血の復讐者

「え・・・っと、嫌ならあたしの方で回収するけど」


アフロが掘られてる部屋に入れたら復活しねえかな・・・こんなユウは絶対におかしいよ。


「ふふ、違うの。怖くなっちゃって」


ええ・・・コワクナッチャッタ・・・めたくそ低い声でおっぱい揉ませろとあたしの胸をはだけ容赦なく掴み上げてきたあのユウがコワクナッチャッタコワクナッチャコワコワコワコワコワ・・・・・



「あたしが、親兄弟の血の代価を払わせる。そうして相手の家族も血の復讐者になる・・・これ、終わらないよね」


ああw


「うん」


「・・・どこまでも」


「そんな長く続かないよ、残念だけど」


「残念・・・あ、ナミエだもんね」


「大体、身内だろうと殺されて猛りあがる人間だって少ないもの」


「・・・そういうもの?」


「じゃなかったらヤクザなんてやってらんないでしょー?」


大体は怯えるだけ。

それで終わり。命は大切にね!(by命子ちゃん


「戦場に出て、血の復讐なんて置き去りに殺戮機械になっちゃった人たちは・・・フフッ」


「ちょっと、笑える話なの?」


ちょっと歴史の珍事を思い出して吹いてしまった。


「大地の時代の秦て国がね、使い終わった兵たちを穴に埋めるかわり、大きなお墓を作らせたり人形を作らせたり、みんなで広大な版図を旅行したりして・・・死ぬまで養ったんだって。・・・すごいよね」


隣で顔を伏せる気配。


いや~凄惨な虐殺記録がそれ以上に山盛りであんだけど、これは話さないほうがいいかな・・・テヘ☆


いいハナシ的に〆たけど、この戦争も大地の歴史を参考に最終段階の大量虐殺、兵士たちの処分まで含めバッチリ組まれちゃってるからな・・・あ!


レクルームの艦外環境モニターに拡大投影されてる大地の球体を見つめる。



弟に、宇宙へ上がっとけて言っとかないと。









「小惑星を・・・大地に落とすだと」


磨かれた石を模した内装に誂えた室内で、ドズ・・・バルバドス中将が獣のように低い唸りを上げていた。


「数時間内に落とさなければ・・・到達可能な小惑星など・・・ピーコデスか!もしくは、オスギデス」


潮力の補完や太陽風の減衰を図るために改造、設置された人工惑星の名を呟く。


この二星なら常に地球と一定の距離を取りながら手ごろな位置を公転している。


戦傷なのか生まれついて・・・ということはないだろう、顔中の傷をゾロリと歪め、醜男が笑う。


「面白い・・・・・ユニオンめぇ」



男の低く暗い笑いが響く寒々しい室内に、てくてくと白いドレスの少女が現れる。


「まぁたしょーもない悪戯を思いついたの?お父・・・殿下閣下」


あら?中将閣下?それとも閣下殿下閣下・・・?


