第11話 マジでプッチンきちゃった

 トントントン

「あわわわわ、マスター」

『大丈夫だ。だって、何も悪いことしてないと思うし……たぶん』


「お連れしました」

「どうぞ」


 ガチャ


「こ、こんにちわなの」

「こんにちわ、シロナちゃん」

「ホンジツハドウイッタゴヨウケンデ」

「ちょっと、なんでそんなにカタコトなのよ?」

「特に理由はないなの……」

「それで本題なのだけれど。あのA級魔物はどこで見つけたのかしら」

「ひっごめんなさいなの」

「ちょちょちょ、なんで謝るのよ」

「シロナまたなんかやっちゃったなの」

「別に怒ってるわけじゃないのよ。ただ、あの魔物の出どころを知りたいだけなのよ」

「怒ってないの?」


 なんかこのやりとり前もしたような……デジャブを感じる。


「えっとね。森の方で薬草採取していてね、空飛んで帰ってたの。そしたら、鳥さんが襲ってきたから打ってやったの」

「空を飛ぶ? ん? ままま、まぁいいわそれは後で聞くとして、森ってもしかして偉大なツノの草原の方かしら?」

「そうなの」

「S級ダンジョンの方かしら……もうそこまで活性化しているのね。そろそろ、招集しないといけないわね」

「活性化?」

「ダンジョンから魔物が出るのは知ってるわね。それで、数年に一度ダンジョンがため込んだ魔物を一気に解放してくるの。それがダンジョンの活性化っていうわけ。高位の魔物が出てくるのが予兆なの。だから、それに対抗するために冒険者を招集しないといけないのよ」

「なるほどなの〜」

「情報提供感謝するわ。討伐料もしっかり出しておくわね。あと、ランクアップよ」

「えっ、私さっきランクアップしたばっかりなの」

「いやいや。普通A級魔物を倒した冒険者をD級なんかにしておくわけないじゃない。ていうか、あなた本当に何者なの? 最年少記録どころじゃないわよ!」

「黙秘権を行使するの」

「はぁ、わかったわよ。ランクアップさせるのにも、ギルドにメリットがあるしね」

「やったーランクアップなの!」


 もしかして、俺たちって結構チートなのでは……


「それで、あなたもA級冒険者として、招集するわ」

「シロナにかかればチョチョイのちょいなの」

「シロナちゃんの戦ってるところは見たことないから楽しみだわ」

「ギルマスも戦うなの?」

「ええ、だって私これでもAランク冒険者よ。あと、サリアでいいわ」

「わかったなの。サリアさん」

「う〜。やっぱりあなた、かわいいわね。もっと仲良くなりたいわ! 今度お茶でもどう?」


 ッフ。シロナの可愛さがわかるなんてさすがだな。Aランク冒険者も伊達じゃないぜ。※Aランク冒険者は関係ありません。


「わかったなの」

『ギルマスといい関係を築いていて損はないしな』

「じゃあ今度の招集の後っていうことで。楽しみにしておくわ」

「私も楽しみなの!」



 そんな感じで何事もなく? サリアの部屋を後にした俺たちは、いつもの受付嬢にランクアップの手続きと討伐金をもらいギルドを後にしようとした……のだが。


 うん。なんていうか、お手本のような絡まれ方をされました。

「おい、待てよ」

「何か用なの?」

「俺たちに生意気な口ききやがって」

「そうだぞ」


 くぅ〜。いいねこの感じ。すごいモブ臭がする。


『なんかこの三人衆、見たことあるような?』

「誰だったけ? なの」


「あなたたちは誰なの?」

「ア゛ァ。お前俺たちのことお忘れてやがったのか」

「試験であっただろうがよ」

「記憶力足りないんじゃないのか? この獣風情が」

 ブチ。はい今プッツーンときましたよ。こいつらマジ終わってるわ〜。

 

 ケモ耳の良さを分かっていない馬鹿どもがよぉ。いいか、ケモミミこそが至高なんだよ! この耳! そして、尻尾。いいじゃないか。ケモミミはな世界を救うんだよ。それに見ろこの、美少女フェイスを、艶のある白い髪を、そして白い肌、宝石のようなブルーアイ!


「ちょっとマスター。プルプル震えてどうしたなの?」

『ちょっとこいつら一回教育してやらないといけないみたいだ』

「マスター。私気にしてないなの。抑えて抑えてなの」


「おい。何黙ってるんだよぉ」

「もしかしてビビちゃったのか」

「どうせ試験のこともズルしたんだろ」

「していないの。しっかりルールに則ってやったなの」

「お前みたいなガキがBランク冒険者を倒せるわけないだろうがよ」

「これだから獣人は、馬鹿ばっかりなんだよ」


 ブチッ


 俺は聞こえた。確実に堪忍袋の尾が切れた音が……


「そこをどけなの」

 

 笑顔のシロナだったが、いつもとは雰囲気が違う。


「ッチ。俺たちに喧嘩売ってんのか」

「いいぜ。やってやるよ」

「泣き叫ぶ顔が楽しみだぜ」


「雑魚にかまってる時間はないの。早くどけなの」

「やっちまおうぜ」

 

 男たちが一斉に飛びかかってくる。


「マスター」

『あぁ』


 形状変化で剣の姿になる俺。次の瞬間、男たちの腕は無くなっていた。


「あれ、腕がない」


 そう、速すぎて気づいていないのだ。そして痛みは後から襲ってくる。


「いてぇいてぇよ」

「かあちゃーん」

「うう」


「まだやるなの? 次は足を落とすなの」

「ひぃ。すみませんすみませんでした」

「おいテメェ。一体何をした!」

「そうだぞ。おお、俺たちにこんなことしてタダで済むと思ってんのか!」


 この二人、バカだなぁ。しかも、股の間が濡れてるから説得力が皆無だし。


「おっお前ら、馬鹿野郎、すぐ謝——」


 ドサ


「ひぅぃ あ、足が。俺の足がぁ」

「痛い痛い痛いよぉ」


「行ってもいいなの?」


「「「すみませんでした! どうか命だけは」」」


「じゃあ行くなの」

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