第25話 フードファイト!!


 あの戦いから2日。俺たちはギルドにいた。


「今日は全部ギルドが持つわよ。今日は飲みまくってMVPのシロナちゃんと作戦の成功を祝うわよ!」

「「「「乾杯!」」」」


「ほんと〜に大変だったなの」

『死にかけたしな』


 封印作戦を色々振り返ってると、近寄ってくる冒険者が数名。


「おいおい、主役がそんな端っこで何してるんだよ」

「そうだぜ。嬢ちゃんがいなかったら今頃街は無くなってただろうな。助けてくれてありがとう」


 「ありがとう」そう口々に冒険者が、感謝の言葉を伝えてくる。言われているシロナもまんざらではない顔をしている。少し恥ずかしいようだ。


 まぁ見ての通り冒険者全員に俺たちの実力は知れ渡っている。あれだけ派手にやってたからな。仕方ない。


「しっかし少し残念だな。実力を隠して裏で活躍する強者ムーブとかやってみたかったな」

「でもみんなに感謝されるのは頑張った甲斐があるなの」

『そうだな。でもこれで隠す必要も無くなったわけだし、気楽でいいよな』


「だいたいよ〜、こんな子供がガーディアンと戦ってたなんてほんと今でも信じられないよな」

「しかもA級だなんて、ほんと世界は広いよな」


 それにしても、ギルドで冒険者たちが酒を飲み交わす男たち。


『良い! これだよこれ! 俺が求めてたのは! くぅ〜やっぱ生で見るのは違うなぁ』

「マスター、酒を飲むおじさんを見るのが好きなの?」

『いや、そういうわけではないんだが』

「?」


 はぁ! やばいあまりの可愛さに焦点仕掛けるところだった。不意打ちにその首をコテンって傾けるやつするのはずるすぎるだろ。


「いい! その角度! 可愛すぎる!」


 そうそう角度がこれまた良いんだよ。分かってるじゃないか! どうやら同志のようだな。


 誰だ誰だと後ろを見るとそこにいたのはなんとサリアだった。


「シロナちゃんってやっぱり可愛いわ! 最初に会った時からずっと思ってたけど、その動き全てに愛らしさがある。その髪、肌、目、声、顔! どれをとっても可愛すぎるのよ!」


 オタク特有の早口で語りながら、シロナに頬ずりをするサリア。う〜んいつものしっかりしているおねえさん感が全くない。そう例えるなら変態親父!


「サリアさん、ちょっと近いなの。それにお酒くさいなの」

「も〜う。つれないんだからぁ〜。もっとおねいさんに甘えて良いんだZO!」

「「いいんだZO!」じゃないわ! 全く目を離した隙にすぐどっかにいくんだから。っていうかしれっと子供に酒を渡すな!」

「え〜」

「え〜じゃない! ほら行くよ! ごめんね、サリアはあんまり飲ませないようにしてたんだけど」


 異常事態に駆けつけてきたのはネフェリアだった。


「ネフェリアさんももうすっかり元気そうなの」

「まぁ生活するぐらいには戻ったよ。シロナちゃんも元気そうでよかったよ。私がサリアを見張ってないと何しでかすかわかんないし。なんせA級だから止めれる人も少ないんだよね。じゃあね」


 抵抗するサリアを引きずって消えていくネフェリア。なんだかお母さんみたいだったな。


「いつもと様子が違ってたの」

『酒って人の性格をあんなに変えるんだな』

「ちょっと飲んでみたいなの」

『言っておくがお酒はまだ飲んじゃダメだからな』

「え〜」

『サリアみたいな反応をするなよ』


 まぁ性格を変えるというより、本性をあらわすの方が正しいかもな。にしても、サリアにあんな幼女を愛でる趣味があっただなんて。あれ、言葉にしてみたらめちゃくちゃ犯罪者じゃね?


