出撃
「そこのお嬢さん方はどうかね」
そんなんもう即答よ。
「あ、今日は女の子の日なので無理です!」
「・・・・・」
「やってもいいっすよ」
「えー!ユウ?!」
見るとむちゃくちゃ目が座ってる。
「ナミエ、あんたとは違ってコッチはもう当事者なんだ・・・親兄弟を殺されて生活も奪われちまってんだよ。じゃあもう銃とって戦うしかねーだろ・・・取り戻すんだ」
艦長も全てを解ったとでもいうように頷く。
「そうだ。ザイオンに奪われたものは、全て取り返す。その為の戦争・・いや、戦いなのだよ」
あー!もうザイオンて名詞はうちらの間じゃ政治的スローガンにまで陳腐化しちゃってんですよやめたげて!!
「艦長、そっちに組み込まれたらあたしは兵士だ。命令には従う。だが、あんたがどっち側なのかは見極めさせてもらうぜ」
艦長もふたたび全てを解ったかのように頷く。
こいつ絶対夕食とか他の事考えてんだろ・・・
つか・・・ユウのお父さんお母さん、あっちでババ抜きしてんだけど、言える空気じゃないよね。
「あたしも・・・あたしも拾ってください」
「カイリー?!あんた寝てるだけで男が餌抱えてウッホウッホ寄ってくるっつーのに働くの?!」
「ナミエ、ごめんね・・・やっぱりあたし、どうせ死ぬなら少しでも楽に死にたいの・・・」
病んでる・・・あ、アの日の精神不全も相乗してんのか。
「艦長、これでハンビオン以下四機のパイロットは暫定となります」
「うむ。ではさっそく働いてもらう。両中尉はナビゲーターと教官役を手配せよ、サポセン経験者のキミは私と共に来てくれ。ゆくぞ」
サポセンてなんやねん…コールセンターやぞ・・・かわらんか。
出ていく三人のうち一人が振り返る。
「我々はいつでもクルー、協力者を募集している。今はなにも考えられないかもしれない。だが、少しでも力が戻ったならば、協力を願う」
敬礼。去ってゆく。
あれ?あたし一人になっちゃった。
「おじょうちゃん、ひとりになっちゃったねえ」
うぇへへへ、きもおじ達がきちゃった。
「あの、あたし・・・せめて暗いとこなら」
びくびくおどおど。
「ああ、いいとも。じゃあいこうか」
三人のおじたちに肩やら腰やらを抱かれ、出ていく。
ちっ、三人だけか・・・しわいの。
ナミエがそのように艦内の人手不足に追い打ちをかけていた頃、三人の学生と元警官はリーゼという人型宇宙戦闘機の前に並んでいた。
「こっちの白いのがハンビオン、あっちの赤くて肩に大砲がついてる二機がハンカノン1.2、奥の多脚で長い砲のがハンパンツァだ」
アフロがそのアフロを揺らしながら口をひらいた。
「びょん、かのん、ぱんつか・・・なんか女の子の名前みたいだね」
ユウという少女が飽きれたように返す。
「えぇ・・・かのんはともかく、びょんとぱんつはねーよ」
教官役の男が笑い、継ぐ。
「はは、これは艦内で使う便宜的な愛称さ。機体名はさっき言った順でレグナ・ブラウ・ドルフという」
カイリーがうっとりと溜息を吐いて漏らすように言う。
「ドイツ語っぽいですねーなんかステキ」
額が広く輝き始めたか、という年頃の元警官、バルフィンドが申告する。
「本官はこの赤い方の搭乗経験が10時間あります。教習ですが」
「ほう、それは心強い。ではバルフィンド殿はブラウIIへ」
「呼び捨てで結構であります」
「うむ。バルフィンド、期待している」
「ハッ!」
敬礼。
ユウがすすっ、とバルフィンドへすり寄る。
「バルフィンドさん、あとで組手してよ」
「ん?フフ、いいぜ。下は履いとけよ」
「うんw」
教官がユウを向く。
「競技会の成績を見た。君はクロカンで射撃の成績がよいな、ドルフのガンナーシートを頼む」
「はい!ありがとうございます!」
