第8話 これが至高のトンカツである
宿から出た俺たちはさっそく、昼飯の材料を買いに市場にきた。
「人がいっぱいなの~」
『お祭りみたいだな』
左右に出店が立ち並び、その間を人や獣人など様々な種族がぞろぞろと行き帰りしている。
前世の夏祭りを思い出すな。
「なんかいいにおいがするの」
『おっあれじゃないか』
「焼き鳥!」
『今日はシロナが冒険者になった記念日だからな。好きに買っていいぞ』
「やったぁ!」
ちなみに、金銭管理は俺がしている。保護者でもあり、年長者(精神年齢が)でもある俺の義務だからな。
「おじちゃん、これ2つくださいなの」
「はいよ、30Gだ」
「はいなの」
「はいどうぞ。熱いから気をつけろよ」
「ありがとうなの」
『うまいか?』
「パリッと焼けた鶏皮に照り焼きのたれが絡まっておいしいの。でも、マスターのごはんほどではないけど」
「うれしいこと言ってくれるじゃないか! よし、今日は俺が故郷の飯で一番うまいと思っているものを作ってやるぜ」
「マスターの故郷のごはん!? 楽しみなの」
「それじゃあ、さっそく材料集めからだ」
「了解なの」
『えいえいおー』
「えいえいおー」
***
ふぅ。やっと集まったぜ。
いや~前世と同じものがなかったから、代用品で何とかするしかないか。
「マスター。そういえばどこで作るの?」
『あっ。確かに考えてなかったな』
「宿のキッチンを貸してもらうのはどう?」
『ナイスアイデアだ。シロナ』
「えへへ。それほどでもなの」
なんて会話してたら宿についた。
宿の人に聞いたら、快く貸してくれた。
「私も手伝うの!」
『じゃあ頼むぞ』
シロナも俺のスキル共有でめちゃうまい飯を作れるんだが、今回作るのは俺の故郷の飯なのでシロナはわからない。だから手伝いをやってもらうのだ。
「え~マスターさん。今回は何を作るのですか?」
『ごほん。今回はですね"トンカツ"を作っていきたいと思います』
「とんかつとは、どのような料理なのでしょうか?」
『それは作ってからのお楽しみです。それではまず、オークの肉の下ごしらえをしていきたいと思います。オーク肉にショウガ(モドキ)を使いにおいを消します』
「できたのがこちらになります」
『それでは、お肉の筋を切りましょう。そうすることで肉の縮みを防ぎきれいな形に仕上がります』
「できたのがこちらになります」
『塩コショウを両面にいしっかり振り、薄力粉をしっかりまぶしましょう。そして、なんかの生物の卵を溶いたものにくぐらせ、自家製パン粉を付けます。しっかりまんべんなく衣付けをしてください』
「できたものがこちらになります」
『あとは、しっかりきつね色になるまであげましょう』
「白色ですか?」
『いいえ。白狐ではなく、普通の狐です。そろそろですね。油をしっかり切ることでサクッと上げることができます』
「それでは、また来週」
「美味しそうなの~」
『まだ熱いからダメだぞ』
うん。我ながら渾身の出来だ。
シロナがめっちゃよだれ垂らしているが、俺はその間にほかの品を作る。
***
『できたぞ~』
「やっとなの!」
『ハンバーグに、とんかつ、からあげに生姜焼き』
ってあれ? なんか肉ばっかだな。これではシロナの栄養バランスが偏ってしまう。それだけはさけなければ……
『やっぱまだ食べちゃダメだ』
「え~~~~~」
『5分だけ待っててくれ』
「うにゅ」
***
『サラダできたぞ~』
「ほんとにもう食べていいなの?」
『いいぞ』
「やったぁ。ゴクリ。これがとんかつ!」
サクッ、ジュ~。もぐもぐ。
「この食感そして嚙み応え! ソースとの相性も抜群! おいしさの宝石箱や~なの。これこそが至高のとんかつなの。」
何でその言葉を知ってるんだ?
「こんなにおいしいもの食べたことないなの~。シロナ感動なの。ありがとマスタ~」
『どういたしましてだ』
シロナの満面の笑み。これが見れただけでも作った甲斐がある。
こんなに小さいのに修行やらなんやらをしても、弱音一つすら吐かない。
俺だったら無理だね。やっぱりうちの子は天才だぜ。まぁ、でもやっぱり年に不釣り合いなことやってると、疲れはたまるものだ。
俺が戦闘でもサポートをして、うまい飯を作って、そんな感じで俺にできることを最大限にやっていこうと思う。
「マスター」
『マスターだよ』
「マスターとならS級ダンジョンでも行けそうな気がするの」
『あったりまえだろ。俺はシロナのマスターだからな』
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