第4話 雛香の攻略その1
その後も、能力アップの種、またそれを配置するダンジョンについて、さらに検討を重ねた。
そして、ついに公開の日になった。
「……ネットが凄いことになっていますね」
事前に情報を出した時から、かなりの騒ぎになっている。
「問い合わせの数も随分と増えたからなぁ……」
主にアイテムを融通してくれないか? みたいな内容みたいだから無視してるけど。
「ちなみにネットの情報だと、どれが人気そうなの?」
「見ていた感じですと、どれも人気ですが、賢さと攻撃が特に人気があるようですね」
そっか、攻撃はダンジョン攻略に役立ちそうだし、賢さはリアルに応用が利くからかな?
「里楽さんも賢さ目当てでダンジョンに入るんだよね?」
「はい、少し様子を見てからにしますが挑戦してみるつもりです」
里楽さんの攻略は気になるから後で見ることにしよう。
「ちなみに、雛香はどうするんだ?」
雛香は昨日までは悩んでいたみたいだったけど。
「雛香は素早さにすることにしたよ!」
「素早さ? そりゃまた何で?」
雛香のことだから、てっきり攻撃か体力に行くと思ってたんだけど。
「やっぱり素早さがあれば、攻撃にも回避にも役立つからね! それにすぐにお兄ちゃんのところに駆けつけられるようになるし」
そういう理由かよ……
雛香にはぜひとも賢さを上げてほしかったんだがなぁ……
まぁ、強要はしないけど。
「さて、時間だ」
「出た! 行ってきます!」
時間になった瞬間、雛香はダンジョンへ入っていった。
さて、それじゃあ僕は様子を見守ろうかな。
「ミミ、様子はどう?」
『現在、ダンジョンへの入場者は……1万人を超えたところです』
「早っ!」
まだ始まって1分も経ってないのに、そんなにいったの!?
『現在2万人を突破しました』
また増えてるし……
「これは歴代記録になりそうだね」
『……』
「あれ? ミミ?」
話しかけたのに反応がない。
『申し訳有りません、対応作業の方にリソースを割いておりました』
「あー、ごめん、そっちに集中していいよ」
『了解いたしました』
流石のミミも、急激に増えた入場者数の対応に追われているようだ。
一応僕のレベルが上がるに伴って、ミミの処理能力も上がってるから間に合わないことはないだろうけど、会話するほどの余裕はないか。
それじゃあ、僕は攻略している人の様子を直接見ていくことにしようかな。
とは言っても、内容的には一般ダンジョンを少しだけ難しくしただけだから、そこまで面白いシーンは見れないだろうけど。
面白そうなのはやっぱりボスとの戦闘あたりかな?
「となると、やっぱり雛香を見るのがいいかな?」
どうせ雛香が一番乗りするだろうし。
「雛香さんでしたら、現在1階を突破し、2階を攻略中ですよ」
「流石雛香……」
少し難易度を上げたくらいじゃ、雛香には関係ないみたいだね。
『これで10階!』
その後、しばらく雛香の様子を見ていると、案の定雛香がボス階へいち早く到達した。
ちなみに、雛香はここまで飛ばして来たのでほとんどアイテムを拾っていない。
今まで持っていた武器だけでここまで来ている。
『えっと、この中から選択するんだっけ?』
ボス階に入った雛香の前には、5つの魔法陣がある。
『どれが素早さかな?』
ひとつずつ確認をしていく雛香。それぞれマークがあって、どの能力かわかるようになっている。
『あっ! 足のマーク! これが素早さかな?』
うん、正解。
ちなみに、攻撃は剣、防御は盾、体力はハート、賢さは本のマークだ。
『それじゃあ、これで!』
なんの躊躇もなく雛香は選んだ魔法陣の中に入る。
すると、部屋にあった魔法陣が全て消えた。
代わりに壁に扉が出現した。
『これに入ればいいんだよね?』
そう、そこから先がボスとの戦闘ゾーンだ。
雛香は扉の先へ向う。
『広い部屋だけど何もいない?』
ボスとの戦闘ゾーンは結構な広さになっている。
その中には、何もいないように見えるが……
『いや……あれは汚れじゃなくて影?』
部屋の中心には、地面に黒い影がある。
一見すると、汚れのようなそれだったが、少しずつ盛り上がっていき立体になっていく。
『……えっと……タイヤ?』
そうして出来上がったのは、黒い影のようなタイヤだった。
「なるほど……そういうボスですか……」
その姿を見て、里楽さんは納得したようにつぶやいた。
流石里楽さん、今回のボスの特徴に察しがついたようだ。
今回のボスはシャドウミミクリーという名前のボスだ。
ミミクリー、つまり擬態をするモンスターでその姿を色々と変えることができる。
今回はその特徴を活かして、5種類の形態を取るようになっている。
その5種類とはもちろん、攻撃、防御、体力、素早さ、賢さの5つの能力を活かした形態だ。
今回、雛香は素早さのボスを選んだので、素早さに特徴を持つタイヤの姿になっているというわけ。
「さぁ、雛香、相手は速いぞ、どうやって戦う?」
雛香がどうやって戦うかちょっとした見ものだな。
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