第22話
今更だけど、うちの両親の話をしよう。
父さんの名前は、瓜生 エリオス。アメリカでIT会社のCEOをしている。かなりの大企業で僕の使っているスマホも父さんの会社の物だ。
母さんの名前は、瓜生深月(うりゅう みつき)。日本の名家の出身で、純然たるお嬢様だ。
二人はある日、国際的なパーティで出会い、お互いに一目惚れをして、周りの反対をものともせず結婚まで至ったらしい。
瓜生というのは母さんの姓で、父さんは母さんの家に婿養子に入ったという形だ。
結婚当初は揉めてたらしいんだけど、今は母さんの実家との関係も良好で長期休みに入ったら毎年家族で遊びに行っている。
というわけで、二人ともそれなりの立場を持っている人だ。
僕の考えていた対策というのも、結局のところ二人に頼るということだったんだよね。
まぁ、そのためには、二人にも僕のスキルのことを話さないといけないんだけど……
『それじゃあ、次の休みには帰るからね』
『二人共仲良くねー』
おっと、まずい、考えている間に二人が通話を切ろうとしている。
「父さん、母さん、ちょっと待って」
『なんだい?』
間に合った。
「えっと……ちょっと、二人に伝えたいことがあって……」
深呼吸をして、できる限り真剣な顔をする。
『伝えたいこと?』
真面目な顔をして呼び止めた僕に父さんが不思議そうな顔をした。
『あっ、ひょっとしていい子でもできた?』
ごめん、母さん、ちょっと空気読んで。
「お兄ちゃん! 雛香以外に誰かいるの!?」
雛香も空気読んでくれ。
あー、もう馬鹿らしくなってきたんだけど?
「二人は、今流行ってるダンジョンって知ってる?」
『ダンジョン? ああ、もちろん、うちの会社でもあの技術は気になっていてどうにか開発者とコンタクトできないかと動いているところだよ』
『でも、全然お返事ないのよねー』
父さんの会社からも問い合わせが来てたのは、ミミから聞いて知っていた。
「あれの開発者。僕なんだよね?」
『えっ?』
『えっ?』
二人とも驚いた顔をしている。なんか二人の……特に父さんのこういう呆けた顔って初めて見た気がする。
「実は僕にはダンジョンを作る能力ってやつがあってね、それを使って作ったんだよ」
転生云々は……今はいいか。
『えっと……冗談……ではないんだよね? 飛鳥がそういう真面目な顔をするってことは?』
「うん、ちょっと見てて」
もう実際にダンジョンを見せるのが一番早いよね。
僕はソファから立ち上がり、カメラから映る位置に、移動する。
「今からここに、ダンジョンの入口を作るよ」
スマホを操作して、入り口を作る設定を行う。
本当はスマホなんていらないんだけど、最近はスマホから操作してばっかりだったから、このやり方の方が早いんだよね。
入り口の作成を決定すると、部屋の真ん中に、光の柱が立ち上がった。
『What!?』
『綺麗!』
光の柱が消えた後には一つの扉が現れていた。
「はい、これがダンジョンの入口だよ」
色々な入り口の形が作れるけど、今回作ったのはオーソドックスな扉型。これを通ればダンジョンの中に入れるってやつだ。
『まさか本当にそんなことができるとは……』
『映像の加工……とかじゃないのよね?』
父さんも母さんも、まだ信じられない様子だ。
まっ先に映像加工を考えるのは二人っぽいね。
「いえ、実際に私もこの目で目撃してますから、加工ではないですね」
真田さんも目の前に現れた扉に興味津々だ。ペタペタと扉を触っている。
「あ、すみません、これはすぐに撤去しますので」
勝手に作っちゃったけど、許して。
「普段はこういう入り口とか作らず、スマホから入場できるようにしてるんだけど、こっちのほうがわかりやすいでしょ?」
僕は扉に手をかけて、そのまま開く。
扉の奥には、明らかに、この部屋ではない、洞窟が広がっている。
「凄い……本当に4次元空間みたい……」
これまで黙っていて里楽さんでさえも思わず声に出して驚いている。
「というわけで、信じてもらえた?」
扉を閉めつつ二人に聞いてみた。
『あ、ああ。流石にこれは信じざるを得ないね』
『ええ、まさか、飛鳥ちゃんがこんなことができるなんて……』
うん、まぁ、ちょっと信じられないよね……こんなことができる子供なんて……
『凄いわ! さすが飛鳥ちゃん!』
おぅ?
『うむ、子供の頃から、何かと凄いことをやっていたけど、これはさすがに驚いたよ』
えっと……?
「二人共、怖くないの?」
『怖い? 何で?』
なんでって……
「ほら、明らかに普通じゃないでしょ? こんなことができる子供なんて」
どう考えても、異常だよね?
『うーん、確かに、普通じゃないかもしれないけど』
『できるものはできるんだから仕方ないんじゃない?』
「仕方ないって……」
それですませていいの?
『大丈夫よ、飛鳥ちゃん。あなたがどんなことができたって関係ないわ』
『そうだね、だって僕らは飛鳥の親なんだから』
「母さん……父さん……」
……受け入れてくれるとは思っていた。でも、やっぱりどういう反応されるか怖くて言えなかった。
打ち明けた今思うのは……
「僕、二人の息子で良かったよ」
ただ、それだけだった。
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