第24話
とりあえず、隣に里楽さんが引っ越してきたからと言っても、特別生活が変わったわけではなかった。
というのも……
「引っ越してきてから一度も登校してないんじゃないか?」
「それどころか、家からほとんど出てないんじゃない?」
雛香との会話の中で、そんな話になった。
里楽さんが引っ越してきてから、もう一週間が経ったけど、未だに里楽さんのことを見かけたのは最初に挨拶をしに来た時だけ。
あれ? 挨拶に来たのって夢だった? なんて思ってしまうくらいに生活感がない。
まぁ、僕だけならまだしも、雛香も覚えてるから、夢オチってことはないと思うけど。
「お兄ちゃんは真田さんとは連絡を取ってるんだよね? なにか聞いてたりしないの?」
「いやぁ、どうも、引っ越してくる前からあんまり外に出てなかったみたいでな」
真田さんとはアレ以降も色々と連絡を取っているんだけど、里楽さんのことについてはあまり気にしていないみたいだった。
まぁ、簡単に言えば、実家にいた時から引きこもり気味だったっぽい。
今は一人暮らししているっぽいんだけど、大丈夫なんだろうか?
「食事はたまに配達の人見かけるからそれでどうにかしてるんだろうけど」
「心配だよね」
とはいえ、生活に口を出すほど仲が良いわけでもないので、今のところはノータッチだ。
「まぁ、真田さんとは仲良くできてるから、何かあれば連絡しようかな」
むしろ、父親である真田さんとの仲がかなり良くなってきている。
やっぱり昔のあるあるとか話せるのが楽しい。
「あ、そうそう、真田さんと言えば、今度雛香用に作ったダンジョンを真田さんの部下にもやってもらうことになったんだよ」
「雛香用のダンジョンを!?」
「うん、どうやら、この前、雛香にめちゃくちゃにやられたのを気にしてるみたいで、鍛えるために使いたいんだそうな」
雛香が乗り込んでめちゃくちゃにした時な。警備員としてどうなの? ということになったらしい。
「なるほどねー、確かに弱かったもんね」
いや、雛香が強すぎただけだからな?
「まぁ、最初から雛香レベルでいけるとは思ってないけど、徐々にレベルをあげていくって感じかな」
雛香用のダンジョンは、僕のレベルが上がる度に更新しているから、今はかなりの難易度になっている。
公開して他の人もダンジョンに入れるようになった今、雛香用のダンジョンにこだわる必要は実はあんまりなかったりするんだけど、まぁ、雛香が楽しそうに攻略してるので続けている。
雛香がどれだけ強くなるのかってのも興味があるしね。
今回の件の裏の理由として、今後僕のダンジョンがさらにさらに広まった時に、それこそ雛香レベルに強い人間が出てくることが予想される。
それがいい人だったらいいんだけど、そうじゃない場合、それを抑える人間がいなくなってしまう危険がある。
それはまずいということで、真田さんが今からそういう組織づくりを目指しているというのも理由としてあったりする。
僕はそこまで考えてなかったんだけど、聞いてみたら確かにと思ったので、そこに協力は惜しまないことにしたよ。
世界を変えたいとは思ったけど、混乱させたいとは思ってないんだよ。これでも。
「そういえば、お兄ちゃんは次のダンジョンは作らないの?」
自分で言い訳をしていると、雛香が僕に聞いてきた。
「そうだなぁ、ずっと考えてはいるんだけど」
次のダンジョンをということ自体は、βダンジョンを公開した時から考えていたことだった。
一個しか無いダンジョンだったら、すぐに飽きられちゃうからね。
今は皆ダンジョンを探索するっていう新鮮味で潜ってくれてはいるけれど、人間は慣れる生き物だからね。
だから、早めに次のダンジョンを作って公開したい。そう思ってずっと考えてはいるんだけど……
「レベルがなぁ……思ったよりも早く上がってて、できることがどんどん増えてくんだよなぁ」
多くの人がダンジョンに入ってくれることで、僕のレベルもどんどんと上がっている。
もちろん、必要な経験値が徐々に上がっているから、上がり方的には緩やかになってはいるんだけど、それでも想定していたよりもかなり早い。
現在の僕のダンジョンスキルのレベルは15になっている。
「構想を立てても、次の日には別のことができるようになってて、もっと違うダンジョンを作りたくなっちゃうんだよなぁ」
そんなわけで、構想を立てては、また新しいことができるようになって、また構想を立てて……ということを繰り返している。
「まぁ、でもそろそろ安定はしてきたから、そろそろ本格化はしようと思ってるんだけどな」
このままレベルが上がらなくなるまで待っているのもアレだし、そろそろ追加する予定ではいる。
「それに、面白いこともできるようになったしな」
「なになに!? 面白いことって何!?」
ふふっ、気になるだろ?
この世界だったら、間違いなく話題になる。
「雛香……お前……魔法って使ってみたくないか?」
何せ、この世界で魔法っていうのは憧れの存在だからね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます