ソクブランと船長

「ナミエ!おやっさんは?!」


「ごめん、死んだ」


殴られると思ったら、カイリーは一気に泣き崩れ、あたしへと取りすがって来た。


「うぅう・・・おっちゃん、お嫁さんになりたかったよ・・・」


え!マジか・・・

あたしやユウならともかく、いいオトコ選びたい放題のその身空()で・・・


「まぁ、オマエが付いてて・・・だし諦めるしかねえか」


ユウがため息をつく。


「ザイオンの国章の戦闘機が飛び回っててさー」


あたしの言葉に奥で被災者にタカってた人等かこちらを向く。


うち二人、顔を整えた男とエアコムを操作する男が寄って来た。


「CBBテレヴェゾレの者です。お話よろしいですか」


「シナリオとかある?」


これは話が速い、とばかりに笑むとコードを送って来た。


朗読。


「あたしたち、避難してたら突然ザイオンの国章を付けた戦闘機が・・・」



「・・・ありがとうございます。ではお礼をIDへ・・・あ、これは失礼しました!社を代表しお礼申し上げます」


送金IDは家の名前が出るからな~・・・はやく大人になりたい!


「スポンサーとしての協力ね。・・・あと、世の中が裏返った時用のも撮っとく?」


全社代表は後ろの男と視線を合わせると、頷き合う。


「おねがいします」


こっちは、事実をリアルデータと共に開陳するだけなので楽に終わった。



「おい、さっきのマジかよ・・・」


ユウがめたくそ暗い怒りを燃やしている。


「あ・・・その、たぶん確実に家も噛んでるから、なんかあればあたしが受けるけど」


「ちっ、あとで練習つきあってもらうぜ」


「うん・・・えっ、カイリーも?」


めっさ青い炎が猛ってる。

・・・こわい!


「庇われた・・・だと?」


「うん、押し倒されちゃった☆・・・道路にだけど」


「いい気になんなよ黄猿の女狐ェエエエ!!!!!!!」


「ギャアアアっ・・・ギッ、ギブ・・・」


チョーク!フロントチョーク入ってる・・・・!・!



突如全てが闇に沈み、落ちた。



目が覚めると、そこはカイリーの膝の上だった。

なんか・・・白人美少女に膝枕されるなんて、もう二度と目覚めなくてよかったのでは?


白いモモの上でうつぶせになり、股に顔をうずめて深呼吸する。


「うっ・・・アの日だった?」


「起きたのか・・・」


見上げると、トロンと濡れた青いひとみがあたしをみていた。


美しすぎて怖い・・・


「なあ、あたしはどーなるんだ?やっぱズタズタに処女を食い散らされてエロコンテンツで死ぬまでボロボロに使い倒された後、ザイオンの非道アルバムの一窓として日記とか書かされ・・・」


「わあああああああああ!!!!!ポリコレポリコレ!!!!!!!」


「歴史の悲劇であそんではいかんよ?」


隣のおじいちゃんからも重いお叱りを受ける。


もちあたしらは粛々と受け、只ひたすらに反省の意を示した。


「ってゆーかカイリー!なに突然悲壮に沈んでんのよ、ヤクザのタマでも踏んだの?」


「あんただよあんた」


ユウからご指摘入りました!


「あたし・・・え?ひょっとして無償の奉仕に目覚めて身を捧げたくなったとか?」


「いや、首絞めて落としたろ、そんでビビっちゃってんのよ」


ああ、なるほど。


「そんなん気にしないでよ、あたしら何年ツルんでんだってゆう」


カイリーの顔に、愁眉のままとはいえ僅かの笑みが戻る。


ああ・・・この小指でも手折れそうな儚い美しさ・・・ズタズタに汚し尽くしたい!!


「ユウ、あたし・・・今、あんたの男心が理解できたかも」


「あたしもなんか美しさってのがなんなのかわかった気がするわ」


白人教徒としてカイリーを賛美し合った後は、はて自分はドコにいるのだろうと周囲を見渡す。


なんか柔道場みたいなクソデカい畳部屋でパラパラと人が寝たり打ち込みやってたりしている。


あー、さっきからなんとなく耳に入るセイッ!どどん、てアレはコレか。


どどんどどんやってんのはアフロとハ・・額の広い焼けマッチョだ。


・・・ん?


「アフロ某じゃん!おーい!」


思わずクツ抜いで畳に入り走り寄る。


「顔は?ケーサツで治してもらったん?」


「げ、近づくな!」


「ひっどー!こんどはタマ蹴るよ!」


「お前とはもう終わりだって!あんだけ殴ってまだ気がすまねえのかよ」


「・・・ああ、ソレはもう・・・別にいいけど。隣の人は?恋人?」


「ワケねーだろ!あんときの警官だよ」


「やあ」


「あ、あのときはありがとうございました。また蹴ってやってください!」


「ああ、そのうちなw」


「あたしらも隣で始めますんで、それじゃ」


照れ笑いしながら手を振ってユウと組む。


「えー、スカートのままやんのかよ」


「いーじゃん非常時なんだし。襲われたら実践できるでしょ」


「なんの実践する気なんだよ・・・」



えっちに息を弾ませながらパンツ丸出しでやりまくってたにもかかわらず、よこでゴリ・・・逞しい男とアフロな某がヤってる所為か誰も襲ってこなかった。


部屋の外の自販機でジュースを買い三人で壁際に座って飲んでいると、軍人ぽい人が三人入って来た。


「わたしはこのフネの艦長、バリドロムです。わが軍は今、相次ぐザイオンの襲撃で兵を失い、フネを動かすためのクルーがたりません。是非、みなさまのお力を貸して頂きたい!」


ほーん。

なんで足んないんだろーねぇ・・・


「なぁナミエ、さっきのハナシじゃないけどさ、兵たりねえとかおかしくねえか?」


なんか男っぽい言葉遣いになってしまったなユウ・・・


「さぁ・・・反撃能力の無い1市民に基地ごと皆殺しにされたとかじゃあないっすかねえ知らんけど・・・ウゲエっ!」


ワキにユウのヒジが刺さった!ひどい!!

いーんだよ軍の被害も欲しいつってたんだから。


「ん?そこのアフロのキミは学生か。リーゼの教習は受けているね?」


「本官も・・・!いえ、私も警邏に落とさ・・・転換前は特別機動部隊の講習、実機訓練を受けております」


あ、マッチョさんが志願してる。

アフロはバルフィンドさん頑張ってください応援しますなんぞ言って離脱を図っている。


「私、コールセンターで働いていたことがあります。お手伝いできませんか」


え、そんなん何の役に立つん?て見たら驚きの白人美女が!


「是非艦橋のオペレータとして手伝って頂きたい」


あ、秒で確保しやがったよスケベ艦長め!

でもオペレータて聞くと大地の時代の印刷機械が脳に浮かんでしまうのはやはり宇宙の意思の大いなる干渉なのだろうか・・・



「ぼくも戦います!」




アフロ某よ・・・あのトラン・・・ミニグ・・・ちっちゃくてボインな彼女はどうしたんだ。










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る