第19話 一時撤退


「大丈夫? シロナちゃん」

「サリアさん!」

「ベータ隊の冒険者から聞いて、急いで駆けつけてきたの」

『助かったぁ〜』


 あっぶね、残り耐久力1だよ、1! まじ死ぬかと思った。


「ますたぁー!」

『ちょちょ、泣かないでくれよ。心配させてごめんって』

「ひどいなの! シロナを閉じ込めるなんて! マスターが死んじゃうかと思ったなの〜」

「どっどうしたのシロナちゃん!? いきなり泣き出して。ハッ、もしかしてどこが怪我してる? 待ってなさい、今救護班を呼んでくるから」

『ほら、サリアもいきなり泣き出したから心配してるぞ』

「うぅ、ぐすっ。私は大丈夫なの」

「そっそう? 分かったわ。じゃあ立てる? とりあえず逃げるわよ!」


 確かにこのまま戦うわけにはいかないだろうな。


「みんな撤退よ!」



 ***


 とりあえず、近くの森まで退避した。


「とりあえず、状況を整理しましましょう。シロナちゃん、何があったのか教えてくれる?」

「分かったなの」


 シロナは今までのことを話した。


「なるほど、A級が2体発生、さらに地中から出てきた、あの巨大な魔物……明らかに変だわ」


 どうやら、サリアの方でもA級魔物が二体ほど出たららしい。今回の活性化は明らかに今までのものとは違うとか。過去のデータと比べてみても、今回は明らかに規格外なんだと。


「しかもあの、巨大な魔物。多分、ガーディアンよ」

「なんだって!」

「おいおい……まじかよ」


 流石に驚いたのか周りの冒険者が騒めく。


 確かにガーディアンといえばダンジョンのいわゆるボス。しかも、ここら辺にあるダンジョンといえば偉大な牙の平原の中央にあるS級ダンジョンしかない。


 ダンジョンをクリアする基準としては、そのランクの冒険者が最低でも五人いないといけない。つまりSランク冒険者が5人以上いても倒せるかどうか分からないぐらいの強さなのだ。


「過去に観測されたあのS級ダンジョンのガーディアンの資料と当てはまる特徴がいくつかあるの」

「でもガーディアンって、ダンジョンの中にしかいないはずじゃなかったなの?」

「それは私もわからない。ガーディアンといえば、いわばダンジョンの要。そう易々と出てきちゃダメなのよ。過去にそう言った事例は確認されていないわ」

「あのガーディアンが向かっている方向は町の方なの! なんとかしないとなの」

「そうね私もそこについては同意見だわ。でも、あなたは休みなさい。そんなボロボロになるまで戦って……いえ、こういう事態を予測できなかったこちら側ミスだったわ。こんなになるまで戦わせてごめんなさい。それとうちの冒険者たちを助けてくれてありがとう」

「こっちこそありがとうなの。めちゃめちゃ助かったの!」

『そうだな、サリアに伝えてくれたあの冒険者と、サリアに感謝だ。俺にとって命の恩人だ。あとで何かお礼をしないとな』


「状況の確認は済んだわね。次にあのガーディアンをどうするかだけど……」

「倒すなの!」

「現場のところ討伐は現実的ではないわ。中央から高位の冒険者を派遣してもらうにしても時間がかかる」

『あの調子だと早くても3時間ほどで街に着いちゃうぞ。時間がない』

「今やれるのは注意を引いて街から遠ざけるぐらいかしら?」

「その間に助けを呼ぶなの!」

「じゃあそれで行きましょう」

「りょーかいなの!」

「私があのガーディアンを引きつけておくわ。疲れているところ申し訳ないのだけれど、町まで行って言伝を頼めるかしら?」

「誰に伝えたらいいなの?」

「そうね、アレキサンダーに頼めるかしら?」

「はいなの!」


 休憩したら耐久力は半分ぐらいまで回復した。いや〜さっきまであんなにバキバキに割れてぶっ壊れてたのにもう治りかけてる。よかった〜、アーティファクトで。


「じゃあ行ってくるなの」


「おい! 見ろよあれ」

「空を飛んでる!」

「前に聞いてたけど、まさか本当に空を飛べるなんて……」


 ふっふっふ驚いてるな。サリアは知ってるし、どっちにしろ、さっきの戦いでいろんな冒険者に見られてるから隠す必要はない。今後どのような支障があるのか分からないが、もうやっちゃったことだし、しゃあない。


「サリアもみんなも驚いてたなの」

『この世界で人が空を飛ぶってのはそれほどすごいってことだろ』

「私が初めて空を飛んだ人ってことなの?」

『そうかもな!』

「すごいなの〜」


 そんな感じで町までついた。


『あれがアルファ隊か』

「あそこにアレキサンダーさんがいるなの」

『降りるか』

「なんか騒いでるなの」

『多分空を飛んでいる俺たちに驚いてるんだろう』

「そろそろ、あの反応も飽きたなの」

『それはそうだな』


 地上に降りる。


「随分と派手な登場だったね」

「アレキサンダーさん! サリアさんから伝言なの」

「なるほど、聞かせてくれ」

「えっとね————」


 サリアに言われた通り、王都に応援を頼むように話した。


「なるほど、前線でそんなことが……分かった。今すぐ王都へ連絡する。君も来てくれ」


 アレキサンダーに連れられて、ギルドまで来た。


「どうやって王都まで伝えるなの?」

「連絡用のアーティファクトがあるんだ。これがそうだ」


 ギルドの奥の部屋にある机の上には立方体のアーティファクトがあった。


 アレキサンダーが魔力を流すと、空中に映像が映し出された。まるでプロジェクションマッピングみたいだ。


 映像の中には女の人がいた。


「王都へ緊急連絡の連絡だ」

「もしかしてS級ダンジョンの活性化の対策作戦で何か起こりましたか?」

「そうだ。ガーディアンが出現した」

「なんですって!? 待ってください。グランドマスターに繋げます」


 グランドマスター? なんかかっこいい名前だな。


「グランドマスターって誰なの?」

「すべてのギルドをまとめる、いわばギルドのトップだ」

『なるほど、確かに今は一大事だしな』


 画面が変わり出てきたのは、ガタイがいい強そうなおじさんだった。

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