第40話

『はい!今日は個人勢Vtuberの〇〇さんのね、えー、なんと転生前のお写真が!えーどうやら出回ってるということなので、俺の視聴者さんからDMでいただいた噂の写真と情報をもとに、今日も熱々な議論をかましたいと思う!』


 そんな出だしで始まったその動画は、まず如何にもな感じの女性の写真がモザイク有りでサムネに使われていて、サライさんという人物がこれまでどんな方法で視聴者さんたちをのかがよく分かった。

 サライさん自体はどうやら男性の個人Vtuberらしく、その投稿された動画のみならず他の動画を遡ってもコメント欄では数々のアンチコメントが寄せられていて、彼の不人気具合とフォロワー数が比例してしまっていることから、まさに『炎上商法』という言葉が浮かんだ。


『どうやらニマニマ時代の配信者のようですねぇ前世は。うんうん、確かに顔はかわいいかも?声は、………うーん、。え、このレベルで萌え声配信者とか言ってんの?やばいよねww一回ファブゼロちゃんの声を聞いて欲しいわ。あぁいう声を本当の萌え声って言うんよなwww』


 その動画では聞きたくもない他者とボクとの比較を何回も述べられ、誰かを批判するその事あるごとにボクを比較対象として扱っては虐げる道具として利用されているようで、動画を見ていてとても心苦しく思ったし吐きそうにもなった。


 そもそも彼は確たる証拠がある訳でも無く、視聴者さんたちや自分の考察でどうしてここまで本当かどうかも分からないことを発信するのだろう。堂々と人に評価をつけて笑いと取ろうとするそのスタンスも気に入らない。


 こんな人に褒められても嬉しくない。

 むしろ皮肉なのでは?とボクは疑ってしまう。


 と言うか、と言うかなのだ。

 ボクの知らないところでボクのコンプレックスについての話題を出さないでほしい。小学六年生以来トラウマになっているこの声も見た目も、ボクの列記としたコンプレックスなのだ。

 そんなコンプレックスを本人の知らないところで話題に出すとか、それも配信とか、ノンデリとしか言いようがない。


 サライという男の配信を眺めながらむかむかしだすイラつきを自覚すると共に、「あれ?」と疑問も生じた。

 SNSでエゴサをしてみれば、その多くは「声がかわいい」「反応がかわいい」「存在がかわいい」である。ボクの視聴者さんたちやフォロワーさんの声には幾らコンプレックスと言えど前向きに捉えてみようと、まおちゃんの言う通り自分のことを少しは認めてあげようと努力しているボクではあるけれど、果たしてSNSにそれらのボクのコンプレックスについて書き込んだ相手にも、ボクはノンデリだと思うだろうか?

 いいや、思わなかった。思ってこなかった。


 ならばボクがサライというVtuberをもう既に嫌悪している理由にノンデリは含まれない。ならばもうこれ以上は考えないようにする。ただし、考えないだけで訂正はしない。

 だって彼は、ボクのコンプレックス関係なくノンデリと呼ばれるに値する人だと、このたった一つの動画で分かってしまうから。


 そして思った。


 願わくば、この他人を燃やすことで自分を燃やし、注目度を稼ぐ男の餌食にボクの推してる声優さんや配信者がなりませんように。と言うか、彼がボクの知り合いに関わることがありませんように。








 ――― 二週間後


 定期試験を無事に終え、夏休みに入って数日経ったある日のこと。

 もうすぐツィアさんと約束していた期限になるためSNSでエゴサしながらボクの今後の方針を決めかねていた時。


 ふとSNSのTLに、拡散され続けているであろうサライというVtuberの投稿が流れてきた。


『神秘的なイラストを描くことで有名な、フォロワー数50万人を超える人気イラストレーターが、まさかの元遊び人で有名なニマニマ配信者で、しかも無責任にこさえた子供を六年前におろしていたことが発覚!???気になる詳細説明動画は下のリンクから!!!』




〇  〇  〇

あとがき(を書かせていただきたく)


今回の話は内容が生々しいというか、人によっては胸糞と捉えられると言いますか。とにかく、気持ち悪い展開ですよね……。

ごめんなさい。

この小説ではこれまでもオタクをけなす内容が含まれていたりとか、多様性で引っかかりそうな内容が含まれていたりだとか、色々ありましたが、今回もなんだか不愉快に感じる人がたくさん出てきてしまいそうな内容を、私は書いてしまいました。


以前から頭の中の構想で、結局今回の内容も書くことは決めていたのですが、いざ書くとなるとどこまでなら刺激的にならないかなど、書くのに苦戦してしまい……。

あとはこの百合配信者ボクっ娘ストーリーにシリアス展開は果たして本当に必要なのか?とも考えてしまって。


ただ言えることは、シリアスな展開があるのは今のところ第二章のみです。それも今回だけなんです。それ以外の今後の章はあまあまイチャイチャ全開のお話になる予定なんです。

なので、可能ならば読者様にはこの第二章は寛容なお心で見守っていただきたく思います。


しかしそれでも一旦これで様子を見て、あまりにも不快だというようなコメントが見受けられたり不評だった場合には、第二章は大幅改変することも視野に入れております。


ご理解のほどよろしくお願い致します。

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