第7話 アフターパーティ
男性客から待ち札を貰い席に案内する。注文をとろうとしてユエが顔を上げると数人の男子がユエの顔を見て嬉しそうに笑った。
『うわ、ラッキーじゃん。』『まじ、ここの店可愛い子ばっか。』
にこにこ笑う男子にユエは愛想笑いする。
『ええと・・・ご注文は?』
『あ、えっとねー。』
メニューからいくつか注文を貰いすぐに控え室に戻る。ドリンクとお菓子を用意してトレイに乗せると注文を運んだ。
『お待たせしました。』
『あ、来た。ありがとう!ねえ、君なんて名前?』『うんうん、俺はさあ。』
何故か捕まってしまいユエは苦笑しながらトレイをぎゅっと胸にあてる。その肩を大きな手が触れて、振り返ると
『すいません、うちのウェイトレスが。混んでますからこれで。』
狼は威圧感のある笑顔でそう言うとユエの肩を抱いたまま控え室へ引っ込んだ。
『大丈夫だった?』ととたんに狼が心配そうに顔を覗きこむ。
『うん、大丈夫。ありがとう。』
『うん・・・ああ、なるほどな。ユエちゃん、相当似合ってるね?』
『え?ああ、浴衣のこと?』
『凄く可愛い。これは気をつけないとなあ・・・
『うん、ありがとう。頑張るね。』
何か言いたげだったがユエが笑ったので狼は頷くだけだった。
後半戦、女性客がまばらになって男性客が増えてきた。スタッフの女子たちもてんてこまいで回すのがやっと。ユエも少し疲れたのか溜息が出た。
『ユエちゃん!出てー。』
『はーい!』
また呼ばれてホールに飛び出る。にこにことしながら注文をとるとホールを走りまわった。あと一時間ほどで終了というところで教室のドアのほうで声があがった。
『あれ?
『うん、急がしそうだし。って男ばっかだな。』と
『ユエちゃんは大丈夫?』
『大丈夫だよ。もういいの?』
『うん、十分楽しんできたから。』
虎二と狼が帰ってきたおかげでスムーズに客が回りはじめるとまた少し女性客が帰ってきた。丁度待ち札が切れたところで時間終了となった。
客が
その後、文化祭の出展でポイント稼いだことが評価されユエのクラスにどっさりとお菓子が届けられた。ジュースもあり放課後に残ってクラス全員で打ち上げとなる。担任に届けを出してから皆で集まると小さなパーティになった。
仲の良いクラスメイトたちが集まって話している中にポツポツと男女のカップルが出来始める。どうやら文化祭で付き合い始めたらしくそれが話題になった。
ユエの傍には狼、虎二がいて何気ない話をしている。そこに男子の一人が三人に向かって声をかけた。
『なあ、中山って彼女いるんだろ?間山は?』
『え?』
虎二が困った顔で笑う。
『俺のことはいいって、なあ、狼?』
『うん、そっちで楽しくやってろよ。』
狼が投げると女子の一人が頬を膨らせる。
『えー!間山君のこともっと知りたいよ。彼女いるの?』『あたしも知りたい!』
どうやら興味がそこに集まってしまい狼はうな垂れる。
『いや・・・まじで・・・困るって。』
それを見ていたユエは笑うと助け舟を出した。
『狼君、困ってるみたいだから・・・許してあげて?』
ユエの言葉にカップでジュースを飲んでいた男子が声を上げる。
『あ!
『え?』
『興味ある。マジで今日の如月さん、めちゃくちゃ可愛かったもんね?』
『そうそう。』『俺、立候補したいな!』
盛り上がる会話にユエは固まると苦笑して狼を見た。狼は鼻を鳴らすとユエの手を握って微笑む。
『ごめん、こういうことだから。だからそういうの聞かないで?』
突然の言葉にユエは固まったまま握られた狼の手を見つめている。クラスメイトたちはざわめくと『なんだ、そういうこと?』『間山には勝てん。』などと話はとりあえず落ちついた。
ユエは少し困った顔で握られた狼の手を見てから顔を上げた。狼は少し赤い顔をしてユエを見ている。それにつられてかユエの顔も赤くなった。
『まじかよ。』
ユエの耳にだけ聞こえた呟きにハッとして虎二を見る。虎二はなんだかバツが悪そうな顔をしていた。
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