駆け出し冒険者編
第7話「リスタート」
窓からは陽の光が差し込み、外の小鳥たちは元気に鳴いている。
目を覚ました俺は、ふかふかのベッドから降り、クローゼットまで移動した。そして、いつもの普段着ではなく、こっそり別で買っていた冒険者用の動きやすい服に着替える。
今日から俺は冒険者として活動するのだ。最終目的は魔王討伐? それは通過点に過ぎない。
真の目的は、メルともう一度逢うことである。あわよくば結婚……コホン。そのためにはとっとと魔王を倒し、幸せな生活を送る。
目的に関しては、スタートラインにすら立てていないのだ。果たしてどのくらい掛かるのやら……。
「……よし」
洗面台の水で顔を流し、タオルで拭く。その顔を鏡で見ると、なんとも美しい男の顔が写っていた。特徴的なものといえば、綺麗な青髪だろう。……あぁ、俺だ。
そして昨日、バイスさんから貰ったポーチの中に入っていた、藍色のグローブと濃い緑色のレザーマントを身に付ける。
ポーチはベルトに付けて……剣はどうしよ。腰にかけるか! 左腰に剣を装備した。
その姿を改めて鏡で見ると、それは冒険者そのものであった。我ながら強そうだ。初心者感は否めないが。
部屋のドアを開け、宿の階段を降りる。
すると、受付にはこの店の店主、緑髪ロングウェーブ美人のメイジーさんが居た。
「あら、おはようございます~」
「おはようございます。……エマは?」
「あぁ、あの子は朝が苦手なんですよ」
エマというは、この宿の看板娘ちゃんの名前で、メイジーさんの娘である。俺の一つ下で歳が近かったため、昨日の夜は宿へ来たばかりにも関わらず、たくさんお話してしまった。
「以外ですね、あんなに明るいのに」
「夜は活発にお手伝いをしてくれます。そのおかげで、夜遅くに泊まりに来るお客さんは皆さん、「元気をもらってる」と言ってくださるんですよ」
「ほう、『夜の女』ですね」
「やめてください?」
「すいません」
メイジーさんは苦笑いで応えた。しかし、あんなに可愛らしく素直で良い子のことを『夜の女』だなんて、一体誰がそんなことを言ったんだ。……あとでエマにもお詫びをしよう。
さ、さあ、朝食を取ろう! この宿はお金を払えばご飯も出るのだ。こんな良い宿、人が来ないのが不思議なくらいである。
「……じゃあ、『日替わり朝食セット』をお願いできますか?」
「はい、『日替わり朝食セット』ですね。三百ゴールドになります」
俺は三百ゴールド丁度で渡し、空いてる椅子に座った。全席空いてるけど。
しばらくして、メイジーさんが日替わり朝食セットを運んできた。
「お待たせしました、日替わり朝食セットです」
「おお、美味そう……!」
ふわふわとしたオムライスに、温かそうな人参のスープ。……気付けばスプーンを握っていた。では、今日の活力を蓄えるとしようではないか。
「ふふ、うちの自慢のシェフがお作りしておりますので」
「コックでも雇ってるんですか?」
「まあ、うちの次女なんですけどね」
「まだ娘さんが……」
「うちは四姉妹で、エマちゃんは末っ子なんですよ~。み~んなかわいくてですね……」
……あ、長くなるやつだ、これ。
他の姉妹ちゃんはどんな美人なお姉さんなのかな、とそんな想像を膨らませながら、美味しそうな料理を口の中に運んだ。
◆◇◆◇
「依頼を承認しました」
宿屋で食事を終えた俺は、早速冒険者ギルドへと向かった。
依頼の紙が貼られた掲示板から、初心者向けのクエストを選び、受付嬢さんの元へ持っていった。今回のクエストは、『スチールゴブリン』という魔物を五体討伐するというもの。これが初クエストである。
ちなみに、俺の冒険者申請をしてくれた受付嬢さんではなかった。避けられていないといいが……。
「ありがとうございます」
「お気を付けて」
俺は本日の受付嬢さんのスマイルを浴び、やる気マックスで冒険者ギルドを出た。
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