第8話
注意:一部、とても不快に思われる発言があります。作者の本意では無いのでご了承ください。
〇 〇 〇
あたしはかなり重度のオタクだという自覚がある。
アニメが好きで、Vtuberが好きだ。
だけどこの趣味はだーれも知らない。家族だって知らない。
このまま誰にも知られず、ひっそりと一人で隠し続けなければいけない趣味だと思っていた。
あたしの家族はみんな、オタクや陰キャという生き物を馬鹿にする節がある。「アニメ~?そんなの見てる人が犯罪者になるのよ」「Vtuberだと?そんなの負け組たちが傷を舐めあっているだけじゃないか」みたいに、とにかくエリートコースを歩んできたママとパパはオタクたちを貶したがる。
(そんなことないのに………)
両親はあたしがオタクになどなるわけないと思っているのかも知れないけれど、彼らの言い分が正しければ、あたしは犯罪者予備軍になってしまうし、ママやパパと違ってその娘は負け組だということになってしまう。
もしそれを知ってしまったとき、ママとパパはあたしのことをどう思うのか。きっとあたしにはすごく甘い両親だから、『あたしは例外』だとか言うんだろうなぁ。
そんな風に例外扱いされることが、あたしは一番嫌いだ。
むしろあたしから見たら、オタクの方が勝ち組だと思っている。
あたしみたいに好きなことを好きとも言えずに、家では家族に内緒で。あたしはクラスのカーストというもので、どうやら一番上だと思われているから学校でもそんな趣味を打ち明けれないで結局隠す。
そんなことをしないで、自分の好きなものを好きだと、堂々と胸を張っていられる彼らは最高に輝いて見える。
好きなことを語り合う彼らが見てる景色は、いったいあたしが見てる景色の何倍色付いているのだろう。
はっきり言ってあたしから見える世界は窮屈で、とても色褪せていた。
そんな日々に辟易としていたある日。
学校では来月に行われる修学旅行の班決めがあった。
そのホテルの班で同じになったのはいつも仲良くしている何人かの女子のうちの二人と、今まで一度も会話をしたことのない女の子だった。
たしか名前は、―――追川 兎月さん。
どうして名前を覚えていたのかと言えば、彼女は学年で見てもかなり容姿に優れて可愛い子だったから。
ただそれだけだった。
来月ホテルで気まずくならないために、あたしはとりあえず彼女に話しかけた。
グッと距離を縮めたとき、ふわりと何かいい匂いがした。
「追川さんってすっごく可愛いよね!あたし前々から一回話してみたいって思ってたんだけどさー。追川さんってなんか人を寄せ付けないオーラがすごいじゃん?だから、逆にこの修学旅行でホテルの班が同じになれたのはデカいわー」
彼女はすごく困惑していた。
たしかに、あたしの見た目ってこう、金髪で派手だと思うし、よくキツイって言われる。
でも彼女はあたしや他の子たちに、困惑しながらも「可愛いよ」と褒めてくれた。内心では人見知りな子だと思っていたのに、この時あたしは彼女の声に驚くよりも先にじつは「なんだ、普通に人と喋れるんじゃん」って、そっちで驚いていた。
そんなこともあって、あたしが追川さんの声を可愛かったなぁと思ったのは家に帰ったあとだった。
でもそこまで気には留めていなかった。
なんならすぐに忘れて、今日はどの子(Vtuber)の配信を見ようかなーと考えていたぐらいだ。
夜ご飯も食べて、お風呂に入って、よし寝ようと思った際になんとなくスマホで見てたSNSで、ちょっと面白い切り抜きを見つけてしまったのが、すべてのはじまりだと言っても過言では無いと思う。
その切り抜きはファブリーズ・ゼロキャノンというふざけた名前の配信者のボイチェンが切れて素の声がバレてしまったという動画だった。
興味半分でその動画を開いて、あたしは愕然とする。
そのフォロワーからファブゼロと呼ばれる人の声が、なんと今日聞いたばかりの可愛い声と同じものだったから。
〇 〇 〇
汐凪ちゃんside です。
長くなるので2つに分けました。なので次回も汐凪ちゃんsideです。
次回予告……日曜日の急遽行われたというファブゼロとまおりんのコラボ雑談トーク配信を、汐凪ちゃんと一緒に見る回
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