落ちこぼれのダンジョンマスターが現代地球に転生してダンジョンを創造したら何か騒ぎになってるけど僕のせい?
猫月九日
第1章
第1話 ダンジョンマスター
「元四天王メイゼスよ! お前を処刑する!」
四天王メイゼス。それが僕の名前だ。もちろん魔族だ。
前魔王様の時代に魔王軍に入り、そこで僕はダンジョンを作成する部署に配属された。主な仕事としては、魔王城を守るためのダンジョンを各地に作成、それをメンテナンスすること。
ダンジョン創造スキルを持っていた僕は、気がついたらその部署のトップ、いわゆるダンジョンマスターになることができた。
当時、人間と魔族はお互いに敵対はしていても、手を出し合うことはなく、いわゆる「冷戦」という状態だった。
そんな中で、僕は領地を問わず色々な場所に作成ダンジョンを作成した。
そんなダンジョンには日々多くの人間や魔族が潜り、探索をする。
そんな様子を見ることが僕の楽しみだった。
しかし、今の魔王様となって状況が変わった。
魔王様は人間を滅ぼすべし! なんて言って戦争を始めた。
結果、ダンジョンを強化することよりも、兵力を強化することに力を入れ、ダンジョン部門は縮小されていくことに……
ついには残っていた僕の部下も別の部署へと異動させられ、僕は一人。
それでも、ダンジョンを作っていたのだが……
ある日、僕は突然投獄されてしまった。
「お前にはスパイ容疑がかかっている!」
投獄した顔見知りの四天王に理由を尋ねたところ、そんなことを言われた。
「お前が作るダンジョンは人間にとって都合の良いようにできている! それはお前が人間の味方をしているからだ!」
当然、僕は否定をしたけれど、聞く耳は持たれなかった。
確かに、僕の作るダンジョンは人間の街付近は弱かったり、人間が好きそうなアイテムが落ちていたりする。しかし、それは人間をダンジョンに入るための餌であって、ダンジョンを維持するために必要なものだった。
ダンジョンに誰かが入ることによって、僕のスキルレベルは上がっていき、それは結果的にダンジョンの強化につながる。結果、今、魔王城の周りは強固なダンジョンになっているのだ。
しかし、それを説明したところで、僕の処刑は免れなかった。
「元四天王メイゼスよ最後に言い残したことは何かあるか?」
処刑台に乗せられた僕に、魔王様が問いかけてきた。
最後……最後かぁ……
「そうですね……僕の後任のダンジョンマスターにうちの子をよろしくとだけお願いします」
これから僕は処刑される。そんな時なのに、僕は何を言っているんだろう?
でも、僕の子供とも言えるダンジョンが、今後どうなっていくのか心配だった。
「……うむ、伝えよう」
魔王様は僕の言葉を受けてそう言った。
まぁ、どうせ守られないことなんてわかっている。僕の後任のダンジョンマスターはきっと僕のダンジョンを好き勝手改造して、元の姿はあとかたもなく消えてしまうだろう。
「ありがとうございます」
それでも僕はお礼を言った。
そして、魔王様は斧を振り上げ、それを僕の首へと振り下ろした。
あぁ……もっといっぱいダンジョンを作りたかったなぁ……
僕はそう思いながら、意識を失った。
気がつくと、僕は赤ん坊になっていた。
えっ? なんで!? どうして!?
若返りの魔法なんて存在したっけ!?
「おぎゃー! おぎゃー!」
混乱して思わず叫んだけど、口から出たのは泣き声だけだった。
僕が泣き声を上げると、どこかからが何者かがやってきて僕は抱き上げられた。
誰!? 人間!?
それは人間の女性だった。
「~~~」
女性は僕をあやすように、言葉をかけてきた。
……何語だ? 職業柄、多くの言語を知っているけれど、これは初めて聞く言葉だ。
「~~~」
さらに、もう一人、人間の男性がやってきた。
その人は僕の顔を覗き込み、柔和な笑顔を浮かべる。
この感じならひょっとして、魔族だってバレてない?
いや、というか、僕は処刑されたはずじゃなかったか?
ここはどこだ?
混乱しすぎて、頭がまとまらない。
「おぎゃー! おぎゃー!」
とりあえず、泣くことしかできない。
数日後、ようやく状況を理解した。
どうやら、僕は人間の子供として生まれ変わったらしい。女性と男性は僕の両親みたいだ。つまり、僕も魔族じゃなくて、人間になったらしい。
魔族が人間になったなんて聞いたことがない。でも、元魔族だなんて知られてしまったら、きっと殺されてしまうだろう。だから、魔族だとバレないようにしないといけない。
魔族だとバレないように……変な子供だと思われないように……赤ん坊ってどんな感じなの?
わからない、わからないが、とりあえず、怪しまれないように泣いておこう。
「おぎゃー! おぎゃー!」
僕が泣くと、すぐに母親が飛んでくる。
「~~~?」
あ、すみません、別にオムツを変えてほしいわけじゃ……あ、いえ、お腹が減ったわけでもなくてですね……
流石に、母乳を飲むのは抵抗がある……あるが、飲まないとそれはそれで心配される。
魔族だとバレたくはないが、心配させたいわけでもないんだ。前世の僕は、両親に捨てられたから、今度こそは良好な関係を築きたい。
元魔族だなんて絶対にバレないようにしないと……そう決意した。
しかし、それは杞憂でしかなかった。
後にわかることだが、僕が生まれ変わったこの世界では、そもそも魔族なんてものは存在しないし、魔法なんてファンタジーの世界の産物でしかなかったのだ。
魔法が存在しない? いや、でも……この世界、めちゃくちゃ魔素で溢れてるんだけど?
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お読みいただきありがとうございます。
本日中に7話まで投稿予定となっております。
(3話まで8時、4,5が12時、6,7が17時投稿です)
以降は40話程度までは毎日投稿となりますので、是非ともフォロー、星など応援のほどよろしくお願いいたします。
また、この作品は以前投稿した短編を長編向けに改稿したものとなります。違い等はありますが、基本コンセプトは同じになっております。
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