第12話 シロナのファッションショー

 in 宿


 それにしても、あの温厚で滅多に怒らないシロナがマジギレするとは……

 

 新たな一面を垣間見た気がする。いや俺もめっちゃ怒ってたけどさ、シロナのほうがやばかったな。普段怒らない人が怒ると怖いっていうのはマジだったんだな。俺もシロナさんが怒らせないように気をつけないと。


『し、シロナさん? さっきはすご〜くお怒りでしたけど、どうしたザマス?』

「マスターは私にことを可愛いって褒めてくれるなの。でも一部の人は獣人を差別するような奴らがいるの」

『なんと、それは知らなかったな』


 許せませんな。皆にケモ耳の良さを伝えてあげなければ。


「マスターの世界ではどうだったなの?」

『俺の故郷では、ケモミミは神聖視されていたんだよ。ていうか、獣人になりきってカフェとかやってる人もいたな。アキバ戦士たちの中にシロナを放り込んだら騒ぎになるくらいには、人気だったんだぜ』


 ※決して間違ったことは言っていない。


「いいなぁ。私もこの世界をマスターの故郷みたいに差別とかがない世界にしたいなの」

『そうだな』

「だから私めっちゃ強くなって、獣人の良さをみんなに伝えたいなの。普通の人間とおんなじだって」

『それはいいことだ。確かにシロナの名前が有名になったら、獣人への見方が変わるかもな』

「頑張ってS級ダンジョンをクリアするの!」

『ちなみに、獣人と人間族の他にも種族はいるのか?』

「う〜んとねシロナが知っている中だと、鬼人オーガ竜人リザードマン魚人マーマーンがいるの」

『お〜。定番の奴らが勢揃いじゃないか! いつか会ってみたいな』

「鬼人とかは時々街で見かけることもあるなの」

『楽しみだな。どんな、感じなんだろ?』


 この感じだと精霊さんとかエ・ル・フさんとか、いそうだな。ていうかいたらいいなぁ。ぜひ御尊顔を拝ませてほしい。エルフ、美人おねいさん。ええじゃないか〜。


 ハッ、危なかった! 俺はシロナさん一択だと決めてたじゃないか!


 獣人バンザイ! ケモミミ万歳!


「マスター 暇なの」

『確かに今できることはあらかた終わったしなぁ』

「じゃあこの街を観光したいなの」

『そういえば、ここに来てからまともな観光とかしてなかったな』

「レッツゴーなの!」


 ***


 俺たちは、大通りに来た。たくさんの店が立ち並び、大勢の人が行き交っている。


「お店がいっぱいなの」

『あれ、服屋じゃないか? そういえばシロナの服ってあった時のまんまじゃないか?』

「確かになの」


 せっかくこんなにかわいいのに、服が初期装備じゃあ勿体無いよな。


『じゃあ入ろうぜ』

「うにゅ」

 

 カランカラン


「いらっしゃ〜い」

「こんにちわなの」

「あら、かわいいお嬢さんねぇ」

「私服を何着か欲しいの」

「せっかくだから、かわいい服がいいわよねぇ」


 おばあさんが出迎えてくれた。


「まかせてちょうだい! 私がバッチリなの選んじゃうわよ」

「頼もしいなの」

「じゃあ、そこに荷物を置いてねぇ」

「マスター待っててね」

『おう』


「これなんかどうかしらぁ」

「マスター、どう? なの」

『これは王道のスカート! フリル多めでとても可愛らしい。おばあさんやるじゃないか』


「次はこれよぉ!」

「うわぁー」

 

 俺が見えなかっただと……超高速で試着室に連れ込んだのか?


 なんて馬鹿なことを言ってると、もう着替えたのかカーテンが開く。


「どうかしらぁ」

『ベージュの服とロングスカートを中心としたコーデ、カジュアルな感じがとても、イイ!』


「お次はこちらよぉ」

「まっt……」

 

 また連れ込まれてしまった。次はどんな感じになるのだろうか? 正直全部似合ってるので全部買っていきたいんだが。


「どうかしらぁ?」

『こっコレは、肩が空いた少し大人びた衣装! そそるぜこれは!』


「マスター、どれがいいと思うなの?」

『全部買ってこい』

「了解なの」


 達成感! ここ最近で一番いい買い物をした気がする。


「全部くださいなの」

「毎度あがり。ありがとうねぇ」


「マスター次どうする。う〜ん防具かな。シロナは一発でも喰らったら重症になるし」

「探すの!」


 ***


 ここかぁ。外観は普通の木造の一軒家だな。


「入るの!」


 ガチャ 


 うぉぉ。たくさんの剣や防具、杖がたくさん並んでいる。


『なんだあれ? めっちゃでかい剣があるぞ。あっちにはかっこいい防具が!。ロマンだよな。うんうん』


「すみませんなの」

「お嬢ちゃんここは武具やだぞ。玩具屋じゃないんだ」

「わかってるなの。防具を探しに来たの」

「遊ぶためのものじゃないんだ、帰ってくれ」

 

『えっ?売ってくれないのか』

「そうしよマスター」

『そうだ。ギルドカードを見せれば』

「さすがマスターなの」


「これ見てなの」

「あぁ? なんだこれ、これはギルドカードか!? しかもこの色A級! この街にはギルマス以外A級はいないはずだが……お嬢ちゃんもしかして、最近この街に来た口か?」

「そうなの。大体1ヶ月ぐらいなの」

「こりゃあ驚いた。こんな子供なのにA級なんて、世の中は広いな」

「防具が買いたいの」

「おっとすまねぇ。俺はウルドっていう名前だ。お嬢ちゃんは?」

「シロナなの。よろしくなの!」

「おう! A級冒険者に合うような防具この店にあるかわからんが、適当に見繕ってみるよ。ちょっとそこで待ってな」


 ***


「お嬢ちゃんには鉄の装備とかは重すぎて戦いにくいだろ。だから、防具じゃないがこれなんてどうだ」

「これは何なの」

「アーティファクトでな、これをつけると常に周りに防御結界がはられるんんだ。どうだすごいだろ! これなら軽くて持ち運びやすいし、これは特注品だからな。魔力消費量が少ないんだ」

「すごい便利なの」

「だろっ。気に入ってくれてよかったぜ。どうする買っていくか?」

「マスターどうする?」

『確かに、シロナは俊敏さを生かした戦い方をするから、あまり重いものは向かない。しかもちゃんと防御力があるという点も素晴らしい。だが! なんか俺以外のアーティファクトを使うのは気持ち的に……いやここは、シロナの安全を考慮すべきか。う〜む。わかった買いだ』


「買うなの!」

「毎度あり! これ結構高いんだが出せるか?」

「楽勝なの。ほい」

「これがAランク冒険者か」


 ということで俺たちは店を出た。ウルドが手を振って見送ってくれている。


 う〜ん。やっぱり、何処の馬の骨かもわからないやつアーティファクトにしろなを任せるのは気が引けるよな。一応解析して性能を見てやるか。


 "収納"して"解析"


名称:機械兵の防御結界

耐久力:600

スキル 結界構築Lv.4


 スキル"再現"が発動しました

 スキル:結界構築を取得しました


『あ』

「ねぇマスター。なんかさっき買ったアーティファクトがいきなりマスターに吸収されていったなの」

『そういえば、アーティファクトって魔物のコアでできてるんだった』

「マスター。ウルドにあった時なんて言えばいいなの」

『黙っておこう』





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