第31.5話「失敗」

「クエストは、その、失敗です……」

「です、よね……」


 受付嬢さんが申し訳なさそうに吐く一言に、俺は事実を再認識させられる。

 教会を出た俺はノエルと別れ、独りで冒険者ギルドへ報告に行っていた。


「……ですが、遭遇したトレントの情報は貴重です。最近、魔王城の周辺から森が汚染されているとの情報が届いており、冒険者教会は、おそらく何らかの影響を受けた強力なトレントの仕業だと考えていました。今回の報告からそれが確信に変わり、時期に本格的な対策が練られるでしょう」


 解散後、俺の発言を元に、フィリスが報告をしてくれていたのだろうか。しかし、何か重要な情報を言いそびれている様な……。


「と、とにかく、情報提供報酬をお渡しさせて頂きます」

「いいんですか⁉」

「情報提供も内容によっては報酬を得ることができます。どうぞ受け取ってください。まだ駆け出しなのに、災難でしたね……」

「ありがとうございます……!」


 受付嬢さんは、あらかじめ用意していたであろう袋を手渡してきた。だが、袋のサイズがおかしい。


「いやいや、これはちょっと……」

「……受け取ってください?」

「は、はい……」


 受付嬢さんは笑顔で報酬を押し付けてきた。それを持った感じ、中身はしっかりとゴールドが入っている。しかし……。


「多くないですか……?」

「初心者ボーナスとでも思っていてください!」

「い、いや…………」


 そして俺が口を開いた時には、受付のシャッターが閉まっていた。

 仕方ない、ありがたく頂戴しよう。

 今日は仲間たちに会う気分にはなれないし、また明日にでも山分けするとして、俺も帰るとするか。

 静かにギルドを去り、雨上がりの夕日に照らされた道を、ただひたすらに歩いた。


      ◆◇◆◇


「疲れたなぁ……」

 宿へ戻り、ベッドに横たわった俺は、天井を向きながらゆっくりと目を瞑る。そのまま夢の世界へ誘われるかの様に、俺の意識は遠ざかっていく。



 そして、藍色の日常と淡い記憶が俺の脳裏を照らしつけた。

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