第2話
僕が人間になってから早くも3年の月日が経ち、僕は3歳になった。
両親たちが僕に話しかけてくれたおかげで彼らの言語もおおよそわかるようになった。
おまけに、積極的に本を読み聞かせしてくれたおかげもあって、簡単な文字も読めるようにもなった。
そして、どうやらここが元々僕がいた世界では無いことがわかった。ここは、地球という星にある日本という国らしい。
そして、信じがたいことに、魔物や魔族といった存在はこの世界には存在しないらしい。
……魔法も存在しないってマジ? 魔素がめっちゃ溢れてるんだけど?
魔素というのは、読んでそのまま魔法を使う素となる物だ。前世ではもちろんあったし、なんだったら魔法の使いすぎて自然にある魔素不足なんかも危険視されていた。
しかし、この世界では誰も魔法を使っていないせいで、魔素が溢れんばかりにある。どれだけ無茶な魔法を使おうとしても通ってしまうくらいにはある。
あ、そうそう。
魔族も魔法もないということは、当然だけど、ダンジョンも存在しないらしい。
……嘘だろ!?
と思ったけれど、書斎に潜り込んで調べてもダンジョンなんてものはファンタジー世界の産物らしい。
そうか……ファンタジーかぁ……どうやら僕の前の世界はこの世界からするとファンタジーの世界だったらしい。僕からすると、この世界の科学文明の方がファンタジーだけど。電気の力ってすげー!
さて、この世界のことがある程度わかったところで、一つだけ気になることがある。
それは、本当に僕が人間なのか? という部分だ。
もちろん、見た目も人間だし、魔族の特徴とも言うべき角や尻尾もない。ただ、魔素の濃さはわかるし、何よりも前世で使えたスキルが使えた。
そう、ダンジョン創造スキルが使えたのだ!
他の人、家族や周りの人達が同じようにスキルを使っているところは見たこともない。ひょっとしたら、見てないだけで使えるかも知れないけれど、ダンジョンがこの世界に存在しない以上、少なくともダンジョン創造スキルはないんじゃないかな?
ダンジョンが……ない!?
この世界に転生してきて、一番の衝撃だった。
ダンジョンがないってことは、つまり、ダンジョンから手に入れる物資とか、魔導具とかに頼らずに、自力で生活してるってこと!?
この世界の人間たち凄すぎない!?
さて、ここで問題。
さっきも言った通り、僕はダンジョン創造スキルを持っている。なんでかは知らないけれど、スキルレベルは1に戻っているけれど、試した感じ前世と同じような使い勝手だ。
つまり、僕はダンジョンを作ることができる。
さぁ、僕はこの世界にダンジョンを作るべきだろうか?
「僕は……ダンジョンを作る!」
部屋で一人になったところでそう呟いた。
僕にとってダンジョンは、なくてはならないものだ。
もしも、僕がダンジョン創造スキルを持っていなかったのであれば諦めるところだったけれど、持っているならば作るべきだろう。神様とやらも、きっとこれを使って世界を変えろって言ってるんだな。
そう勝手に判断した。そう、勝手にだ。
結局のところ、僕はダンジョンが好きなのだ。ダンジョンを作って、それを攻略している人を見るのが好きだ。冒険をしている人がどう攻略するかを考えてダンジョンを作るのが好きだ。
そんなダンジョンは誰かを不幸にするものではなく、幸せにするものだと僕は信じている!
そんな自分勝手な理由で僕は世界を変える。
……まぁ、ダンジョンを作ればそこから得られる物資で人々の生活は豊かになる……はずなのできっと人類にとってはいいこと……のはず。
ただ、まぁ、適当に作ってもあまり良くはないだろうし、僕はまだまだこの世界のことについて詳しくない。
この世界の人たちがどういう考えを持って生きているかわからないから、その人達に向けたダンジョンなんてものは作れない。作ると決めた以上は、この世界について色々と知っておきたいよね。
幸い、両親たちは優しく、子供の僕から見ても仲睦まじく理想の夫婦という感じだし、住んでいる日本という国もこの世界の中でも平和な国として有名らしい。学びの環境も十分だ。
ということで、しばらくは……10年くらいはこの世界を満喫しようかな。
「ねー、にーにー! ごほんよんで!」
おっと、妹に呼ばれてしまった。
そうそう、忘れてたけど、僕には妹がいる。しかも、双子の妹だ。
とても元気な妹で、僕のことが大好きらしく、いつも僕の後を追いかけてくる。
「
雛香は妹の名前だ。フルネームで
そして僕の名前は
「うーんとね、もんすたーをやっつけるおはなしがいい!」
雛香はどうやらファンタジー物がお気に入りらしい。おままごとでも母親役ではなくモンスターを討伐する役をしたがる。もはやおままごとではないよね?
というか……この子は多分普通の人間だよね? 魔法とか使えたりしないよね?
「どーしたの? にーにー?」
「いや、なんでもないよ」
思わず、考えてしまったけど首を振った。
この無邪気な笑みが偽物だったら流石に凄すぎる。もう騙されるしかないよ。
「さぁ、座って」
本を選び、座って促すと、雛香は僕の膝に座った。
そこにいられると本が読めないんだけど……まぁ、内容は覚えてるからなんとなくでいくか。
とりあえず、人間としての生活を楽しもう。妹と一緒にね。
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