ジョンブラー自己心中さん

暗いジャングルの遥か地下。


地上へ向かう滑走路やカタパルトが閉鎖された奥の倉庫にソレは居た。



「憎むのが辛ければ、愛せばいい。また逆も然り」


どうせ同じ偏狭した差別的感情に過ぎないんだから、てなんかの本で読んだ。

そのときは僅かに嫌悪が沸いただけで、なんの興味もひかなかった。


「食べるコト、殺すこと、憎むこと・・・」


動物界にいる生物はほとんどが行っていること。


フタリ並んで仲良く笑い、そのうちお腹が空いてイライラし、片方が片方を殺して食べる。


満ち足りて笑った後、食べてしまったヒトリを惜しんで少しだけ泣くのだ。


大地の時代の古い権威ある教えにも同じ話が書かれていたというし、これは動物界の生命が増え生き残るために獲得してきた、感情をエンジンとした高効率な生存方法・・・脳神経に薬理作用でプログラムされた行動・・・?


とにかく、単純で機械的できっと数学が好きなヒトなら簡単に代数の式へと表せるなんの不思議もない明瞭で簡潔なコト方程式なんだろう。



だからこれからあたしがすることもなんの不思議も面白味も無い、動物なら誰だってヤってることなんだ。



エアコムで宙空に描き出された映像で倉庫内各機体をモニタしていた整備兵が手を止めた。


「ん?14番機の点火プラグが落下・・・消失?なんの・・・重力機関かッ!?」


『緊急警報。倉庫内ハイン14番機ジェネレータ、重力機関が極小落下中。基地内の兵は速やかに脱出せよ。要最小離脱半径は130万キロ。繰り返す、30秒以内に130万キロ先へ離脱せよ。これは警報である』


内務員が叫ぶ。


「ムリよ!月よりも遠くじゃない!」


横の兵士が叫んだ女性の腕をとり、同じように叫んだ。


「30秒あれば十分だ、任せろ!俺ならイける!」


「えぇ・・・いくら男でも30秒で・・・あっ」


「すいません、俺も並んでいいすか・・・童貞なんです」


「あ、おれも」


「おれも童貞です」


「おまえ、あたしの前でフザけんなよ!」


「あああ最後くらい違う女と寝てぇえええ!!!」



ユウは眼下、断末魔の地ご・・・乱痴気騒ぎを睥睨し、思う。


アフロも、あの白人のおやっさんも、そしてルフィも。


みんな誰か好きなヒトがいて、そしてそれはあたしじゃなかった。



『重力崩壊までの時間が延長されました。機関極小落下まであと五分三十秒』



それはすこしだけ悲しいけど、絶望するようなことじゃない。



「おい延長だってよ」


「俺までまわりそうだな、ラッキーw」


「なあ、こっちでも始めようぜ」


「バカ・・・うん、ぃぃょ」



基地内のアナウンス邪魔だな・・・なんとかならないかしら・・・



『なんだ、ここにいたんじゃん!ユウ、はよ還ってきなよ』



空いてんだから、と目の前に現れたハンビオン・・・ナミエが叫ぶ。


『ん、でもあたし、やらなきゃなんないから・・・コレ』


『ふーん・・・まぁ、別にあんたがやんなくてもだし』


いいか、とレグナを駐機し、倉庫へ降りる。


駆け寄ってきた整備兵に強く両肩を掴まれた。


「きゃ・・・」


姦やれちゃうの?!と硬直したナミエに男が叫んだ。


「重力機関のリミッターを外す!お前だけでも逃げろ!」


「はぁ?」


男は中空に描き出されたハンビオンのジェネレータ類コントロール系のスイッチ群を次々と展開してゆく。


「どうせ地球・・・大地と周辺の衛星に入る奴らはもう助からない、重力機関を最大稼働させれば・・・」


忙し気に動いていた男の両手が止まる。


「なんだコレは?!リミッターなんてどこにも・・・スイッチすらフェイクじゃないか!」


何処の機体だ、とめたくそ元気に手を動かし始めた男の吃驚様を眺めながらナミエはあることに気づいた。


「あ!ねえちょっとユウ」


『なに?いま忙しいんだけど・・・』


乱交騒ぎに視点を釘付けにしたままのユウが応える。


「いや、お父さんとか生きてるけど?」


『うん』


「・・・うん、て・・・えー!あんた家族ヤられたのが動機とか言ってなかった?!」


『はは・・・ほんとは、違うの』


「ふーん・・・聞いていい?」


『体がないのに、恥ずかしいとか感じるんだね・・・いいよ』


視線は刹那のまぐわいに絶頂を繰り返す享楽の宴に固定したまま、ユウは語り始める。


『初めはカイリーのおじさんが好きで、でも死んじゃって』


「うん」


『次はアフロが気になって・・・でも死んじゃって』


「うーん・・・うん」


『最後はルフィさんに無理やり・・・ごめん、その、されちゃって』


「無理やりか・・・ルフィのクセに」


でもアイツに無理やり女押し倒す獣性なんて無いでしょ、などと一人ごちる。


『アフロが死んだ時までは、怒りみたいなのがあったんだけど・・・ルフィさんとのことで全部失った気分になっちゃったの』


「うんうん・・・ぱくっ」


そしたら、あんたが帰ってきて・・・ちょっと元気になって、ドルフに乗って・・・目の前を埋め尽くす敵戦闘機の群れを見たら・・・全てを取り返せるチャンスかもって・・・んんんん?????



「アハハハハハハハ!!!!!!!!!」



ちょ、ナミエっ!あんたぁああああ!!!!!!


「あーおっかしぃ!自分語りんときゃみんな無防備になっから弱み握るチャンスってりーともLINE友達から聞いてたんだよ!流石千年続くアプリはチガウね!」



ユウの魂はナミエに回収された。


そうして重力機関は極小落下したのだった。


@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


千年アプリwww


・・・・宇宙世紀の年代が決定してしまった

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