第15話 作戦決行!


 あれから、シロナはご褒美のトンカツを食べて,すぐに寝てしまった。よく頑張ったし、疲れているんだろう。


 そういえば、あの戦いでワンチャントラウマになっていた可能性だってあるんだよな。時々忘れそうになるがシロナはまだ子供なのだ。しっかりと俺がメンタルケアまでしてあげないといけないよな。


 なんか良さそうなスキルないかな。ディグド・レッド・サーペント(蛇)のおかげでコア数もたんまりだから、スキルレベルを上げられる。やっぱり治癒魔術か? じゃあとりあえず1レベルずつ上げていくか。


 "エクステント・ヒール" ふむふむこれは、治癒魔術レベル1で覚えた"セイクリット・ヒール"よりも効果は下がるが広範囲を一気に回復できるらしい、まぁ俺たちは基本1人だから意味ないな。もう一つレベルアップさせる。


 "デフィシット・ヒール" これはどうやら欠損した部位を治すことができるらしい。つまり足や手を失っても治るということか。確かに強いがこれじゃないんだよな。もう一回だけレベルアップさせよう。なんかソシャゲのガチャ引いてる時を思い出すぜ。とても悲しい思い出だ。お金が溶けていくあの感覚。うぅぅ。


 "マインド・ヒール" 精神へのダメージを回復する。うおっ、来たー!


 まるで推しキャラが出てきたかのような感覚。これだから課金はやめられないんだ。


 シロナが寝ているうちに試してみるか。ゆ〜っくりと念力でシロナに近づき、マインド・ヒールをかける。うん。問題なし!


 ***


 窓からでて、星を眺める。都会とは大違いでびっくりするほど星が輝いて見える。あ〜、暇だな。でもシロナを起こすわけにはいかないし。


 俺にとって1日はとても長い。この体は寝ることができないからだ。まぁでも、シロナが寝てても見張りとかできるから、便利っちゃあ便利なんだけどね。


 そういえばこの世界は、異世界なのだろうか。星があるっていうことは、宇宙があるってことだよな。もしかしたら、地球に戻れるかもしれない。同じ宇宙かは置いといて。でも、もし戻れたとしてもこんな姿で戻っても昔のように生活できないだろうな。てか、新生物発見!? 動くサイコロとしてメディアに取り上げられるかも。


 シロナとの旅が終わったらどうしようかな。特別故郷に帰りたいとは、今は思わない。こっちの方が楽しいし、シロナもいるからな。


 

 一体俺はなぜこの世界に転生したんだろう。どんな目的で誰がどうして。てかなんでアーティファクト?

まぁこの体で転生したおかげでシロナに会えたし、よかったけど。


 ***


 いつもより人が多いな。ギルドの中は冒険者で溢れかえっている。


 俺たちはダンジョンの活性化に対抗するための作戦。それを決行する時が来たのだ。


「それじゃあ、ベータ隊の方は出発します」

 

 俺たちはベータ隊だから、あの人について行けばいいんだな。


「緊張するなの」

『そうだな』


 俺たちは街を出て平原を迂回するように進んだ。俺たちの役目は偉大な牙の平原にあるダンジョンの東側から西側にいるシータ隊と魔物挟み撃ちにして倒すことだ。


「そろそろ、着くみたいなの」

『ここらで一回休憩か」


 ここで、魔物を待ち構える。何か動きがあるまでは待機をしないといけない。


 休んでいる俺たちに、成金みたいな装備をした青年が近づいてきた。


「そこのお嬢さん」

「ん?」

「キミさ」

「何かようなの?」

「君はまだ子供じゃないか、全くもうこんな子供を送り出すだなんてギルドはどうにかしているな。ここは危ない、辞めるなら今だよ。」


 いやお前も十分ガキだろ。


「大丈夫なの」

「心配しなくても大丈夫さ。なんたってこの僕がいるからね。街は必ず守るよ」


 あぁ、どうやらシロナを低ランク冒険者と勘違いしているらしい。なんか、ギザっぽくてうざいな。


「ところでお嬢さん、この戦いが終わったら僕とお茶でもどうかな?」


 こっこいつ、うちの子をナンパしやがった。お前みたいな奴に、シロナを渡すと思ってんのか! シロナをもらいたいなら、最低でもシロナより強くて、財力があって、顔も良くて、頭も良くて、人格もいい人じゃないとだめだ。話はそこからだ出直してこいや。


「知らない人の言うことは聞いちゃダメってマスターが言ってたの」

「おっと、すまない。僕の名前は、パル・ラリックという。しっかり覚えておいてくれたまえ。君の名前は?」


 名字があるということは、こいつ貴族か。だからこんなにナルシスト感がすごいのか。


「知らない人に名前を教えちゃダメって、マスターが言ってた」


 いいぞシロナ、どんどん言ってやれ。


「ふふ、恥ずかしがらなくても大丈夫さ」


 うっざ。何こいつ、めっちゃイライラするんだが。


「お断りするなの。じゃ」

「ちょっと待ちなよ」


 パルがシロナの肩を掴もうとするがさらりと躱される。か〜ら〜の、全力ダッシュ。


 ***


「ここまで来れば大丈夫なの」

『あのガキ、シロナに触れようとしやがった。次あったら切り刻んで、火炎魔術で燃やして、畑に撒いてやる』

「あれは無理なの。なんか生理的に受け付けれないの」


 あいつ振られてやんの、ザマァみねぇぜ。


「魔物が出現しました、冒険者は作戦通り、直ちに出動してください」


 呼びかけがかかる。とうとう動き始めたようだ。


「マスター」

『あぁ。行くぞ』

「今の私たちなら余裕なの」

『あんまりフラグを立てるんじゃない』

「フラグ?」


 シロナは俺に乗り、俺たちは魔物に向けて飛び立った

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