第5話

 その後も、アイテムを拾ったり、モンスターと戦ったりして、ダンジョンを進んでいく。

 ちょっと心配だったBさんも一回倒したことで覚悟を決めたのか、それ以降は逃げることなく戦いに挑んでいた。

 そんな中、ついにAさんが次のフロアへの魔法陣を発見した。

 他の3人はもうちょっと時間がかかりそうかな? Bさんはおおっかなびっくりだし、Cさんは自撮りしながらだし、Dさんはモンスターを観察したりダンジョンを観察モードだ。


 Aさんは意気揚々と魔法陣に入り、次のフロアに移動した。

 2階はそのままボスフロアになっている。


『……でかい魔法陣だな。これは大きなボスか?』


 ゲーム慣れしてるのかな? ボスの予想をしてるみたいだね。

 さて、その答えは?


『うぉっ!』


 部屋の真ん中にある大きな魔法陣が赤く光る。

 Aさんは驚いた様子で、そこから距離を取った。


『ボスが来るのか!?』


 そのとおり! ボスの登場だよ!


『来るか!』


 Aさんは木の剣を構えて臨戦態勢に入った。

 そして、魔法陣から浮かび上がってくるようにモンスターが現れる。


『……スライム?』


 現れたのは道中にも出てきた最弱モンスターのスライムだ。


『これが……ボス? 雑魚じゃねぇか』


 これにはAさんも不満そう。

 でも、大丈夫だよ。


『さっさと倒して……あれ? 入れねぇぞ?』


 Aさんはスライムに向かって攻撃をしようとしたけれど、光っている魔法陣の中へ入れない。

 当然、召喚演出はまだ終わっていないのだ。


『……またスライムが出てきた?』


 先程と同じようにスライムが魔法陣から出てくる。

 しかも、一匹ではない。


『まさか! そういうことか!?』


 そう、Aさんも気がついたようだ。

 魔法陣の中から次々とスライムが出てくる。

 そして、それはだんだんと一つの固まりになっていく。


『でかくなってく!』


 Aさんの目にも光が戻ってきた。

 そう、今回のボスは、スライムの集合体であるビッグスライムだ。

 スライムが合わされば合わさるほど、その体は大きく強くなっていく。

 今回はスライム10体の組み合わせだ。

 その大きさは、Aさんの身長と同じくらいまでになっている。

 流石のAさんも、その姿を見て恐怖を……


『へへっ! 最高だぜ!』


 ……感じていない。

 まじでこの人、戦闘民族だなぁ。


 そして、魔法陣から色が消えた。

 その瞬間、ビッグラスライムは一度軽くジャンプをした。


ドン!


 地響きがフロアに響く。これが戦闘開始の合図だよ。


『うらぁ!』


 Aさんもそれがわかったのか、勢いよくビッグスライムに突撃して、剣を振り下ろした。

 これまでだったら、一撃で倒せそうなくらいの一撃。しかし、ビッグスライムからは少し体積が減ったくらいだ。

 さらに、ビッグスライムはその身体から、触手のように身体を伸ばして、Aさんに向かってそれを振るった。


『うおっ!』


 これまでスライムに対しては無双してきたAさん、その攻撃を避けることができずに、体ごと弾かれて横に倒れ込む。

 さらに、ビッグスライムは跳躍し、Aさんの上に飛び乗った。


『くそっ! 起き上がれねぇ!』


 ビッグスライムの巨体に押しつぶされて、Aさんは動けなくなってしまった。

 あ、ちなみに、重さは感じていないはずだよ。


『くっ……』


 なんとか、抜け出そうと、Aさんは必死で剣を振り回す。

 Aさんの必死の抵抗を嫌がったビッグスライムは、Aさんから離れた。

 しかし、AさんのHPは結構なダメージを受けている。


『回復! 回復だ!』


 スマホ画面を操作して、初級ポーションを取り出して飲む。

 Aさんの身体が緑色に光り、HPが回復した。


『……よし! 行くぞ!』


 そして、Aさんは再び戦いに戻った。

 しばらくしてAさんは、ビッグスライムを倒すことに成功した。

 まぁ、強くなったとはいえ、所詮はスライム10体の集合体だしね。パターンさえわかってしまえばそんなに苦労することはないでしょう。

 ビッグスライムを倒したことで、退出用の魔法陣が表示された。

 おっと、声をかけないと。


「お疲れ様です。クリアおめでとうございます。赤い魔法陣に入るとダンジョンから出ることができます」


『おう! これで終わりか? もっと戦いたいんだが……』


 戦闘民族……


「その辺りは正式サービス開始をお待ち下さい。あ、他の方がクリアしたら改めてまた招集いたしますので、よろしくお願いします」


 Aさんは赤い魔法陣に入り、ダンジョンから出ていった。


 さて、他の人はどうかな?

 おっと、いつの間にか3人もビッグスライムと戦っている。

 さて、何人が勝てるかな?


 結論から言うと、BさんとCさんはビッグスライムに負けていた。

 Bさんは終始逃げ腰だったので、途中でリタイアしていた。

 Cさんはボスに喜んで、また写真を撮ってたんだけど、流石にビッグスライムはそこまで甘くなく、攻撃されて倒れていった。初級ポーションがあったんだから、使えば良かったのにそこまで頭が回らなかったみたい。

 最後のDさんは、ビッグスライムに勝利した。しかも、Aさん以上に戦いが安定していて、一撃も受けること無く倒していた。攻撃自体はAさんほど激しくないんだけど、それ以上に避ける力が凄かった。あれは、しっかりとパターンを読んで行動していた感じだね。


 ともかく、成功、失敗はあるけれど、全員がビッグスライムとの戦いを終えた。

 さて、とりあえず、これで完了かな。


『それでは皆さん、アンケートはよろしくお願いしますね』


 全員が退出した後に、グループチャットで改めて呼びかけた。

 結構な長時間になってしまったので、後でアンケートに答えてもらうことにしてこの場は解散することにした。

 おっと、そうだった。


『今回のテストに協力していただいた皆さんに初級ポーションをプレゼントします』


 ダンジョンの中でも拾った初級ポーションだ。


『本来はDPというポイントを使って持ち出すアイテムですが、今回は特別にDPが0で持ち出せるようになっていますのでご活用ください』


 スマホのアプリから持ち出し方を説明してこの場は解散となった。

 詳しい感想は後でアンケートを提出してもらうことになっている。


 とりあえず、無事にテストが終わってよかった。

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