第27話

「なるほど、イベントですか」


 たっぷり時間をかけて部屋の片付けをして、ようやく本題に入ることができた。


「ええ……僕自身あまりそういうゲームに触れてこなかったので……」


 友人の付き合いでソーシャルゲームをやることはあるけど、そのくらいだ。


「ちなみに、里楽さんは……」


「私は……まぁ、それなりに……」


 うん、ここに来るまではあんまりそういうの詳しくないと勝手に思ってたんだけど、この部屋入ってから印象がめっちゃ変わったよ。

 部屋を片付けた時に、ゲーム機を大量に発掘した。古いものから最新のハードまで。

 さらに、僕のノートパソコンなんかとは全然違う、キラキラ光るゲーミングマシンまであった。

 さっきの、配信の話もそうだけど、どうやらそっち系に造詣が深いみたいだ。

 いや、イベントに詳しいかはまだわからないけど。


「どこまでお手伝いできるかはわかりませんが、できる限りお手伝いいたします」


 ひとまず、里楽さんはかなり戦力になりそうだ。

 そんなわけで、早速……おっと、


「そういえば、里楽さんってまだダンジョン入ったことなかったでしたっけ?」


「ええ、そうなります」


 内容を考えるなら1回入ってもらったほうがいいよね。


「それじゃあ、チュートリアルのやつに……」


「いえ、それはいりません」


 えっ?


「内容については動画などで見させてもらっているのでおおよそは把握しています」


 他の人が潜ってるところを見たことがあるのか。でも、自分で入るのとは違うと思うんだけど。


「それよりも、その魔導具とやらが気になります」


 うーん? これは……


「ひょっとして里楽さん魔法使ってみたいんですか?」


「あくまでも、確認のためです……」


 うん、まぁ、そういうことにしておこう。


「えっと、それじゃあ、魔導具が使えるダンジョンを……」


「できれば色々な種類の魔導具が使えると助かります」


 やっぱり使いたいだけじゃ?



 そんなわけで、里楽さんの要望に従って、魔導具の種類に重きを置いたダンジョンを作った。

 強力な魔導具を置くためには、それに応じた難易度にする必要がある。これがダンジョン創作スキルのルールだ。

 ただ、今回の目的はあくまでも魔導具を確かめるためなので、難易度はそこまで上げずに種類だけは多くしておいた。

 アイテムの位置も固定で、それを集めてもらうだけのダンジョンだ。


「……そこを左です」


『わかりました』


 里楽さんに入ってもらい、ナビゲートしつつ魔導具を集めてもらう。


「それが火の杖になります。あ、ちょうど反対側からモンスターが来るので使ってみましょうか」


『わかりました』


 反対側から現れたスライムに対して、火の杖を振ってもらう。火の杖の先から小さめの火の玉が飛んでいき、スライムに当たる。


『なるほど』


 威力が弱いせいもあって一撃で倒せなかったけれど、もう一度火の杖を使ってスライムを倒した。


『これの制限回数は変えられるのですか?』


「はい、変えられますが……あんまり多くすると、リソースの問題がでてきますね」


 安定して多く配置するなら、最大5回くらいがちょうどいいかな?


『なるほど、それでは次のアイテムのところまでお願いします』


「はい」


 一通り魔導具を体験してもらった。

 その度に、里楽さんは 『なるほど』 とだけ言っていたんだけど、大丈夫かな?


「それで、どうでしたか?」


 ダンジョンから戻ってきた里楽さんに尋ねてみる。


「そうですね……やはり、魔法を使うというのは気分が高揚しますね」


 高揚……しているようには見えないけど……あ、いや、ちょっと顔が緩んでる?


「確かにこの体験は話題になること間違いないでしょう」


 おおっ、里楽さんからもお墨付きをもらった。


「それで肝心のイベントに関してですが……」


「はい」


 もう考えたの?


「プレイヤー同士を競わせたらどうでしょうか?」


「対戦ですか? 流石に直接戦わせるのは……」


「いえ、そうではなく。例えばですが、モンスターを倒した総数をランキング形式にして、競わせるといった感じです。それも一つの項目だけでなく、複数の部門を設けるのです」


 なるほど、ランキング形式にすれば確かに競争心は刺激されるね。


「その、ランキングに応じて報酬を出せば、プレイヤーは競って上位を目指すでしょう」


「それは確かにそうかも……報酬はDPとかでいいんですかね?」


「ええ、欲を言えば、魔導具を現実に持ち出せるとかあればいいですが」


「それは……」


 ちょっと危ない気がするんだよなぁ……


「何も危険な魔導具である必要はないんです、例えば、回復魔法の杖とか」


「なるほど……確かに……回復なら危険はないですね」


「やっていることは、今のポーションと何も代わりませんからね、しかし、自分が魔法を使って回復するという事実には相当なインパクトがあるでしょう」


 確かに……あの初級ポーションでさえ、かなりのインパクトがあったのだ、それが魔法ともなれば……


「また、イベント後少し時間を空けて回復の杖をDPで現実化できるようにすれば、不満も少ないでしょう。価値は調整する必要がありますが」


 限定のアイテムにするのはやめて、あくまでも今後も入手できるようにしておくのが重要か……ただしランキング上位になれば先に体験できるっていうメリットがある。


「あとは、ランキングの部門ですが……できるだけ戦闘一辺倒にならず、ダンジョンでの活動を重視する内容にしましょう。皆が皆、戦闘がうまいわけではないので、そういう方にもチャンスを持たせたほうが……どうしました?」


「あ、いえ……」


 里楽さん、1回潜っただけなのに、すぐにこんなことまで提案してくるなんて……


「……? 続けます。そう言った意味では多少の運要素や頭を使った要素もあったほうが……」


 その後も、里楽さんは色々とアイデアを出してくれた。

 これは、本当に有能な人が味方になったぞ?

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