第7回 カラートーク2024
第7回お題「色」
【SOUND ONLY】と表示されている画面があった。
真っ黒なバックに白い文字――なんともシンプルなデザインだ。
『時間だね……全員揃ったかな? では、そろそろ授業を始めるとしようか』
――オンライン授業が始まった。
顔が見えない黒い画面の先にいるセンセイは、がさごそと教材を準備しているのだろうか……どうせ見えないのに……。
彼が見るだけのカンニングペーパーを手元に置いている音かもしれない。
『……では、前回から引き続き「イメージ」のお話だ。今日は「色」だね……色と言えばまずどの色を思い浮かべる? 赤かな? 青かな? 緑? 黄色……それとも黒か、白かな?』
早速、生徒たちの声がチャットに表示され始めた。文字だけなので声色は分からない。もっと言えばセンセイを含め生徒も【SOUND ONLY】の画面なので顔色も分からなかった。
『ふむふむ……やっぱりまず思い浮かべるとすれば赤が多いかな。赤色……戦隊ものと言えばリーダーは赤だからね……印象に強く残っているのかもしれない』
赤と言えば血だ。赤と言えば、信号で言うと『止まれ』。果物で言えば苺や林檎、さくらんぼも赤色だ。野菜で言えばトマト。料理を挙げればチゲ鍋、キムチ料理も赤色だ……。辛い料理は赤く染まっているだろう。
ではイメージではどうだろう。
赤と言えば情熱だ、赤と言えば闘争心だ。過激や前向きなイメージが強いだろう……、人によりけりと言ってしまえばそうだが、赤から連想されるものをイメージして後ろ向きな印象を持つ者は少数なのではないか。
後ろ向きと言えば、青色だろう。だが……これは色眼鏡をかけているせいか?
『青色は、信号で言えば「進め」だが、食欲が湧かない色でも有名だろう。青い果物は? 青い料理は? 探せばあるのかもしれないが、ぱっとは出てこないのではないかな? ……チャットを覗けば青林檎があったけど……あれは青なのかな?』
緑寄りだろうか。緑も青と言えるし青は緑とも言えるからややこしいところだ。
森と言えば緑。海と言えば青だから……青と緑は自然の色とも言えるだろう。
それを言い出したら赤色は溶岩を連想するため、赤色も自然の色ではないかと思うかもしれない。……ただ赤色と言えばまず浮かぶのが別のものである。
そのため赤色に自然のイメージがない……。もっと他に挙げるべき特徴があれば少数派は切り捨てられる。青と緑の代表が『自然』ならば、他に挙げるべきものがない証拠と言えた。
『色にはそれぞれ抱く印象がある……連想するイメージがあるはずだろう。それらは道具と組み合わせることで意味が生まれてくる。
たとえばさっき言ったように「信号機+赤」なら「止まれ」、と表現するようにね……。「警報音+赤」は「非常事態」を表し、「刃を赤く」すれば「殺害後」であると表現できる。
……イメージがあるおかげで、組み合わせることで意味を表現することができるんだよ――では問題だ。
「 」+青=「進め」は当然ながら空欄には信号機が入る。
では――「 」+青=未熟だとすれば?』
チャットに解答が投稿される。
『若者』『子供』――青二才から連想した答えが多い。もちろん正解である。若者でも子供でもいいが、空欄にそれらを入れれば青を含めて未熟と表現できる。
『別のケースとして、「顔」+青であれば体調不良だと言える。青いというのは顔色が悪いとも取れるからね……、やっぱり青色は後ろ向きなイメージが多いのかもしれない――』
ただし、学生+青で=青春とも言える……ただその場合は青でありながらピンクを含むという、捻った式になってしまうが。
『では、少し複雑にしてみようか。
Q 「海」+「赤」=「 」 ……さてどうする?』
チャットには多数の意見が寄せられた。
『海は赤くない』
『海が赤い、ということを意味するものですか?』
『うーん……夕日が反射してるとか?』
……解答ではなく問題文への質問が多数あった。
だが、中には正解している生徒も数人いた。
『恐怖、とか?』『あり得ないこと』『猟奇的』などなど。
……細かいことを言えば赤い海は実際にあるのであり得ないとは言えないのだが、海とは青だ、と散々前置きしているので、それを踏まえた上でのあり得ないことであれば正解だ。
イメージが湧かないものは総じて恐怖やあり得ない……、「未知」を表現している。
『では、こんな問題はどうだろう?
Q 「 」+白2-黒1=若者3(青赤赤)-若者1(青)+刃+赤=若者(青)-若者(赤)×好き(黒)
……空欄を埋めた上で、この式の答えはなんだろう?』
――ヒント。
若者(青)=男性
若者(赤)=女性 ……トイレの表示に従っている。
――答え。
空欄は「二股疑惑」。
式全体の答えは――
「彼と付き合っている、と思い込んでいたストーカー女が、二股していた彼を強い嫉妬心と独占欲で殺してしまった」――である。
『――分かるわけがない、と多数の意見があったようだね……、確かに先生独自のルールで固め過ぎたかもしれない……そのあたりは反省だ。反省の色は見えないかもしれないが……。
だが、新鮮に映ったのではないかな? みんなちゃんと考えてくれたようで……先生も嬉しいよ。色褪せないような努力を評価してほしいね……だから、そう難色を示さないでくれよ。先生だって大変だったんだから。
先生の授業を受けている時点で毛色の変わった授業を求めているのは分かっているんだから……君たちの期待に応えているのだから、これは色よい返事だと思うけどね。
――いや、待ってくれ、運営に文句だけは言わないで……。やめてちゃんとやる、次からは普通の授業を――うわうわっ、みんなすっごい怒ってるね、これはもう挽回は難しぃ……こりゃ旗色が悪いねえ……』
……その後、次回の日程からセンセイの授業が消えていた。
原因は不明だったが……まあ。
色々あったのだ。
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