第16話 汚物は消毒なの!


「おい! 空を見ろ」

「鳥だ!」

「魔物だ!」

「いや、人間だ!」


 なんかスーパーな男の人の映画に出てきそうなセリフが聞こえたんだが、おっかしいなぁ。

 

 ちゃんと人にバレないように飛んでいたんだが、見つかってしまったらしい。う〜んなるべく目立たないよう行動したかったんだが、どっちにしろこれから戦うし、いいか。


 遠くに土煙が見える。

『あれが魔物か?』

「たくさんいるの!」

『ここから見えるだけでも、ざっと500匹以上はいるな』

「町の方に向かってるなの」

『作戦では、俺たちベータ隊とギルマスのシータ隊で挟み撃ちするんだっけ』

「マスター! 一気に削るの」


 今回は出し惜しみはしない。最初っから全力で行く。


『とっておき3つ目』


 3つ目のとっておきは、連射力が高く広域殲滅にとても向いている。形状変化のレベルが上がったことにより使えるようになった。そうそれは、機関銃だ! 機関銃モードでは、地面に固定するから動けないんだけど、その代わりに、安定して連射かつ、ライフルほどではないが射程も長く、持続的に発射できるのだ!


 どうだ、すごいだろ! って俺は誰に解説してるんだ?


 現代兵器が中世みたいな世界で活躍する。いいじゃないか。うんうん、ロマンだ!


「マスターいくなの。ふぁいやー」


 シロナが引き金を引くと、ギュルルルルと音が鳴り、大量の水色の閃光が敵に向かっていく。敵がどんどん倒れていく様はとても爽快だ。ちなみに、音は鳴らさなくても出せるんだが、そこはロマンなのだ。そう、決してただの騒音マシンではない! 断じて!


「汚物は消毒なの! ヒャッハーなの」

『ちょ、それどこで覚えてきたんだ。そんな汚い言葉使っちゃいけません!』

「え〜〜」

『え〜〜じゃない。そんなこと言う子は、モヒカンにしちゃいます!』

「ひぇ〜〜」


 全くどこの世紀末から仕入れてきたのか……シロナの保護者としてしっかり教育せねば。


『300体ぐらいはやったんじゃないのか? そろそろ直接殴りに行くか』

「なんか、こっち向かってきてるなの」

『そうだな。おっと、そろそろ他の冒険者が追いついてきたみたいだ』


「おい、あれ見ろ!」

「大量の魔物の死体か?」

「誰がやったんだ?」

「おいあそこに誰かいるぞ! 子供だ!」

「一体何者なんだ?」

「うちの隊にいるAランクじゃないのか?」

「まさかあいつが!? いやそんなはずはないだろ」

「きっと、さっき空を飛んでいた人がAランク冒険者なんだ。きっとあの人がやったんだ。そうに違いない」

「そっそうだよな。あんな子供がAランクな訳がない。空を飛んでたのもきっとそのAランク冒険者だ」


 "五感強化"のおかげで離れていても声が聞こえる。どうやら、勘違いしてくれてるらしい、これは好都合だ。


「おい、嬢ちゃん。これは誰がやったんだ?」

「駆けつけたらこうなってたなの」

「そうか、ならいいんだ。それよりも、なんでこんなとこにいるんだ?」

「もちろん冒険者だからなの。私は他の冒険者より早く出発してたの」

「そうか、この歳で冒険者とは珍しいな。でも案内があるまでは勝手に動いたらダメだぞ」

「ごめんなさいなの」

「いや、いいんだ」 

 

「お前ら! まだ遠くにいるがどうやら魔物がこっちに進路を変えて向かってきてるらしい。しっかり迎え撃てよ」

「「「おう!」」」


「さっきの人リーダみたいだったの」

『そういえば、パルはどこにいるんだ? 見当たらないんだが』

「あんな奴、別にいなくてもいいの」

『まぁそうなんだけど、あれでも一応C級らしいぞ』

「あっいたの」

『今着いたみたいだな。めっちゃ疲れてる様子なんだが』

「本当にC級なの?」

『ステータスはめちゃくちゃ普通なんだが』


 なんかすごい特技があるとか? それとも戦うことで覚醒したりとか?


「おいおい、高速でこっちに何か来てるぞ」

「あの速度。少なくともC級だぞ」

「大丈夫だ、ここにいるのはD級以上の冒険者だけだ。なんとかなる」


 C級なんて俺たちにとっては余裕なんだけど、できれば目立ちたくないからここは任せてみるか。


「盾は前に出ろ。その後に前衛は一気に攻撃を叩き込め。後衛は魔術でアシストだ」

「「「おう!」」」


『意外と連携がうまく取れてるな』

「強そうなの」


 突進してきた、C級魔物を盾が受け止め怯んだすきに攻撃を一気に叩き込んで無傷で倒してしまった。しっかり作戦通りやっているのがこれまた凄い。


「次も来るぞ」


 次々に魔物が来るが、難なく連携し倒していく冒険者たち。


 とうとう魔物の群れの本隊がきた。


「なんか多くね」

「ざっと2000以上はいるじゃないか」

「これ本当に勝てるのか」

「だ、大丈夫だ。だってこっちにはAランク冒険者がいるんだから」

「さっきから姿が見えないんだが」

「確かに」

「もしかしてもうやられたとか?」

「それじゃあ、俺たち終わりじゃないか」


『みんなシロナがAランクだとは気づいていないな』

「みんなの士気が落ちてるの」

『しゃあねえ。これ以上隠し通すのは無理があるよな。やるかシロナ』

「りょーかい」


 シロナが魔物の本体へと駆け出す。


 冒険者が叫ぶ。

「おい、待て!」

「逃げろ!」

「誰か止めろ!」



『シロナ、敵の数が思ったより多い。どこにA級魔物がかくれてるかわからない。周囲をしっかり確認しながら行くぞ』

「安全第一でいくなの」


 

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