第3話 ケモミミ少女


『ケモミミだとっ』


 そう、少女の頭には狐の耳が生えていたのだ。願ってもみないチャンス、これを逃したらまたいつ人と会えるかわからない。


 やはり存在したのかケモミミ。これがわかっただけで今日は大収穫だな。ラノベを嘘つきじゃなかったんだ!


 っとこんなことを考えているうちにも少女が危ない。早く助けないと。


 俺はさっそく、形状変化を発動した。

『今回は変えてみるか』


 もしかして、形状変化のレベルが上がっているから他の形にもなれるんじゃないのか?


 今までは槍とかの簡単な形にしかなれなかったのだが。試しにリボルバーを想像しながら、形状変化を発動してみる。


 『俺かっけぇー』

 

決して自画自賛しているわけじゃないよ。事実を言ってるだけだよ。


『撃ってみるか』


 俺は銃口を狼的なやつの胴体に向け念力で自分の引き金を引いた。


 すると水色の光が高速で狼の胴体に飛んで行った。そして明らかにオーバーキルなぐらいに狼の胴体が吹き飛んだ。

『ヤッベやりすぎた』


 そして倦怠感に俺の体が覆われた。

『魔力切れだぁ』


 あ〜れ〜

 

 俺は真っ逆さまに落ちていった。

 

 ふぅ、狼がクッションになってくれてよかった。

 

 おかしいなもうちょっと魔力あった気がするんだが、思ったよりリボルバーモードは魔力を使うらしい。たぶん弾の代わりに魔力を圧縮して打っているんだろう。


 てかやべぇ、こんな見渡しがいい場所で動けなかったら何されるかわからん。

そうだ、少女に拾ってもらえば。とりま"念話"を発動してみる。


『あっあー。マイクテストマイクテスト』

「ふへっ」

『聞こえているみたいだな』

「どどどどこですかなの~」

『ここだ。狼の近く』

「ももしかしてこのアーティファクトがしゃべってるの~」

『とりあえずここは危ない。安全なところまで逃げるぞ』

『あと、俺は動けないから拾ってくれ』

「わっわかったの~」


 っとその前に


『"収納"』

『狼さんが消えたのー!?』

『さらに"解析"』


名称:――――

種族:プレイン・ウルフ

HP:50 MP:22 腕力:23 体力:33 敏捷:46 知力:12 魔力:28 器用:9

スキル:俊足Lv.2 爪術Lv.3 遠吠え


 スキル"再現"が発動しました。


 スキル俊足"Lv.2"を獲得しました。


 よし、スキルが増えたぞ。それじゃ今度こそ戻るか。


***


 とりあえず、俺たちは研究所まで戻ってきた。


 しばらく時間がたったおかげで魔力は回復した。


 ひと段落したところで少女が話しかけてくる。

 

「あなたが助けてくれたの~?」

『まぁな。それよりもなんで追われていたんだ?』

「それは――――」


 ふむどうやら、彼女は孤児院出身で街を一人で探検していた時に獣人の売買を行う闇商人に捕まってしまったのだ。そして、いろんな地方を回り王都を目指しながら移動していたところ闇商人が時間短縮のため、さっきの”偉大な牙の平原"を通ったらしい。


 神聖なるケモミミに悪いことをする奴は許せない。


 まぁそれが運の尽きだったようだ、先ほどのデカ狼に襲われて闇商人や獣人たちは全滅。

この子も隙をついて逃げたはいいものを追いつかれそうになったところで、俺が見つけて

今に至るということらしい。


 ちなみにここはダンジョン区域というものに設定されていて、とても危険な魔物が多いから

本当は商人だけで通っちゃいけないらしい。まったく急がば回れというのはこのことだ。


 魔物というのは、体内にコアを含む生物の総称らしい。


「あっあのどうしてアーティファクトがしゃべってるの~?」

『それは俺も知りたいんだよ、気づいたらこの姿になってて』

「そうなの~」

『そうなのだ~』

「マネしないでなの~」

『ごめんごめん。それでこれからどうすんだ?』

「う~ん強くなりたいの~」

『孤児院には戻らないのか?』

「あそこには戻りたくないの~」


 やっぱり、1人だと寂しかったのだ。誰かと会話するのが久しぶりでちょっとはしゃいでしまう。


 そういえば新しい人生いや、アーティファクト生か、どうせならだれかに使ってもらいたい。

男はダメだ。ぜぇったいに!! 使ってもらえるならだれでもいいなんていう尻軽じゃないんだからな。

尻がないのだが……


『そうだ! 俺はとりあえずこの世界を見て回るつもりたけど、ついてくるか?』

「いいの?」

『あぁ。そういえば、名前は?』

「シロナっていうの」

『いい名前だな』

 白い肌と髪の毛それに狐耳、氷のような透き通った目。名前ととてもあってるな。

しかもよくよく見てみれば、べっぴんさんでねぇかぁ!


「ありがとぉ」

『不意打ちだと。グハッ』

「わ、大丈夫なの?」


 狐耳少女の破壊力はえげつないのだ。


「アーティファクトさんの名前は?」

『俺か。そういえば名称が不明になってたな。特にないな』

「じゃあ、私が考えてあげるの~」

『いいのか?』


 どうせならかっこいい名前がいいな。


「う~ん」


 ワクワク


「えーっと」


 ドキドキ


「マスター」


『まっマスター?』


 思ってたのと違うのだが。ってか、なぜにマスター?



 名称が【マスター】に設定されました。


 名称【シロナ】が装備者になりました。



名称:マスター


装備者:シロナ


種族:スピリット・アーティファクト


攻撃力:145(リボルバー状態 +155)


魔力:650


耐久力:390


称号:オーク・スレイヤー 一級建築士


スキル:念力Lv.6 形状変化Lv.3  収納 解析Lv.4 再現 自動修復 自己進化〈コア数:42〉 装備者ステータス上昇(小) 装備者自動回復(小) 装備者スキル共有 念話 アカシックレコード干渉権限Lv.3 聖棒術Lv.1 建築Lv.Max 採集Lv.7 解体Lv.8 料理Lv.7 火魔法Lv.2 剣術Lv.6 弓術Lv,5 ホークアイLv.2 夜目Lv.2 魔力自動回復(小)


俊足Lv.2:一定時間移動速度を上げることができる。


 えっマジっすか? 確定?


「だめ?」


 くぅ~。美少女の上目づかい。


『いやいやいや全然だめじゃないよ。すごくいい名前だなぁ』

「えへへ」

『俺の名前は今日からマスターだ』


 うんうんシロナも喜んでるみたいだし、まぁいいか。




『そういえばどうして強くなりたいんだ?』

「えーとね、S級ダンジョンをクリアするためなの」

『どういうことだ?』

「それはね一一一一」

 

 ふむふむ簡単にまとめると、この大陸には、東西南北に四つのS級ダンジョンがあって、

そのほかにもいろんなところにダンジョンが湧き出るらしい。ダンジョンが勝手にできる理由はわからないが、

東西南北全てのS級ダンジョンが攻略されると発生は止まるらしい。ちなみにダンジョンとは大昔に滅んだ超文明の遺産で、ダンジョンの周辺からは魔物が生まれる。でどうやら、ここ数年魔物の出現率が急激に上がり、思った以上にやばいらしい。

 

 シロナの両親は冒険者をやっていて、そのダンジョンの発生を食い止めるためS級ダンジョンを攻略しようと旅に出たが、そのまま音信不通で行方不明状態らしい。それがシロナが3歳だった頃の話。


「お父さんとお母さんが命をかけてやろうとしていたことを今度は私がやるなの。それでみんなを助けるなの!」

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