敬称をこねくりまわすハマミをド・・・バルバドスが睨む。


「足元をチョロチョロするな!踏みつぶしてしまうぞ。・・・なんだ、生まれ変わりの方か」


青いひとみの少女が笑む。


「男子系虚構世界の方々って、時々思わせぶりにわけのわからないことを呟かれますが・・・やめた方がよろしくってよ?」


間抜けですわ、と嗤い、間髪入れずに大人の高笑いを真似た子供の哄笑が石造りの・・・を模した室内に響き渡る。


「はぁ、お前が出ると現実的な緊張感が消し飛んでしまうわ。・・・酒だ!」


クラシカルなドレスに身を包んだ侍従がバーカート酒が満載された手押し車を押しながら入室する。


バルバドスの前にロックグラスとボトルを置くと、少女の横前へ目を伏せて控える。


「えーとリキュールつかったやつなんだっけ・・・いいや、モヒート頂戴。ビターマシマシミントダブルシュガーで」


「マシマ・・・かしこまりました」


一瞬躊躇しながらも侍従は素早くトッピングをすませ軽やかにステイした後、シンプルなグラスカクテルをハマミの前へ置く。


「なんだそのオーダーは。大地の時代の流儀か?」


「昔のアメリカの詩人が大好きだったんだってさ。はいカンパーイ!」


バルバドスの机のボトルへ軽く当てると、一気にあおる。


「はぁ・・・ハマミよ、ユニオンは小惑星を大地へと落とすそうだ」


「大地?・・・あ、チキュウのことですわね」


「その呼び名、調べさせたら確かに大地の時代の言葉らしいな。ラテン語というが」


「はぁ?日本語よニホンゴ!!!チは大地の地、キュウは球体の球よ!なんで通じないかな」


水を入れて、と空けたグラスを侍従へ向け、渡す。


「で?小惑星なんか落としたら大惨事じゃない。お父様はどんな悪戯を思いついたの?」


「そりゃあ・・・まあ、お前にも話しておくか」


中将の合図に、侍従はバーカートを置いたまま部屋を出ていった。






「前方に重力反応・・・敵性、ザイオンです。数は・・・」


「おいおい、前って・・・座標は」


キャプテンシートに坐す航空母艦ソクブランのバリドロム艦長はと前方のモニターの半分を占めている第三惑星を眺めながら旗艦座標軸での位置情報を要求する。


「数、二千五百!全てが戦艦並みの重力反応、リーゼです!座標・・・出します」


バリドロムは視界内に広がる星々が悉く敵性にマーキングされてゆくのを見ながらつぶやいた。


「視界内が全て敵、か」


「データ、出します」


オペレータがグラフィカルな分散イメージを文字情報へと変成し分析データをラインテキストと早見表で船外映像として描き出してゆく。


「全機が爆装・・・いやD型装備?大地に降りる気か!」



「艦長、しかし第三惑星は・・・」


居住を許されている都市の全てはザイオンに占領されているハズでは、とブリッジ内で疑問が交わされている。


「ここに至っては隠す意味もあるまい・・・南米大陸の基地が発見されたのだよ」



眼前に映る巨大な水球、海の蒼から大地の碧へと変わる間にある、弓のような形の列島を眺めながらバリドロムは何かを絞り出すように言った。


喉を鳴らし、シートのヘッドレストへ頭を預けながら彼は思う。


(なぜいいセリフを吐こうとするたびにタンが絡むのだ・・・これが、老いか)



「遊泳中のパイロット達を呼び戻せ。有視界内だ、すでに補足されているだろうが・・・」


撃ってない、ということは見逃してくれるということだ。

速やかな撤退。


そして、敵影を振り切ったところでぽんじりと冷えたグラスビール。


よし、と頷いたところでオペレータのセリアが底冷えするように冴えた声で凶報を叫んだ。


「ハンパンツァ、ユウ機ドルフが砲撃開始!レグナを先頭にブラウニ機が機甲錐形で突入中、三秒で・・・エンゲージ、戦闘開始!」


ブリッジが一瞬にして凍り付いた。


停止した時間の中、クルーの視界内にパイロットからの緊急割り込みサインが点灯しバルフィンドの顔が表示された。


『その、この映像が届くころには・・・真に申し訳ない。ジブンらは見捨て、退避か突入を早め・・・いや、職責を超えた言動失敬重畳。ボランティア四名、これより星となって参りま』


困憊しグダり続けるルフィの映像の横にハンパンツァの女の子の映像が割り込む。


「ユウです。艦長、あんたがどちら側か・・・あんときの言葉、今確かめさせてもらうぜ」




・・・念のため判りやすく言っとく。


逃げたら、撃つ。


コトバとしては聞こえなかったが、そう笑って女の子の映像は切れた。




「・・・瀕死の人に銃を渡してはいけない、か」


バリドロムの頭の中で、ビールが温くなってゆく。



「艦長!」


「仕方あるまい、停戦信号、白旗だ。くそ、電子的停戦手段の合意にむけたコンセンサス、北極条約締結を強く圧しておくべきだった・・・」


緊急の時に際し、いちいち愚にもつかぬ後悔に脳のリソースを割かれる。

これが旧人・・・ジオトロプス、というコトか。


天に生まれし新人、ウラニオス。

自らをそう嘯く者たちが他者を蔑む蔑称を口にし、バリドロムは深くため息をついた。




「白旗をあげつつ敵リーゼ群へ向け全速直進、コクピットシェルの誘導信号を出せ」


「はい」


戦争に人質など無意味だが、なにも進んで圧縮大気で焼け死ぬことは選ぶまいよ・・・


自分のマゴが喜んでいた虚構世界を思い出す。


すべてが情感優先の演出で構成された物語に薄い物足りなさを感じたものだったが、今絶命の窮地に自分がよすがとするものがそれであることに、かれは自虐的な笑みを浮かべるしかなかった。





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この作品の本編「嫁呪」になんで地表に慣性突入しなきゃなんない他もろものうんちくを主人公の「さて、逃げるか・・・なぜ出力があがらない?!(ガチャガチャ」みたいな演出で描いたんですが、デバイスからのエラーをかっこよく書こうと英語()にしてしまって恥ずかしくて読み返せないので朝ですがビール飲みます。

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