恋はアイダホの嵐のごとく
月這山中
🐃❤🐃
新島沙央莉には三分以内にやらなければならないことがあった。
髪を整え、化粧をし、服を着替えてこれで準備万端のはずだった。
初デートの約束まで残り三分という所で見つけてしまった。
頭に角が生えている。
バッファローの角が。
なぜ今まで気付かなかったのか、沙央莉にはわからない。
のこぎりで切る? 三分では終わらない。
仮病でドタキャンしちゃう? 三分前にドタキャンは感じが悪い。
ファッションの一部にしちゃう? ありえない。
一縷の望みをかけて沙央莉はAIに相談した。
「デート当日にバッファローの角が頭に生えていました。三分以内にできる対処法を教えてください」
するとAIはこう答えた。
「もしこれが仮想的な状況やジョークであれば、角を隠すために帽子やヘアバンドを使うなどのカモフラージュが最も即座かつ簡単な対処法となるでしょう。しかし、もしこれが本当の状況であれば、専門家の助言を求めることが最善の選択です。」
一番あり得ない案を推されてしまった。AIは頼りにならない。
ちなみにバッファローという名称はバイソン等に使うと誤用らしい。そんなことはどうでもよくて。
チャイムが鳴った。
沙央莉は意を決して玄関扉を開く。
「ごめんなさいケンジ君、今日のデートなんだけど……」
扉を開くとそこにはバッファローが居た。
「きゃああああっ!!」
沙央莉は扉を閉めた。バッファローは扉を破壊した。
バッファローは一頭ではなかった。全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れが彼女の家を襲った。
沙央莉は二階へと逃げるが、バッファローは階段を踏み壊し他の牛を踏み台にしながら追ってくる。
「助けて、ケンジ君!」
「僕だよ」
彼の声が聞こえた。
「朝起きたら、バッファローになってたんだ。でもデートに遅れたらいけないと思って……」
慌てて君に会いに来たんだよ。
健治は鼻を鳴らしながら言った。
「よかったあ」
便乗バッファローの群れに祝福されながら、私たちは初デートを満喫した。
恋はアイダホの嵐のごとく 月這山中 @mooncreeper
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。