第34話

 DPをお金に変える……凄い騒ぎになりそうだけど……


「とはいえ、僕はシステムを作るだけなんだけどね」


 難しいところは真田さんや両親にお任せだ。

 僕は基本的にはダンジョンを作るのが仕事だからね。


「まぁ、お金周りは真田さんに任せよう」


 そうそう、むしろこれまでが適当過ぎたんだよね。

 ユーザーを管理するためのサーバーとか、システムとか組むのは僕自身でやってたけど、両親に借りてもらってるサーバーを使ってたわけだし。

 今後はそのあたりも、含めて真田さんがやってくれることになった。


「飛鳥くん……もうちょっとお金に興味を持ったほうがいいんじゃないか?」


 なんて苦い顔で言われてしまったし。

 ただ、僕個人としてはあんまりお金儲けとかには興味ないんだよね。

 まぁ、適材適所。僕はダンジョンを作るのを頑張ろう。



 数日後、実際にアプリ内に課金システムを導入した。

 真田さんがどう手を回したのか知らないけど、こんなに早くできるなんて思ってなかったよ。

 そして、肝心のプレイヤーからの反応は……


「んー、賛否両論って感じかな?」


 唐突に導入されたから色々な反応があるのは当然だ。でも、個人的には荒れているってほどは荒れていない。

 今は課金とかも当たり前の時代だし、そういうイメージなのかも?


 システムを導入した影響は色々なところに出てきている。


「とんでもない額だなぁ……」


 累計課金額という真田さんから送られてきた。

 それを見ると、想像以上に課金している人が多いとわかった。


「まぁ、自分で持っている魔導具を変換して売るって考えると、儲かるから課金したいって気持ちもわかるか……」


 これまではDPがなかったから、変換できなかったけど、DPを現金で買えるようになって、これまでよりも早く交換できるようになったのだ。

 オークションに出せば儲かるから、いち早く変換した人がいたんだろう。


「でも、今はもうそこまで儲からないかな?」


 徐々にネットオークションに出品されるアイテムの価値が下がってきている。

 今では、儲かるには儲かるけど以前のほどの派手さはなくなっている。

 アイテムを探して、DPを溜めて変換するという労力からするといい感じになってきてると思う。


「新しいダンジョンもいい感じで攻略されているね」


 価値が下がったのは、新しいダンジョンを導入したのもあると思う。

 この新しく追加したダンジョンは、今までのβダンジョンとイベントダンジョンを混ぜたような形になっていて、宝箱から魔導具が出るようになっている。

 これで、回復の魔導具が出回るようになったのが、価値が下がった要因の一つだと思う。限定じゃなくなっただけで、半分以下になったからね。

 ……その時には儲けてた人から批判っぽいのも来たけど……まぁ、ミミがその辺り弾いてたから僕はあんまり見ていない。

 今後も、お金周りは色々とありそうだけど、真田さんに任せよう。丸投げじゃなくて、任せるだよ。ここ重要。



「さて、それじゃあ僕は次の計画を立てようかな」


 ここ最近は課金システムを作ったり魔導具が出るダンジョンを作ってたから、それどころじゃなかったんだよね。

 ただ、やりたいことは決まっている。


「もうちょっと難しいダンジョンを作りたいんだよね」


 今のダンジョンは正直、初心者向けだ。

 もちろん、ダンジョンも戦うのも初めての人しかいないんだから、しょうがないんだけど、こっちとしてはもうちょっと難しいダンジョンを作りたいんだよね。


「ただ、前世みたいなスキルがあるわけでもないからなぁ」


 前世だとスキルっていうわかりやすい指標があったから、戦えば戦うほど戦闘が強くなることを実感することができた。

 しかし、こっちの世界ではスキルもないから、頼れるのは戦闘の慣れとか、知識だけ。

 そうなると、下手に難易度を上げすぎると誰も攻略できないダンジョンになってしまう。

 自分のステータスが見れるわけでもないしね。


 唯一設定してあるのは、HPだけだ。これは、ダンジョン内で死なないようにするために設定されているから、全員が同じ値になっている。


「あとは武器とか防具のステータスかぁ」


 拾えるアイテムを強くしてあげれば強いモンスターとも戦えるかな?


「いや、それだと変わらないか……」


 結局拾えるアイテム次第で戦いが変わるなら今と何も変わらない。

 目指したいのは、そこじゃなく、個人の能力や努力次第で戦えるって部分だからなぁ……


「そうなるとやっぱりダンジョン創造スキルのレベルが足りないかな」


 僕のレベルが上ってくれば、できることも増えるからそれでなんとかすることもできる。

 ただ、それには圧倒的にレベルが足りてない。


「結局レベル不足にいきつくのかぁ……」


 高難易度ダンジョンはお預けかな。


「いや……でも、徐々に……例えば罠とかだったら……」


 要素を増やしていくのならいいよね? それにちょっと苦戦するくらいのモンスターを配置して……いっそのことギリギリクリアが難しいくらいの難易度のダンジョンを導入してみるのもいいかもしれない。


『……検討中のところ失礼いたします』


 どこからともなく声が? あ、パソコンからか。


「……ミミ?」


『はい、お伝えしたい連絡があります』


 お伝えしたい連絡?

 父さんや真田さんだったら、僕に直接連絡が来るからミミを経由することはないんだけど。


「誰から連絡?」


『差出人はダイアという方です』


 ダイア? 誰? 聞いたことない名前だけど?


『以前、観察されていたプレイヤー。Dさんと呼ばれていた方です』


「あ、あー」


 Dさんか。ダイアって名前なんだ……テストプレイの時もあんまり意識してなかったから忘れてたよ。

 というか、適当にDさんとか読んでたけど、プレイヤー名はダイアだったんだ……これは偶然の一致。


 あれ? それにしても、Dさんから連絡?


「要件はどんなの?」


 こっちはプレイしてるのを見てるけど、あっちから連絡なんて……テスト以降は全然連絡取ってないのに。

 あっちからは連絡がつくから、話題になっている今、おかしくはないんだけど……事実テストをした他の人からは連絡が来たことがある。

 まぁ、融通してくれとか、そういう要望みたいのだったので以降はミミが全部弾いているっぽいけど。


 わざわざ、ミミが伝えてくるってことはそれなりの要件かな?


『簡単に申し上げますと、現状よりも病気を治すようなポーションはないのか? という要望です』


 ……Dさんからも要望来ちゃったかぁ。

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