愛の戦士達
火箭。古より敵の位置を指す、あるいは射線を誘導するための曳光矢玉。
ザイオンの兵士は、広大な地上から打ち上げられる数多の砲弾が自分の視界を埋め尽くすのを目前にして叫ぶ。
「こんなッ!・・・降りられるのかよぉおお!」
のべつ幕なしに迫りくる砲弾を目を血走らせながら躱し続ける兵士の耳に、場違いに明るく朗らかな声が届いた。
『気にするな、ほとんどは重力理論の無い時代遅れの兵器だ。ムリに回避せずオートを信頼しろ』
兵士の機の前方へ、赤い機体のゾカがブースターを全開にして吸い込まれるように密集する砲弾の輝きへとダイヴしてゆく。
「少佐ぁ!」
『ん?スリンガーか、ムリはするなよ。ついてこい』
「了解しました」
二機で編隊し、地表へと向かう赤いゾカの中でギルベルトは不敵に笑う。
「地上の部隊・・・進発しているハズの友軍の姿がみえんな。どうしたのだ?」
パロマめ、使えぬやつだ・・・そう呟くと、上位者からの通信を告げるブザーと共に映像が視界へ割り込んだ。
『誰が使えないって?・・・ニャアよ』
「ふ、来たのか。お前にしてはいいタイミングじゃないか」
通信窓が視界を占有する前に、たしか眼下にて航空爆撃機の編隊が僅かに見えていたが・・・アレか。
回避運動の邪魔だが。
画像の中では若い男が髪の毛を弄って遊んでいる。
『時にニャアよ、お前の妹だが・・・ユニオンの最新鋭空母へ乗艦してるそうじゃないか』
前が見えぬ・・・被弾のカウントが赤く明滅しながら爆発的に増加してゆく。
「アリ―のことか?・・・今はそれどころではないのだが」
『フ。そんなに警戒するな、わたしも許嫁がいる身だ。取って食おうと伴侶にはせぬよ』
「身勝手すぎて何を言いたいのかわからんぞ」
・・・いや、パロマはこういうヤツだった。
「それより通信を切ってくれ。前が見えん」
何か巨大なモノが、下に・・・進行先にいる。
音声を強制的に絞られたスリンガーの叫び声らしきものも聞こえるが・・・
『ハハハハ!気にするな。それより今夜のパーティには出てくれるんだろうね?許嫁の家からよいワインが供出されているのだよ』
「いや、それより・・」
『少佐!回避してください!!友軍の爆撃要塞に・・・』
は?
地表から数キロ離れていたにも関わらず、ユニオンの南米秘密基地ジョンブラー上空で起こった巨大な爆発の衝撃波は惑星表面を三周したという。
「くっそ、さすが有重力下じゃブラウは重すぎるぜ」
宙での活躍がウソのように、ルフィの機体の動きは精彩を無くしていた。
おまけに対空砲火の流れ弾が酷い。
「やってらんねえぜ、おいナミエ!俺は先に降りるぜ」
言い捨てて地表へと加速、ランディング可能臨界域にて逆噴射、ジャングルの木々をへし折りながら、それでも地中に半身を埋め込んで着地した。
「ふぅ、ジャングルか・・・それより有重力下でのパワーサプライなんぞ・・・いや、コレか」
有視界内に出現させたグラフィカルキーボードで様々な出力マッピングを表示させた後、圧縮大気処理の為に切っていたオートパワーサプライをONにする。
「・・・生きてんのがウソみてえだが、・・・いや、まだわからねえ」
植生はチガウが、葦の中というロケーションで行ったサバイバル訓練を思い出す。
レンジャー出だという教官に死ぬほどのシゴキを受けた記憶と共に。
「何が返事はレンジャーだよ」
だから公務員のジョークは詰まらねえつわれんだよ、と鼻で笑ったのが運の尽きだった。
地表の振動から予測した着地点へとスニーキングし、呑気に木々の上にガンと首を出しカメラを旋回させているゾカをジャングルの中から刈ってゆく。
「足音を立てるな。ガンを鳴らすときは確実に殺せ。射線は水面下・・・」
腰とヒザを伸ばしたら死ぬぞ。
オマエは恐竜だ。ベルト(の重さ:弾水他色々スリングされ重い)を尻尾だと思え、なんつーのもあったな、となんとなしに回想しながらリーゼは楽でいいぜ・・・と呟く。
鼻歌を歌ってることに、ルフィはその時初めて気づいた。
・
・
・
「うっわ、すっごい爆発・・・映画なの?ホントに戦争みたい」
映画のようだつっときながらホントの戦争みたい・・・てなんやねんと反駁する。
閃光が納まると、煌びやかだった対空砲撃が散発的になり、たまに息を吹き返したかのよう賑やかになるもランディングを済ませる敵機が増えたのか、すぐに空には静寂が訪れた。
「ユウ・・・どこ?還っておいで。成仏できなくなるよ?」
戦線が地上へ移行した後も、ナミエは死んだ友人を探し空中を彷徨っていた。
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「お、降りられるのかよぉ!」(パ
若い頃カラオケで哀戦士歌って(叫んで)るとき高校の友人がこのセリフ当ててきてあのセリフの良さに気づきましたww
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