第37話

「もしもし、まおちゃん?どうしたの??」

『ファブちゃん、………配信、ミュートにした?』

「うん!勿論したよ!ボクももう配信自体は始めてから結構経つからね。そんな初歩的なミスはしないよ」


 コメント

 :初歩的なミス、してんだよなぁwww

 :もしかしてスピーカーで通話してる?ww

 :まおりんの声も丸聞こえなんだがww

 :マイクが良いやつだとスピーカー通話の音声も拾うのか。ありがてぇ笑

 :やらかしてるんだよなぁwww

 :ファブちゃんのポンは毎回神回

 :切り抜き師は今回仕事が多いぞwwがんばれwww

 :同接2万の前で、また、やらかすファブゼロw


『そ、そう?まぁ、……うーん、いっか!それでね、ファブちゃん、さっき配信でお願いすれば何でも言ってくれるって話、してたじゃない?』


 :まぁいっかじゃないのよwww

 :まおりん俺らへの理解度が高すぎるwww

 :ファブゼロの放送事故よりも己の欲を優先する女w

 :通話はズルすぎる笑


「え、うん。確かに言ったね、そんなこと。だってお疲れ様なんて幾らでも言ってあげるのに、なんか切り抜きするとか言ってるんだよ?そんなの切り抜いても需要ないと思うんだよね」

『いやいやファブちゃん、もっと自分のこと認めてあげよ?ファブリーズ・ゼロキャノンっていうネームが今、どれだけ世に伝播してると思ってるの。ネットニュースにも大々的に載ったんだから、名前くらいなら聞いたことあるって人だけでもかなり多いはずだよ?そういう人たちにとって、切り抜き動画っていうのはお手軽にその人のことを知れるからとっても需要があるの。そしてファブちゃんの「お疲れ様!」を聞いたとき、絶対思うはずだよ。……あ、She is my angelってね』


 :まおりん、なんかファブゼロの声真似上手くなってる?

 :↑ それ思った。お疲れ様!のところ、ちょっとエロいファブゼロだった

 :↑ ちょっとエロいファブゼロとかいうパワーワード

 :てかまおりん英語の発音めちゃめちゃ良いな

 :純日本人だよねまおりんって

 :それに声が艶やか

 :つまり江戸い

 :江戸いな、うん

 :エドエド


『だからファブちゃん、もっと自分のこと認めてあげよう?ここまで応援する人が増えてるのは、間違いなくファブちゃんに魅力があってこそなんだから。ファブちゃんが自分のこと卑下すると、おねーちゃんすっごく悲しい』


 :良いこと言う

 :その通りではあるんだけど、おねーちゃんは私です

 :いやあたしです

 :ネキたちもよう見とるwww

 :ファブゼロやっぱコメント見てないよなぁw

 :なんでも良いから可愛らしいことしてくれないかなぁ


『でもね、ファブちゃん。これは肝に銘じておいてほしいの』

「うん?」

『ファブちゃんは自分のその声を、そしてその天使のような可愛さを、決して安売りしてはダメ。なんでもお願いされたら言ってあげるなんて、そんなの醜悪なオタクたちにファブちゃんがどんなお下劣なセリフを言わされてしまうのか、考えただけで寒気がとまらないわ』


 :おい!www

 :勝手なこと言うな!

 :自分だけ甘い蜜を吸おうとしてやがるこのスーパー声優!!w

 :ファブゼロがコメント欄を見てないのを良いことに、好き放題言いやがる!ww


「そう、なの?……でも、せっかくボクなんかの、………じゃなくて、ボクの配信を聞きに来てくれてるんだから、その応援にはボクとしては応えてあげたいと思ってて」


 :ファブゼロ……

 :ええ子やなぁ

 :ほんわかするわ

 :カウントダウンとか熱中症とかお願いしようとしてたけど、まだやめとくか

 :↑ やっぱいると思ったそういう奴www


『ダメだよファブちゃん!視聴者のなかには、自分の欲を満たすためだけに頭を使ってどうにかこうにかして、ファブちゃんに恥ずかしいことを言わせる人。いや言わせたい人がいるの!もう既に私は少なくとも一人は見つけた!』

「え、み、見つけた?」

『あ……、なんでもない。忘れてファブちゃん』

「あ、う、うん。でも、恥ずかしいことって例えばどんなの?」

『た、例えば?う、うーん。………じゃあ、“私”と“海”、それから“伝える”を順番に英語で言ってみて』

「私と、海と、伝える?えーっと、……あい、しー、てる?」

『ぐへへ///私も愛してるよファブちゃん♡』

「………はへ?」


 :やっぱまおりんは俺らの救世主だったわ

 :メシアだ貴女は

 :ワイらオタクたちの憧れだよあんたはwww

 :ファブゼロの「はへ?」も理解できてない感じが可愛い笑

 :俺らもファブゼロのこと愛してるで!


「どういうこと?な、なんでボク、今まおちゃんに、愛してるなんて言われた、の?」(ちょっと恥ずかしそうな言い方)

『あーごめんごめん!なんでもないの。間違えただけ』

「まちがえただけ?……そ、そう、だよね//へへ、間違いでも、ちょ、ちょっぴり嬉しい、かも///」

『………』


 五葉まおり:待ってみんなファブちゃん可愛すぎて辛すぎるもうなんなのこの子今すぐ会ってぎゅーってしてあげたい!!!!!!!

 :てぇてぇ

 :キマシタワー

 :まおりおねーちゃん、だぁいすき♡って言わせなくてええんか?

 五葉まおり:↑ もうそんなの今はいいの!言ってほしかったら後でみんなに内緒でこっそり言ってもらうことも私には出来るんだし。今はそれよりもこの余韻にずっと浸かってたい!!!!

 :最低だなっ!?www

 :そりゃねーぜまおりん!!

 :まおりん、ちょっとついでにファブゼロが描いたこの絵、結局なんなのか聞いてみてくれwww

 :はやく知りたいww


『あ、そういえば。ねぇファブちゃん、結局ファブちゃんが描いたこの絵って、なんなの?』

「あ、それはね―――」


 :ドキドキ

 :ワクワク


「―――鳥獣戯画!」


 :wwwww

 :wwwww

 :草ぁwww

 :これまじ今回の配信神回すぎるだろww

 :切り抜き師のワイ、どこをどう切り抜けばいいのか困惑

 :終始おもろかったし可愛いww

 :まぁ切り抜き師たちは頑張ってくれ









 翌日、今回のファブゼロの配信は様々な箇所で切り取られ、その悉くがバズりにバズって。またネットニュースで挙げられる事案となった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る