『そういえば、こんなにご飯があるのに食わなくて大丈夫なのか? 早く食べないとなくなるぞ』

「確かになの! 私も食べて食べて食べまくるなの!」


 いや、ほどほどで良いんだけど。


 さっそく、テーブルの上にある料理に早速手をつけ始める。


 シロナにかかればすぐペロリだ。そうして食べていると、大男が反対側の席に座った。ひぇ〜めっちゃ厳つい。まるで歴戦の猛者って感じだ。


「いい食べっぷりじゃあねぇか。だがまぁ俺ほどではないな」


 そういうと男はチキンもどきを両手に持ち、二口で食べあげてしまった。


『すごいな。シロナよりも大食いだな』

「そんなことないなの」


 そういうとシロナも男のマネをし、両手にチキンもどきを持ちあっという間に食べ終わってしまった。


 両者睨み合う。お互い一歩も目を逸らさない。


『いやどこで張りはってるんだよ』

「食べることに関しては負けないなの」

『食い意地がすごいな』


 気づいた他の冒険者も集まってくる。


「なんだケンカか?」

「嬢ちゃんとバルボラさんじゃないか!」

「A級vsB級ってことか」


 すごい眼力で睨んでくる男、どうやらバルボラというらしい。正直めっちゃ怖いんだが。蛇に睨まれた蛙というか、発注ミスして上司が怒った時より怖い。


『ちょっシロナさん、ここは一回引きましょうよ。な〜に大丈夫ですって! 伝家の宝刀ダイナミックDOGEZAをかまして逃げましょう。張り合う必要はないですから!』

「マスターちょっと黙って」

『はっはい!』


 この睨み合いは一体いつ終わるのかと思った瞬間、両者頷きすごい速さで動き出す。なぐりあいか? っと思ったが互いの手に握られているのは肉!

 

 そしてかぶりつく! また、肉を取るの繰り返し。


「はっ速すぎてみえねぇ」


 ざわめくギャラリー。速すぎるが上に動きを追いきれていないようだった。


 だが俺には見えている。テーブルの料理を片っ端から食べ漁っているのだ。しかも料理を奪い合いながら。


「見ろ! 料理が消えていくぞ!」

「なっなにぃ!? 相手の取ろうとしていた皿を風魔術でちょうどいい感じに打ち上げて空中でキャッチだと! でもバルボラさんもテーブルを叩き、その反動で料理を浮かせてそのまま空中で口に入れた! 相手の邪魔をしながら食事をする、ただそれだけにとてつもない技術が使われている!」


 某格闘漫画みたいなわかりやすい解説をありがとう。どうやら少し見えている奴もいるらしい。


「「料理もってこい!」なの」


「はっはい!」


 なぜか他の冒険者が食べ物を持って来させられているという事態になってしまった。そんなことも気にせず食べ続ける2人。


「す、すげぇ」

「あの大食いのバルボラさんと互角だなんて」

「これがA級の力か……」

「はいは〜い。皆さんもどちらが先にダウンするのか、賭けてみませんか?」

「500G賭けるぜ」

「俺は今夜の宿代を」

「1000gだオラァ」


 受付嬢がちゃっかり賭けを開催してるみたいだ。


「倍にしてくれー!」

「もっといけー!」


 応援のおかげで会場のボルテージはマックスに。終盤に差し掛かると両者共にペースが落ちてきた。


「絶対に負けないなの!」

「いいや、俺が勝つ!」

『俺は勝ち負けよりシロナの体が心配だよ』


 一体食べたものはどこに消えていっているのだろうか。俺が知らないだけで食べ盛りの子供ってこんなもんなのか?


***


10分後……


「ぐっ、なかなかやるな」

「そっちこそ……なの」


 どうなったのかというと、結局決着がつく前に食べ物がなくなった。あれだけあったのに、全部なくなった。


 だけど、2人の間には友情とはまた違う何かができていた。今も握手を交わしている。


「では。引き分けということで、手数料を差し引いてお返しいたしますね」

「持ってかれた〜!」

「くそおおお」


 結局かけた人全員がマイナスになってしまった。手数料もきっと今回の酒代や食べ物代に充てるんだろうな。まさか、わざと引き分けにしようと裏で色々工作してたんじゃないだろうな。なんてせこいんだギルド!


 みんなもギャンブルはやめようね。


『はぁ〜せっかく休もうっていうのに今度は食事でバトルって、どんだけバーサーカーなんだか』

「流石に食べすぎたなの」

『しっかり休まないとダメだぞ』

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