剣道

あたしは今、古風な防具に身を固めて、板の間道場で刺子袴姿のルフィと向かい合っている。


「どこからでも来い。・・・しかしなんだ、その竹刀は」


答えるかわりに踏み込む。


正眼に構えたあたしの垂れた剣先を押さえ払い、目に留まらぬ雷撃のような上段が振り降ろされる。



私はその姿をルフィの後ろから確認した後、叫ぶ。


「ドォオオオオオオオ~~~~~~ぉほほほほほほwwwwwウッ!」


抜き胴いっぽぉおおおん☆


ルフィが振り返る。


「おまえ、有段者か。段位は」


しらんけど、なんか剣道は初段から真剣の振り方・・・人の切り方を学ぶらしい。


「寺子屋の百姓剣法だし、段位なんてないよ。免許も三つしかもってない」


正眼に構えたルフィへ再度踏み込む。


互い上段で肉薄。

ルフィの構えから先に隠れる右目へ体を寄せ、柄尻から左手を放す。

振り降ろされるルフィの竹刀と交差させながら野球というスポーツのピッチングのように大きく半身ごと滑り込ませ、斬り抜き振り返りルフィを覗う。


ケサに薙いだはずだが、納得してないのか剣道的に有効打では無いのか、再度踏み込んでくる。


ルフィ裂帛の気合。怖い!!!


思わず、殺気を込めて竹刀を振る。


ルフィの右手を打ち下ろし首を薙いだところで、ようやく彼は自らの竹刀を落とし膝を着いた。



「・・・あ~、こわかった」


面を脱ぐと、ルフィは未だ座していた。


「大丈夫?・・・なハズだけど」


右手のぺなぺなとした袋竹刀をプラプラ振る。


「手も首もついている・・・いや、板の間へ転がる自分の首が見えたんだぞ」


血走った目を向けてくるけど、まだ夜じゃないしな・・・


「自分で自分の首が見えたなら幻覚じゃん、てゆーかそんなん漫画でしか見たことないよ」


立てないなら掴まれ、と竹刀を向ける。


ヤル気を無くした男性器のように垂れ下がったそれを見つつ、フツーに立ちあがるルフィ。


「袋竹刀か・・・とても打ち合いには向かんと思ったが」


「そうそう、斬るんだって。ごっこ遊びだよねw」


わらう。


・・・コレは家に遊び(タカリ)に来たYの付くでっていうその道の師範代の方がおっしゃってたことでただの茶飲み話なんだけど、この袋竹刀はうまく打つとまるで真剣にて人体を真っ二つにせしめたが如き手応えを術者へ齎すらしく、発明者は日々強くなる弟子たちを斬りたくて斬りたくて斬りたくて斬り・・・・・



そう、茶といっても焼酎が入ってたり泡の立ち上る金色の液体だったり、そういう発言になんの責任も発生しない席での・・・見苦しい言い訳はここまでにしておこうか。


我が剣には聖が宿り活人剣でお主を斬ったのではない、お主の中の闇を斬ったのだドシャアッ!


いつの時代でも正義だの善だのヒジリだの道だのは臆病な圧倒的弱者へと向けた生き残った者たちからのリップサービス、政治的宿命なのよさ。




立ち上がったルフィは力なく笑み、あたしに言った。


「女に負けるとは・・・な。オレもヤキが回ったもんだ」






ソクブランへと戻ったあたしは、艦長直々にアフロの死亡を伝えられ遺灰を渡された。


全力でいらんけど命食ってしまってる後ろめたさから受け取り、胸へ抱きしめる。


・・・灰だからキレイだし、嫌悪感はそれほど無かった。



道すがらこの船はなにやら大地へと向かうらしいと耳にしてあたしは、既にパトラッシュでは滲みもしなくなった涙を松永さんが思う娘の記憶リフレイン大会で大洪水に垂れ流しながら”彼の意思はあたしが継ぎます!”など適当なことを演戯してうまうまと乗務員待遇をゲット(60?)したのであった。この策士感!


あ~娘、てこんな可愛いのか・・・オヤジ、ごめん。涙が止まらないよ・・・

どうでもいいから心置きなくさっさと死んでくれ。


つか松永さんのムスメになりたい・・・もうヤっちまったし、ムリか。


「君はパイロットとして、彼の遺した機体を頼む。・・・アフロ君も喜ぶだろう」


「はい・・・ありがとうございます」


パイロット?


なんか不穏さを感じる業種名だけど・・・アフロがやってた仕事でしょ、まぁ楽勝なんじゃね。


「マクレガーだ。案内しよう」


はい、お願いしますと頭を下げつつ、マクレガーてなんやねん・・・あ、この人の名前か。


油臭い巨大倉庫的なイヤ~ンな空間へ入ると、そこには白人美少女と白く美しい大型人型戦闘機があった。


『美しい・・・』


あ、こら出るな。


謎チャンピヨンを押し込め、手を振る。


「フン、帰ってきたのね」


「うん、ただまーカイリー」


「おかえり、ナミエ」


マクレガーさんが白い機体の前に立つ。


「これがアフロ君の・・・君が乗ることになった機体、ハンビオンだ」


「えー・・・白いのに、いーんですかねあたしなんかが乗って」


カイリーと見比べながら、なんとなく気おくれしてしまう。


「何か不満・・・気になるのかね」


マクレガーさんだって白人じゃん。

わっかんないか・・・


「はん、黄猿のジブンが乗っていーのかってビビってんでしょ」


吐き捨てるようなカイリーの嘲笑。

なんか・・・荒れてるの?


「おいおい、ケンカはやめてくれ」


「いーのよこの娘はいつだってそーなんだから。安心しなよナミエ、黄人だってミンチになりゃピンク色なんだから」


かわんないわよ、そう言い捨てあたしの持ってるツボを叩いて奪い去ってゆく。


青銀の長い髪が流れる水のように閃き揺れる後ろ姿を見つめる。

知らず知らずに涙があふれてきた。


あたしを向いたマクレガーさんが言う。


「彼女も責任を感じているんだ。気にするなとは言わんが、察してやってくれ」




「いえ・・・なんかめたくそカッコよすぎて・・・ほんと映画みたい!」


”イエローだってミンチになっちまえばピンク色さ・・・”


かっこいいセリフ吐く美少女白人最高すぎる!ダバババー!!!!!


イエローだってミンチになりゃあピンク色さ!!

イエローだってピンク色!!!!!!!



アフロ、おまえ・・・いい仕事したな。



@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


女に負けた、名前は憶えてない。



・・・ん?ひょっとして差別がテーマです!お金ください!!!!!!で国から二兆円くらいもらえるのでは?!?!?!?!?!

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