第3話
ダンジョンを作ると決めてから早いもので12年が経った。
えっ? 飛びすぎ?
いや、まぁ……この世界が思ったより楽しすぎてね……もの凄い普通に満喫してしまったよ。
おかげで予定していた10年を超えて、僕は15歳になった。もうそろそろ高校に入学だ。
いや、まぁ、言い訳をすると、サボっていたわけではなくてだね。
ダンジョンこそ作ってはいないんだけど、作るための準備はしていたんだよ。ただ、その準備が思っていたよりも大変だったっていうのがある。
それがどんな準備かって言うと、この世界にはコンピューターってものがある。要するに、0と1で色々なものを表すみたいな機械なんだけど、これがもの凄く便利でね。
なんとかして、僕のダンジョン創造スキルとこいつをリンクできないか? って考えたのがきっかけだった。
そのために、パソコンの仕組みを理解し、プログラミングを学び、アプリの開発をしたりなんかしていたら……いつの間にか15歳になっていたってわけだ。
子供のころから勉強をしていただけあって、今はかなりの知識があると自負している。
結果的に、自分で作成したプログラムとスキルをリンクさせることには成功した。これで、ダンジョン作りをパソコンの上からできるし、ダンジョンへのアクセスだってパソコンからできる。
あ、当然だけど、スマホにも対応してるよ。
多くの人にダンジョンへ入ってもらう仕組みはスマホからのアクセスにした。スマホ用のダンジョンアプリを入れている人だけがダンジョンへ入れるってわけだ。
あ、そうそう、実はそれのテストをしようと思っているんだよね。
SNSでダンジョン好きの人を探して、そこから4人テスターを選んだ。
その4人には僕のダンジョンアプリをスマホにインストールしてもらって、ダンジョンに入ってもらう。
あ、ちなみに、ダンジョンはダンジョン空間へ入るものと、現実の空間をダンジョンへと改造するっていう2つの方法があるんだけど、今回のは前者にした。
理由としては、単純に現実空間にダンジョンを作るのに、土地の権利っていう問題があるからだ。自由にできる土地とかあればいくらでも作るんだけどなぁ……前世だとそんなの気にせずに作れたのになぁ……
そんなわけで、しばらくはダンジョン空間へ入ってもらうっていう方式かな。
ただ、スマホから入るけど、バーチャルってわけじゃなくて、ダンジョンへ入る身体は自分の物だ。ダンジョン内へアイテムを持ち込んだりもできる。まぁ、持ち出しはちょっと制限をかけてるけどね。ダンジョンで手に入れた武器とかを適当に持ち出せたらめちゃくちゃ危険だもんね。
流石に、前世とは違う世界だから、その辺りは結構気をつけてるよ。
まぁ、前置きはこのくらいにして。
『それでは、アプリから入場を選択してください』
グループチャットで4人のテスターに指示を出した。
『了解』
『わかりました』
『はーい』
『これで』
アプリから入場を選べば、ダンジョン空間へと転移できる。
僕はパソコンの画面に彼らが入場する予定のダンジョンを移して、彼らが入ってくるのを待つ。
「おっ! 記念すべき一人目!」
最初に姿を現したのは、大学生風の男性だった。仮にこの男性をAさんとでもしておこう。
『なんだこりゃ!?』
Aさんは酷く驚いて、周りを見回している。まぁ、アプリのボタンを選択したら、いきなり変な場所に飛ばされたら驚くよね。
『えっ?』
『なにこれー!』
『ここどこ?』
次々と残りの3人もダンジョンへ入ってきた。
呆然としたようにしていれば、驚きの声を上げる人、さらに不思議そうに首をかしげる人。反応はそれぞれだ。
仮に、他の人達もBさん、Cさん、Dさんとしておこう。
Aさん、Bさんが男性、Cさん、Dさんが女性だ。
反応をもうちょっと見ておきたいところなんだけど、早いところ説明しないと。
「えーっと、テスターの皆さん! 聞こえますか?」
パソコンに向かって話しかける。
ダンジョン内には僕の声が聞こえてるはずだ。ちなみに、流石にそのままの声だと身バレが怖いので加工している。セキュリティ意識もちゃんとあるんだよ! 身バレ、駄目! 絶対!
『なんだ!? どこから声が!?』
驚いて周りを見回しているけれど、当然だけど僕はその場にいないから姿なんて見つからないよ。
『おい! ここはどこだ! 俺をどこに閉じ込めた!』
おー、Aさんは大分興奮しているね。他の3人もAさんほどではないけれど、不安そうにしている。
「落ち着いてください。あなた方は今、僕が作ったダンジョンにいます。僕はそれをモニタリングしているという状態です」
僕は、パソコンの画面に向かって話しかける。
『ダンジョン!?』
「はい、皆さんには新技術を使ってダンジョンへと移動してもらったという感じです」
もちろん、このあたりは適当。新技術って言っておけば、ある程度どうにかなるっていうのは、この世界に来てから学んだ。
「そして、皆さんにはテストとして、このダンジョンを探索してもらいたいと思っています」
よくよく考えたけど、これ先に説明しておけばよかったかも? いや、でも生の反応も見たいし……
『探索だと!? 危険な目に合わせるつもりか!?』
「いえいえ、危険はありません。確かにダンジョン内にはモンスターがいますが、皆さんの身体はHPというもので守られています。要するにバリアみたいなものですね。そして、HPが0になると、自動的にダンジョンからはじき出されて元の場所へと戻ります」
このあたりは前世のダンジョンでも同じ仕様にしておいた。やっぱり人死にはよくないもんね。
ダンジョンで不幸になんてさせないようにしないと。
「ちなみに、どうしても嫌だというのであれば、持っているスマホから退場を選べばダンジョンから出れます。尚、その際はテストから辞退したという扱いになり、グループからも外しますが」
さて、皆どうするかな?
『……本当に危険はないんだな?』
「はい、もちろんです、皆さんの身には傷がつくことはありません」
『それなら……やる』
おっ? Aさんは意外とすんなり受け入れたね? 正直、この人が一番駄目なんじゃないかと思ってたんだけど。
『元々、ダンジョン好きだからな、驚いたがこんな機会滅多にないだろ!』
流石ダンジョン好き。危険がないってわかった瞬間、目がキラキラしてるよ。
『……僕もやる。せっかくの機会だし』
『もちろん、うちもやるよ! 新技術を体験できるなんてやばいじゃん!』
『やらないわけにはいかないです』
残りの3人も参戦か。ありがたい。改めてテスターを探すのってやっぱり面倒だからね。
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