ビシ!とバルフィンドを真似たのか、同じ敬礼を返す。
「じゃあ、あたしがライダー・・・ドライバーシート?」
疑問するカイリーへ教官が言う。
「そうだな、できればレグナかブラウをアフロ君と担当してほしい」
「え?こっちのライダーは?AI?」
「戦闘機動コンだな。アーティフィシャルなセンスは冗長性が大きすぎるということで従来の条件分岐回路で動かしている・・・という話だ」
「ああ、デコイ以外だと最適化に問題あるとかききますねそういや」
「最大の問題は人が乗らなければ作動しない重力機関のブラックボックスだが、ね」
四人がリーゼを見上げる。
「では、とりあえずカイリー君がハンビオン、アフロ君がハンカノンIで行ってみようか
いきなりの実機演習が開始された。
・
・
・
あーあ、みんな今頃ロボットに乗って遊んでんだろーな・・・なのにあたしは裸のおじさんたちと・・・くすん。
とりあえず動かなくなった肉塊を組み上げたストーリーに沿って配置する。
もちろん、政治的配慮だ。
あたしが食べちゃったv的な歯形なんてのこしたらみんな()がこまるし。
初めに挿入する権利を奪い合い偶然が重なって心肺停止になりました、的に。
しかし・・・こいつらこんなブヨブヨの体でセックスできんのか?
いれてちょっと動いて出したらもう試合終了だろこんな体じゃ・・・あーいらいらする!
畳部屋に戻るか・・・いや、ちょっと探検しよう。
何人か釣れるかもしれんし・・・
リボンタイを引き胸をあけ、スカートを第一関節分ほど引き込む。
ああ、ほんと防音室とか無いかなあココ!
・・・そいやおっちゃんの形見のギターどこいったんだろ。
なんとなく思い出した時、警報が響き渡った。
死体見つかったか・・・でも大げさすぎね?あ、ここれキョドキョドしてダッシュしたら被疑られるのか・・・ヒギィ!!!!!
『接敵臨界域に敵影あり。ザイオン宇宙巡洋艦ザム型一。三機の敵性リーゼの発進を確認。迎撃部隊発進急げ。防衛部隊は機動砲台を起動せよ。接敵30秒前。くりかえす』
・
・
・
『バルフィンド、敵の強襲だ。大至急帰艦しろ』
「はっ!了解しました。こちらは既に敵に補足されております、可能なら離脱し艦へと急ぎます」
『わかった。迎撃部隊の現着まで30秒、生き抜けよ』
「了解であります!・・・・アフロはカイリーを連れて離脱。ユウは共に下がりつつそのクソデカい大砲で援護してくれ」
「わかりました!」
「ウフ、よろしくってよ」
「妥当だけど、そっち行きたかった・・・足場ないとコレだめだね」
「じゃあ、行くぜ」
バルフィンドはハンカノンを重力加速。敵機をカメラに捉える。
「補足!・・・なんだありゃ、呑気に密集してやがる・・・ユウ!敵機影送った、撃て!」
「ハイハイサー☆」
大質量をもつ重力砲弾が敵密集三機を貫く・・・寸前、三機は散開。
「え・・・シミュレーション通りじゃねえか」
バルフィンドのハンカノンIIの固定砲、僅かのディレイでハンドライフルの二連射を散開直後の敵三機へ撃ちかける。
連続6射。
ハンパンツァ砲からの散開直後のカノンの追撃、それぞれの回避慣性を殺しきれず、二機が三発目のライフル弾を受け撃墜、残り一機に。
「こりゃあ楽だ・・・」
二機の爆炎、熱気体膨脹炸薬の誘爆、太陽光に煌めく装甲の飛散を背に残った一機の赤いリーゼがバルフィンドへ迫る。
中のヒト、ザイオン軍親衛隊所属ギルベルト少佐は不敵に緩んだ口を開いた。
「
迎撃戦闘機の到着まで・・・あ、もう到着してた。
次回、迎撃戦闘機達の活躍。
ガチャは、一回五百円でも月二千円まで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます