第15話

「できたよー。サンカちゃんはお魚が好きって聞いたからピーマンの肉詰めをつくってみました!」

「それお魚なにも関係なくないか?」

「気にしないで。ピーマンも魚もそう変わらないよ?」

「えぇ……?我、ピーマンきらいなんだけど………」


 コメント

 :きらいなのかよwww

 :そんな所がかわいいよお嬢

 :ファブゼロさんのアーカイブ見たことあるけど、コラボでこんなに人って変わるんだなwww

 :↑それなすぎる。お嬢の扱いを極めてるwww

 :おもしろすぎ


「なんか我がいじられキャラになってる!違うぞお前ら!!今日は我がファブゼロをこき使う日なのだ!ほれ見てろ~?今からファブゼロの料理を食べる!」

「あっ!偉そうに言っときながらピーマンからお肉だけとって食べてる!ピーマンが泣いてるよー?えーん、えーんって」

「むぐっ!?……ピ、ピーマンが泣くわけ……」


 ピーマン男爵:【794円】えーん、えーん

 ピーマン子爵:【794円】えーん、えーん

 :なんか始まったぞwww

 ピーマン伯爵:【794円】えーん、えーん

 :まじで草

 :名だたるピーマンの名家たちがお嬢に怒ってるんやで

 :お嬢、このままピーマン王国を涙で沈める気か!?

 :↑意味わからんくてちょっと好き

 ピーマン侯爵:【7940円】ピーマン食べろお嬢

 :ついに侯爵が来たwww

 :え、これ名前合わせてスペチャ送ってるんだよな?まさかコイツ等たまたまこんな名前にしてたとか言わないよな!??


「サンカちゃん……、さすがにピーマン王国を敵に回しちゃダメだよ。そのうち公爵様まで来ちゃうかもよ?そのまえに、ほら、食べよ?『あーん』してあげるから」

「えっ!?ちょ、ファブゼロさん!??」


 ピーマン王国:ガタッ

 ピーマン公爵:【50,000円】

 :王国総出でキマシタワー待ってて草

 :公爵様、無言でてぇてぇ期待しとるやんww

 ピーマン国王:【50,000円】

 :国王も赤スぺ叩きつけてて草ァwww


「い、いいよ流石に!は、はずかしいし///」

「良いから良いから。……はい、あーん♪」

「………うぅ~///あ、あーむ///……お、美味しい。ふへへ//」

「か、可愛すぎない?この子」


 :どっちもかわいいwww

 :ええ空間や

 :お嬢もうキャラつくる場合じゃなくなっててww

 :テンパる素のお嬢が見たくてフォローしてるまであるwww

 :二人とも声が異常なまでに可愛いから、耳が癒される

 :萌え声とロリ声の組み合わせとか最強なんよな

 :てかお嬢ピーマン食べれてるやん


「あれ?ほんとだ。今わたしピーマン食べれてる?しかも美味しい!」

「ほら。案外美味しいでしょ?」

「す、すごいよファブゼロさん!どうやったの!??」

「ん~、それはね~」


 :愛だったらエモい

 :親愛でもエモい

 :なんなら友情込めててもエモい


「『美味しくなーれ♡』って唱えながらつくったからだよっ!」


 :つまり“かわいい”を込めたってことやな

 :これはエモい

 :てか純粋にその声で『美味しくなーれ♡』は破壊力やばすぎなのでは?

 :↑たしかに


「へぇ!そうなんだ。………今度わたしも試してみよ♪」


 :お嬢ー!!

 :あまりにも騙されやすくて心配になるレベル


「え、嘘なの?」

「いや?ほんとだよサンカちゃん」


 :もうダメだwww

 :ファブゼロが完全にお嬢のことをおもちゃにしてるwww

 :今日はこのまま最後まで行きそうやなww



 ……………………


 ………………


 …………



 オフコラボ配信を終えて、ボクと旭川ちゃんはボクの家のよりも広いリビングのテーブル、そこを挟んで向かい合って座っていた。


 夜ご飯は配信中に実況しながら食べたし、先ほどまではお互いに「これボクらコミュ強すぎん!?」とか言って笑いあえるぐらいには会話も途切れることなく弾んでいた。

 しかし雲行きが怪しくなり始めたのは旭川ちゃんの一言だった。


『それじゃあ、えっと、その……。お風呂、入りますか///』


 彼女はもう覚悟を決めましたみたいな顔で、そんなとんでもないことを言ってきたのだ。

 これにボクが驚いたことによって、お互いの間に気まずい空気が流れる。


『え、さっき(配信中に)お風呂に一緒に入る予定って、追川さん言ってた、よね?』

『えっ!?(ここで思い出すボク)あ、あー………、言っ、たねぇ』

『そ、そうですよね!えっと、じゃあ入ります?』

『ちょーっと、い、一回話し合わない?』


 そして今に至る。


 目の前には、なんか少しソワソワしたりチラチラとボクを見てる旭川ちゃん。心なしかワクワクしてるようにも見える。

 頬をうっすらと朱色に染めては、俯いて「ふへへ」と笑みを零している。ちょっと可愛くて悔しい。


「あ、あのね?その、配信のあれは、えーっと、その、ノリ?と言うか、なんと言いますか……」

「……?………えっ?じゃ、じゃあ、一緒にお風呂に入ってくれ、ないの?」


 ボクはさっきまでの威勢など消えてすっかり普段のコミュ障に戻りながら、しどろもどろに説明した。つまり、ほんの軽い冗談だったのだ、と。


 しかしそれに返ってきたのが、この旭川ちゃんの瞳をうるうるとしながらの上目遣いである。




 その上目遣いは卑怯じゃん!!!











◇ ◇ ◇


 SNSで、とある投稿が更新された。


『ファブゼロ、私は前の方が好きだったな

 #戻ってこいファブゼロ        』

♡1件






〇  〇  〇

お風呂回は、今回は書きません。物語を進めることを優先します。

そのうち『うふふ♡』なシーンも書きたい所存。

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