第21話 封印作戦 その1
空が少し明るくなってきた頃
『ほら、朝だぞ』
「むにゃむにゃ」
『アレキサンダーと約束してるだろ?』
「ん〜」
『町守るんだろ〜』
「うにゅ〜」
はぁ、仕方ないな。念力でフランの体を起こす。顔を洗って髪を整えて、着替えさせる。ほぼ毎日やってるから手慣れたもんだ。
「おはよぉ、マスター」
シロナの寝起きもやはり可愛い。
『やっと起きたか』
「あっ! そういえば、アレキサンダーと約束してたの!」
『まだ大丈夫だぞ。こういうこともあろうかと早めに起こしておいた』
「ナイスなの!」
『まぁな』
「そろそろ行くなの」
『そうだな』
***
約束の場所まで来たが、アレキサンダーが先にいた。もしかして遅れてたか?
「来たか」
「もしかして、遅れちゃってたなの?」
「いや、大丈夫だ」
「ふぅ、よかったなの」
アレキサンダーは30分前にもう着いていたらしい。几帳面なやつだ。
「そういえば、 A級の冒険者はまだ着いていないなの?」
「それなら、まだ来ていない。あと少しで約束の時間になるから、もう近くまで来ているだろう」
「噂をすればなんとやらだね」
突然真後ろから声がした。
「だっ誰なの!?」
気配探知も発動しているんだが、全くわからなかった。
「まぁまぁ、そう警戒しないで」
「普通の人は後ろから声をかけられたら警戒するなの。しかも、気配探知にも引っかかってないなの」
「ああ、それはね私の結界のおかげさ。気配を隠してくれるんだ」
「結界……もしや、あなたが派遣されてきたA級の冒険者の方ですか?」
「そうだよ。私の名前はネフェリア。君がアレキサンダー君だね」
「はいそうです。あなたがかの有名な"結界師"殿ですね」
「まぁ、そうとも言われてるね」
「結界師?」
「え〜君私のこと知らないの?」
「知らないなの」
「これでも結構有名なんだけどな」
「シロナ君、あの方はAランクの中でも特に結界の魔術で秀でているんだ。だから、結界師という二つ名で呼ばれている」
二つ名かぁ。良いなそれ、かっこいい! シロナもいつか付けられたりするのだろうか? 氷塊魔術をよく使うから氷姫とか? それともめちゃくちゃ可愛いから、氷花とか?
「君シロナっていうんだね」
「うん」
「もしかして、君が最年少でA級になったていう?」
「うん」
「はぇ〜こんなに小さい女の子だなんて思わなかったよ。サリアが言ってた通り美少女だし」
シロナを美少女と言うなんて……わかっているじゃないか!
「サリアさんの知り合いなの?」
「まぁ古い付き合いだね」
「自己紹介も終わったことですし、そろそろ本題に入っても良いですか」
「話しすぎたようだね。ごめんごめん」
「ではガーディアンの対処ですが……」
「それなら私に作戦があるんだ」
「というと?」
「ガーディアンをダンジョンの中に戻すっていうのはどう?」
「そんなことできるなの?」
「いいかい? S級ダンジョンってのはね、普通のダンジョンと違って別空間にあるんだ。ゲートと言われるアーティファクトがあの平原にはあるんだけど、それによってダンジョンの空間に行くことができる。魔物もあそこから出てきているんだ。だから、ガーディアンをゲートの近くまで連れて行ってゲートを起動する。そして、ガーディアンをダンジョンの中に戻すってわけさ」
「それだとガーディアンがまた出てくるのでは?」
「そこは私の出番だよ。中央ギルドからもらってきたこの国宝級のアーティファクトで一時的にゲートに結界を張って出入りできないようにする」
「どのくらい持つのですか?」
「ざっと見積もって2年ぐらいかなぁ。対策考える時間ぐらいならこれで十分だと思うよ」
「じゃあその作戦で行くなの!」
「それで結界が構築されるギリギリにゲートの中に入れて欲しいんだ」
確かに結界を張るギリギリじゃないと出てきちゃうかもしれないしな。
「結界を構築するまでに必要な時間は二時間。それまでに君たちはゲートまで連れてきてくれ」
それからは誰がどのような動きをするのかを話し合った。
まず、シロナがネフェリアを護衛する。結界を構築している間は無防備になるからだ。そして、アレキサンダーはサリアたちと合流し協力しながら、ゲートまで連れて行くことになった。
他の冒険者も連れて行った方がいいのではないかという話も出たが、人数が多すぎても、あの範囲攻撃でやられてしまうので結局この三人だけになった。
***
偉大な牙の平原にて。
「このアーティファクトは一度使うとしばらく使用できなくなる。つまりもう一回とかは無い。絶対に成功させよう」
「おー」
「了解だ」
作戦通りアレキサンダーはサリアの方へと向かった。
「私たちも急ごう」
『よし、俺の出番だな』
ふっふっふ。形状変化のレベルが上がったことによってなれるようになった、新しい姿! その名も車モード!(見た目は完全にJ◯ep)
そう! このJe◯pならどんな悪路だってスイスイと行ける。しかも魔力量もいつものスケボーモードよりも少なく済み、速い。そして複数人で移動ができる。
「快適なの〜」
まぁいつも高いところ飛んだりしているから寒いもんな。ちなみにネフィリアは興味津々そうにずっと辺りを見ている。なんか恥ずかしい。
「これは君のアーティファクトの能力なのかい?」
「そんなとこなの」
「こんなアーティファクトは見たことない。ぜひ後でじっくりと見させてくれ!」
『何されるかわかんないから怖いなぁ』
「イヤだって言っているからだめなの」
「え〜ちょっとだけだからさあ」
遠くに何か見える。石の壁だろうか?
「おぉ〜」
町の壁と同じくらいの高さはある。俺が元々いた研究所みたいにそこかしこに草やツタが生い茂っている。まぁこんなところに人が来るわけないし当たり前なんだけどね。
ちょうど入り口っぽい所があるのでそこから中に入る。中はトンネルのように奥まで一直線に繋がっているようだ。
トンネルを抜けると光が差し込む。さっきまで暗い所にいたからとても眩しい。
少しずつ目を開けるとそこは開けた空間だった。苔や草が生い茂り、ところどころ荒れ果てているものの左右には素人から見てもとても価値があるものだと分かるほど精巧に造られた石柱。そして一際目を引く中央にあるとても大きなドーム状の建造物。中央には奥行きがあり、そこには魔法陣によく似た形をした不可思議な紋様が書いてある。
どこか神秘さを感じる風景に圧倒させられていると、ネフェリアが話しかけてきた。
「いやーわたも初めて来るから驚いたよ。こんなに綺麗だったなんてね」
「これがゲートなの?」
「多分そうだね。じゃあ合図よろしく」
「りょーかい」
上空目掛けて火炎魔術をうつ。これがギルフォードに結界を張る作業をすることを伝える合図だ。
「じゃあ護衛頼んだよ」
ネフェリアはそういうとさっきまでのおちゃらけた感じと打って変わり一流の職人、そんな雰囲気へと変わった。
懐から出したアーティファクトを五つ並べ、一つずつ丁寧に魔力を注いではマナポーションを飲みと言う作業を繰り返していた。
大きな魔力を感知したのか魔物の気配が近づいてくる。
「すぐ片をつけるなの」
『後のために魔力は温存な』
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