第3話 能力強化アイテム

「前にも言ったけど、改めて確認しようか」


 ダンジョンの構想自体は結構前からあった。

 大型連休から帰ってきて、本当はすぐにでも公開するつもりだったんだけど……


 冒険者っていうのができて、公開したら混乱になりそうだから様子を見てたんだよね。

 そのせいで落ち着くまで待つことになったけど、おかげで良いダンジョンが作れたと思うよ。


「まず大前提だけど、このダンジョンでは自身の能力を向上させることができるアイテムを手に入れることができる」


 しかもドーピングみたいな一時的なものではなく永続的なものだ。

 当然、ダンジョンの中だけじゃなくて現実にも影響する。


「ゲームでよくあるステータス強化アイテムみたいなものですね」


「うん、使うアイテムによって、強化される能力も変わるよ」


 強化される能力は、防御、攻撃、体力、素早さ、賢さの5つ。

 ステータスなんてものは現実には存在しないけれど、例えば防御力が強化されると、相手から攻撃を受けた時も痛くなくなり実際に自身も傷つきづらくなる。


「別に筋力が強化されるわけでもないんですよね?」


「そうだね、見た目が変わったりはせずに質が変わるって方が正しいと思うよ」


 このあたりは前世では普通にあったけど、こっちの世界ではないものだから説明が難しいけど。


「賢さの能力アップをしたら学校の成績が上がったりとかするのでしょうか?」


「まぁ、記憶力が上がったり、頭の回転が速くなったりはするかもね。ただ、知らないことは知らないままだけど」


 だから学校の勉強が楽になるかは別の話だね。

 学校での勉強ってのは、知識や考え方を増やすことも重要だからね。


「それにこれは前も言ったけど、1個使ったからって劇的に能力が変わったりはしないよ」


 その辺りは数値では測れないものだけど、そんなすぐに効果がでちゃったらそれこそ大変なことになるし。


「5個くらいつかってやっとちょっと効果を実感できるくらいじゃないかな?」


 積み重ねてやっと効果を感じられるくらいだ。


「それでも人気はでそうですが……」


 うん、まぁ、どんな人でも確実に能力が上がる保証があるからね。

 スポーツ界隈とか、凄い騒ぎになりそう……


「取引価格とかも凄いことになりそうですね……」


 それはそう。お金がある人がネットオークションで買って使いまくるとかなりそう。


「ただ、どのくらいネットオークションに出回るかはわからないかな。自分で使う人も多いだろうし」


 自分で手に入れたアイテムを売るか自分に使うかはその人次第だからね。

 自分に使ったほうが、今後の効率にはいいけど、お金が欲しい人は売るだろうし。


「まぁ、でも冒険者の数を考えると、それなりに出回ることになるだろうし適度なところで価格は収まると思うな」


「……父が価格調整とかしそうです……」


 実際にその辺りの値段設定とかは真田さんに任せているからね。


「とりあえず、能力強化アイテムに関してはこんなところかな?」


 あ、そうだ忘れてた。


「能力を上げるアイテムだけど、前に話した時はポーションにするつもりだったけど種にしたよ」


「種ですか?」


 そう、本当は飲んで使うポーションにしようかと思ってたんだけど、毎回ポーションだと芸がないからね。


「種は、飲み込むとその効果が発生するアイテムだよ。そんな作品があったからね」


 こっちとしては効果が出るなら、形はなんでもいいからね。わかりやすい方がいいと思ってそうした。



「で、ダンジョンの構造なんだけど、こんな感じにしてみた」


 設計したダンジョンを里楽さんに見せる。


「……これは……一般ダンジョンとあまり変わりない気がしますが……」


 設定的には、全10階層の基本ランダムダンジョン。


「そうだね、基本的な一般ダンジョンよりちょっと強くしただけのランダム系なんだけど、ほら、ここだよ」


「……ボス部屋に……あれ? ボス召喚ポイントが5つ?」


 そう、本来ならボス部屋にはボスを召喚するポイントが1つだけある。

 そこから、ボスが召喚されて戦うことになるのだが。


「5体のボスと同時に戦う……いえ、これは選択式ということですか?」


「そゆこと、ボス部屋にたどり着いた人は、5つのポイントからボスを選んで戦うんだよ。で、勝つとそれぞれの能力が上がる種が手に入ることになる」


「なるほど……自分で好きな能力を選んで上げられるというわけですね」


「うん、一応ダンジョンの中に低確率で能力アップのかけらが出るようにしてるけど、ボスを倒せば確実に手に入るってわけ」


「ランダムだと自分の欲しい能力が出ないこともありますからね……好きに選択できるなら、それはいいかもしれません」


「まぁ、その分、ボスはそれなりに強めにするけどね」


 簡単に倒されちゃったら、それはそれでつまらないし。


「どのくらいの難易度になるんですか?」


「うーん……強さで言うなら、魔道具を使ったダンジョンと同じくらい? ただ、それぞれのボスで戦い方が変わるから、1個クリアできても他は無理とかもあるかも?」


「なるほど……」


 それを聞いて、里楽さんは思案顔だ。


「ひょっとして、里楽さんも気になるの??」


 今まで里楽さんは最初に魔道具のテストをしてもらって以降潜っていないようだったけど……


「ええ……賢さが上がるのは気になりますね……色々と応用が利きそうですし」


 流石の里楽さんでも能力アップのアイテムは気になるのか。


「でも、里楽さんダンジョン攻略とか大丈夫なの?」


 正直、あんまりモンスターと戦うようには見えないんだけど……


「任せてください、これでもゲームはたくさんやってますので」


 ……それって結局戦いとは別じゃ……

 いや、大愛さんみたいな例もあるし……

 まぁ、潜るってなら止める気はないけどね。


「それじゃあ、ボスの詳細に関しては伏せておくね」


 画面を消しておく、本当はボス情報も見せようかと思ってたけど、ネタバレになるからね。


「……ちっ」


「……!? 里楽さん今舌打ちした!?」


「してませんが?」


 いや、してたよね?

 実はしれっと楽しようとしてたとかかな?

 最近里楽さんも僕に馴染んできたのか、こういうところも見せてくれるようになったのはいいことなのかどうか……


 まぁ、里楽さんが、どうしてもってなら見せてもいいけど、最初の1回くらいは普通に攻略してもらうことにしようかな。

 贔屓? そりゃ、お世話になってる友人だからね。贔屓くらいするよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る