんだね」
雛香は意外そうに里楽さんの戦闘を見ている。
確かに、里楽さん基本的にポンコツ……あまり運動得意じゃなさそうだし、ここまで来れたのが意外なくらいではある。
ひょっとして弓とか使ったことあるのかな? 後で聞いてみよう。
ちなみに、後で実際に聞いてみたところ。
「弓ではありませんが、遠距離から狙いを定めるのは得意なんです」
という返事をもらった。
……ゲームの話だよね? 流石に現実で遠距離攻撃する武器とか……
いや、そういえば里楽さんも真田さんの娘だし、護身用とか……考えないようにしておこう。
「あれ? 里楽さん座っちゃった?」
「ああ、それな」
戦闘が終わったあと、里楽さんは壁際まで行き、壁を背にして座った。
「多分だけど、疲れたんじゃないかな?」
「えっ?」
さっきから戦闘のたびに立ち止まって休んでいる。
「……戦闘の度に?」
「そう、あとは階を移動した時にも」
まぁ、かなりの頻度で休んでいると言えるだろう。
「……休み過ぎじゃない?」
「うん、まぁ、僕もそう思う」
里楽さんに必要なのは賢さじゃなくて体力の実なんじゃないかと。
そのあたり雛香と半々くらいにすればいいんじゃないかなぁ……なんて。
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