第14話 心を鬼にして

 せっかく、スキルレベルを上げたので試してみたいというシロナさんの要望で、森にまた来ていた。


「どこだなの〜。出てこ〜いなの」

『ちょっ、そんな大声出してまで呼ぶことじゃないだろ。普通にゴブリンとかオークでいいじゃないか』

「ダメなの。あいつら弱すぎるもん。これじゃあ、戦いの練習にもならないなの」

『いや、そうだけどさ。俺がいれば、わざわざ無理する必要もないじゃん?』

「そういうことじゃないなの。確かにマスターが強くなれば、私も強くなるかもしれない。けど、それじゃあ技術も

精神力も身につかないの。このまんまだと私が足を引っ張ることになるの。マスターばっかり無理させたくないなの。それに私が強くなれば、マスターを助けれる。マスターが強くなれば私を助けてくれるなの。そうすれば私たちは最強! なの」


 そっそうだよな。それにいざとなれば全力で逃げればいいし。


『すまんシロナ、俺が心配性だった』

「大丈夫なの! マスターのそういう優しいところシロナは好きなの!」


 グハッ。最高の笑顔で不意打ちとは卑怯な……


『よっしゃやったるでぇ〜〜』


『じゃあ、早速Aランクとバトルか?』

「了解なの」

『広範囲解析』


 ふむふむあっちにCランクであっちにBランクか、さすがダンジョン区域なだけはあるな。全体的に魔物のランクが高い。おっと、Aランク発見!


『500メートル斜め後ろの方向にいるっぽいぞ』

「レッツゴーなの」

『おう』


 爆速でAランクの魔物に追いつく。見た目は蛇だな。でかいけど。


名称:————

種族:ディグド・レッド・サーペント

HP:2555 MP:3578 パワー:4565 体力:687 敏捷:423 知力:654 魔力:4555 

スキル:毒の牙 毒魔術 地中移動 大地魔術 


『御用だ御用だ!』

「マスターは回復だけでよろしく」

『がんばれよ』


 俺は治癒魔術に専念する。それが今シロナにできることだ。


「"ホークアイ"」


 シロナが持ち前のフットワークを生かし、空中跳躍で、蛇の頭まで間合いを詰める。ここで、ヘビから尻尾の攻撃。だが、ホークアイで目を強化しているシロナはそれを避ける。そして、相手の目を狙い突きを放つ。


「ライオットスピアー」


 これは決まったかと思ったのだが、下から岩石のが飛び出てくる。大地魔術だろうか。


「ぐふっ」


 シロナがとっさに"結界構築"をしていたおかげで重症は免れたが、かなりのダメージがきた。レベルアップした耐性スキルがあってもこれだけとは……

 

  前回は近くに来る前に仕留められたのが良かったのかもしれない。Aランクはやはり、段違いの強さだ。


『大丈夫かシロナ! "セイクリット・ヒール"』

「ゲホッゲホッ。まだやれるの」


 辞めさせたい気持ちをグッと堪える。心を鬼にしろ。


『頑張れ!』

「やぁぁぁぁ!」


 どんどんスピードを上げ間合いを積める。


「"アブソリュート・ゼロ"」


 正面から氷解魔法を発動させた。絶対零度の息吹がヘビを襲う。

そうか! 蛇は変温動物だから、寒さに弱いのか。


 動きが遅くなり、隙が生まれる。だが、動けないと悟った蛇はそのまま毒霧を出す。頭がいいなこいつ。

シロナは避けずに毒霧を無視して中を突っ切る。


 そして、背後に回り込み跳躍。頭に俺(剣)をさして、重力に従って切り裂きながら落ちていく。


「おりゃぁぁぁぁ」


 その巨大な体が地面へと倒れ伏す。最後まで立っていたのはシロナだった。


「やったぁなの。ううっ」

『よくやったな。待ってろ、"ポイズン・ブレイク"』

「ふぇ。せんきゅーなの、マスター」

『マジですごかった! あそこで突っ切るとは、あの蛇でも予想できてなかったと思うぞ。しかも、相手が変温動物だとわかっていて、氷魔法を当てるとは……さすがだ』

「変温動物? なにそれなの」


 あっ、たまたま出したのね。まぁ運も実力のうちって言うし、根性も見せていたからな。いや実際最初のあの打撃で骨が数本イかれてたし、あの毒霧も高レベルだから、めっちゃ痛いぜ。俺が生身だったら無理だな。絶対に。


 とても9歳とは思えない根性だ。やっぱりうちの子は天才なんじゃないのだろうか。


「マスター、マスター、シロナレベルアップしてる?」

『ちょいまち。解析』


名称:シロナ

年齢:9歳

種族:白狐族

サブ職業:アーティファクトマスター

レベル:56


HP:610 MP:777 腕力:409 体力:567 敏捷:456 知力:316 魔力:411


称号:アーティファクト使い、A級冒険者


スキル:聞き耳Lv.4 気配察知Lv.2 読み書きLv.5 同調Lv.2


共有スキル:念力Lv.Max 氷塊魔術Lv.9 火炎魔術Lv.5 激流魔術Lv.2 治癒魔術Lv.1 清浄魔術Lv.2 眷属召喚Lv.Max 剣聖術Lv.8 体術Lv.Max 格闘術Lv.2 回避率上昇Lv.Max 脚力上昇Lv.Max 体強化Lv.1 分割思考Lv.Max ホークアイLv.6 危機察知Lv.7 瞬間再生Lv.Max 物理攻撃態勢Lv.7 気配操作Lv.4 結界構築Lv.6 空中跳躍Lv.Max 状態異常耐性Lv.3 精神異常耐性Lv.1 全属性耐性Lv.1 五感強化Lv.1


装備品:マスター


『やばいぞ。レベルが44も上がってるぞ。ステータスもすごいことになってる!』

「確かに体が軽いなの!」

『きっと今までは、俺主体で倒してたから経験値が入りにくかったんだろう。今回は、シロナが頑張ったからな!』

「『わーい、わーい』」


『今日は祝いのトンカツだ!』

「いっぱい食べるなの!」




 


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