第6話

 無事にテストが終わり、アンケートも回収することができた。


『モンスターと戦うのが楽しかった! もう一回やりたいぞ!』


『こんな凄い体験できるなんて凄いわ! 開始されたら絶対やるわ!』


『モンスターと戦うのは怖かったけど……でもアイテム拾ったり、冒険したりするのは楽しかった!』


『もっといろんなモンスターが見たいです!』


 おおよその感想をまとめるとこんな感じ。

 ただ、全員が全員、次もやりたいと答えてくれたのでテストとしては成功だったと言えるだろう。


 これは気合を入れて調整、本番に向けて準備をしないといけないね。

 そんな感じで、気合を入れて、最終調整に挑んだんだけど……



「ねぇお兄ちゃん! 宿題手伝って!」


 数日後、いつものようにダンジョンを作っていると雛香がやってきた。


「教えるのはいいけど、答えは教えないからな」


「うん!」


 雛香がこうして僕に宿題を聞きに来るのはよくあることだ。

 ちなみに、僕も同じ宿題が出ているけど、もう終わらせてある。これでも成績優秀者で通っているのだ。


 そんなわけで、しばらく、雛香が勉強するのを見守ってたんだけど。


「そういえば、ママたちって次はいつ帰ってくるんだろうね?」


 宿題をすることに飽きたのか、雛香が話しかけてきた。

 宿題を始めてからもう結構時間経ってるからな、少しは会話に乗ってやるか。


「さぁ? どうなんだろな? しばらくはまだ帰ってこないんじゃないか?」


 僕らの両親は仕事の都合で海外出張している。

 まぁ、こういうのは良くあることなので、僕自身は特に気にしていないんだが、雛香からすると心配なのかな?


「雛香は寂しかったりするのか?」


「うーん? いや、雛香にはお兄ちゃんがいるから大丈夫だよ。むしろ二人きりで過ごせるのってなんか新婚みたいでいいよね!」


「何アホなこと言ってんだか」


 このブラコン妹め。いや、流石に新婚云々は冗談だと思うが……冗談だよな?

 とりあえず、会話を続けるのが怖いから話を逸したいんだが……


「あ、そういえば、お兄ちゃんが好きそうなニュースを見つけたよ!」


 ネタを探していると、都合よく雛香の方から話を振ってきてくれた。


「僕が好きそうなニュース? 何だそれ」


 逸らすだけじゃなくて単純に内容も気になる。


「うん、ちょっと待ってね……これ!」


 雛香はスマホを取り出して、画面を僕に見せてきた。

 そこに映っていたのは……


「ね! 凄いよね! まるで本当にダンジョンの中に入ったみたいな体験ができるゲームだって!」


 それは、スライムと戦うシーンや、宝箱を開けるシーンといった、ダンジョンを冒険する映像だった。

 リアル過ぎて、ゲームとは思えない。


「ねっ! 凄いよね! 新技術によって開発されているんだって!」


 雛香は無邪気に喜んでいるけど、僕はそれどころじゃない。

 だってそこに映っているダンジョンには見覚えがある。

 というか、これ、僕のダンジョンじゃ?


 動画投稿サイトに投稿された、その映像はすでに投稿から1日も経っていないのにすでに100万再生回数を超えている。

 そのコメントも、


『リアルでダンジョンが体感できるゲーム!?』

『こんなのを待ってた!』

『これゲーム画面じゃなくてリアルって、ま!?』

『地球始まったな!』


 なんてコメントが打たれている。


「ほらっ! なんかネットニュースにも取り上げられてるよ!」


 雛香は、さらにスマホを操作してニュースサイトを開いた。

 そこには、その動画を投稿した人へのインタビューが載せられている。


 テストに参加して、スマホアプリからダンジョンに入ったこと、モンスターとの戦いや宝箱を開けたり。

 さらに、テスト参加した報酬として傷が治る液体がもらえたこと。

 怪我をしてそれを使ったら、すぐさま治ったなんて話も書いてある。


「ゲームの出来事が現実に反映されるのって凄くない!」


 内容からして、間違いなく僕のダンジョンシステムだ。

 つまり、あの動画はテストに参加した人の物だろう。

 そういえば、テストの内容は口外しないようにって口頭で言っただけで、特に契約はしていなかったなぁ。

 ……Cさんが自撮りしてたっけ……そこで止めなかった僕の完全なミスだ……

 自撮りだけならともかく、動画まで撮ってたとは思わなかったよ。


「本当にそんなことができるんだったら、世界が変わるよね! 大騒ぎになってるよ!」


 雛香は無邪気に笑っている。

 慌てて自分のSNSを見てみても、大騒ぎになっている。


 これは僕のミス……でも、同時にチャンスだ!


「あ、お兄ちゃんも楽しみ? 本当にやるなら一緒にダンジョン行こうね!」


「ああ……楽しみにしておけよ」


 僕は笑っていた。


 あまりの反響の大きさに、少し気後れしてしまったけれど、もう漏れてしまった以上はしょうがない。

 どのみち、この世界にダンジョンを作るってことになれば、騒ぎになるのは当然だ。

 ダンジョンを作ると決めた以上はもう覚悟の上。

 それが、少し早くなっただけだ。


 だったら、気後れなんてしてる場合じゃない。

 動画に寄せられたコメントはどれも、新技術を望む声ばかりだ。

 これほどまでに僕のダンジョンは望まれている。


 だったら、それに応えないわけにはいかないよね!


 地球にダンジョンを! そして、世界を変えてやるぞ!

 僕がダンジョンで皆を幸せにするんだ!


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次話掲示板回で今日の投稿は終了です。

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