第4話
「このダンジョンは2階層になっており、2階のボスを倒したらクリアになります。2階へは、フロアのどこかにある赤い魔法陣に入ると移動できます」
『ボスがいるのか!』
「いますね。テストですのでそれほど強力ではありませんが、きちんと考えて戦わないと大変かもしれませんよ?」
ネタバレは厳禁だから、これ以上は秘密にしておこう。
あと他には……
「あ、そうだ。ダンジョン内でアイテムを拾うことがありますが、拾うと消えてスマホのメニューから選んで使用できるようになります。一応所持数の制限もありますのでご注意ください」
まぁ、そんなに沢山のアイテムを拾うことは流石にないと思うけど。
「それでは、僕からの音声はここで切ります。何かあったら、声をかけていただければすぐに応答しますので」
さて? 準備は大丈夫かな? うん、大丈夫そう。
『扉についている刺さっている木の剣を取ると扉が開き、攻略スタートです』
流石に無手でモンスターと戦ってもらうのは、ちょっと無理があるからこういう仕組みにした。
おっと、行動が早い。もう取りに行っている人がいる。話はちゃんと最後まで聞いたほうがいいよ?
まぁ、あとは、開始の宣言だけなんだけどね。
「それでは! 頑張ってください!」
僕の開始宣言を聞いてまず動いたのは予想どおりAさんだった。Aさんは扉に刺さっている木の剣を勢いよく引き抜き扉を開けた。他の3人はおっかなびっくりという感じで、まずは木の剣を確認するところからスタートだ。
あ、ちなみに、4人に入ってもらっているダンジョンは、全部同じ構造をしている。
出てくるモンスターも、モンスターが沸く位置、アイテムの場所なんかも全部同じだ。
さぁ、誰が一番始めにクリアするかな?
迷路になっているダンジョン内部。
Aさんが進んだのは、モンスターがいる方向だった。
『うぉ! スライムか!』
出てきたのはゼリー状のモンスターのスライムだ。
スライムは、ダンジョンモンスターの中では最弱と言われている。攻撃力も防御力も低いし、特殊能力もない。コアを突き刺せば一撃で倒せる。コアじゃなくても普通に何回か切りつけていても倒せる。
まぁ、チュートリアル向けだよ。ここで負けるとかはないかな。
あ、ちなみに、服を溶かすとかはないです。
『うらぁ!』
Aさんは初めてのモンスターにも関わらず、果敢にスライムへ挑んでいく。
戦闘民族だなぁ。
走って近寄ったAさんは、勢いよく木の剣をスライムに突き刺す。
木の剣は偶然? にもコアに突き刺さり、スライムは透明になっていき、細かな光の粒子となって消えていく。モンスターの死体は残らない。
運が良ければ、宝箱が出てくることもあるけれど、Aさんは運がなかったようだ。
『よし! よし!』
モンスターを倒したAさんは、満足そうに次の部屋へと進んでいく。
うん、Aさんは順調そうだね。それじゃあ、他の人達はどうかな?
「おっ? Bさんはスライムと接敵した」
BさんもAさんと同じ道を辿ってスライムと遭遇をした。
さぁ、Bさんはうまくスライムに対処できるかな?
「Bさん腰が引けてる? えっ? あれ!? どこへ行った!」
Bさんはスライムと相対して、木の剣を構えたはいいものの、スライムがこっちに一歩寄った瞬間、背を向けて逃げ出した。
『ひぇえええ!』
悲鳴も上げてる!? いや、相手はスライムだよ!? 最弱だよ!?
いや、確かにそんな情報はあげてないからわからないけど、命の危険もないのに即逃げ!?
Bさん大丈夫か?
少し動向を見守ったけど、結局Bさんはスライムに追い詰められて、覚悟を決めたようで、震える手で木の剣で攻撃をしてなんとか勝利をしていた。
ひょっとしたらボスを倒せずギブアップもあるかもしれないなぁ。
次はCさんだ。
Cさんもスライムと遭遇した……けど?
『やばっ!』
Cさんはスマホを取り出して、スライムに向けて……いや、自分も入って……
「自撮り!?」
まさかの自撮りだ。
余裕だな! さっきのBさんとは大違いだ。
『これは映えるに違いなしね!』
スライムはバズり……なのか? その感性はよくわからん。
いや、そんなことしてる場合か? 流石に、スライムと言えど攻撃を……
『きゃっ!』
ほら案の定、スライムに体当たりされてるし。
Cさんは、少しだけHPにダメージを受けた。身体に痛みはないけれど、Cさんは後ろから押された形となり、バランスを崩して地面に手をついてしまった。
『やったわね!』
攻撃されたことで怒ったのか、すぐに反撃に移る。
怒りに身を任せて、木の剣で何度もスライムを叩いた。
数回叩いたところで、スライムは光になって消えていった。
「おっ! 宝箱だ」
Cさんは運が良かったらしく、スライムが消えた後には宝箱が残されていた。
今回の宝箱の中身は全部同じで、初級ポーションが入っている。
初級ポーションは体力回復薬になっていて、これを飲むとHPを回復することができる。簡単な傷も治す効果もあるけど、ダンジョン内では傷がつくことはないので、今回はあんまり意味がないかな。
Cさんは嬉しそうにまた宝箱と自撮りしてる。これも映えるのか?
最後はDさんだ。
Dさんもスライムと遭遇。さて、Dさんはおとなしめな感じっぽかったけど、どうだろう?
『……本当にスライム』
Dさんは何やら呟いて、スライムに近づいていく。
えっ? ちょ、戦いは? スライムを持ち上げた!?
そのまま、無言でスライムをつついている。
いや、確かに、スライムはぷにぷにしてて気持ちいいかもしれないけど……一応敵だからスライムが腕の中でじたばたと攻撃してHPが減ってるよ!?
Dさんはしばらくそのままでいた後、自身のHPが減っていることに気がついたのか、スライムのコアに剣を突き刺した。的確にコアを刺してたね。
何がしたかったんだろう?
Dさんの謎の行動はさておき、これで4人共モンスターと戦うことができたみたいだ。
ひとまずは順調といったところかな?
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