全都民緊急退避
『楽器弾く女てエロくていいよな』
アフロ某、あなたの言葉で始めたギター。
アフロ、あなたはどうしてアフロなの?
ステキなアタマ。
掴みやすくて、あなたの顔殴るときめたくそ役に立ったわ。
じゃかじゃかじゃか。
えろいと言ってくれたあなた。
今はもうあたしの傍にいない・・・
「すごい・・・神の歌が出来ました!!」
エアカーテンで防音してる試奏ブースで手慰みに売りモンの青いセミホローを弄ってたら名曲が出来てしまった。
まぁ、そこの売りモンの雑誌(物理)に載ってた「誰でもミリオン曲が描ける!名曲しか生まれない下降系バラードコードを一挙公開!」をローコードザク弾きで歌詞メロ乗せただけなんだけど。
「いまはぁもぉおおぁたしぃのそばぁあぁああにひぃいぃい~~~」
サビは4536だけどそこから136へ戻す。
掠れてゆくファルセットと共に盛り上がる上官!じゃない、情感!!!!!
やばい、美しすぎて涙が出てきた・・・
もうそこら歩いてる人殺す度に歌うしかないよ・・・霧の曹操惑星。
つーか失恋バラード無かったら殺人件数爆上すんじゃね?
でもミドルスクールまで共感性育たなかったあたしらみたいのは何が起きても自分と世の中は別れっぱだしあんま関係ないか・・・
アフロ・・・よかったなおまえ、この曲のお陰て生きてられるんだぜ・・・
今は戦争中だし今すぐ死ぬかもだけどねwww
つーか、金星の辺りと木星の向こうで今も大量に死んでる。
たぶんマスコミ使って暴動とか大規模テロとか煽りまくってんだろーな・・・
マスコミが出来てからの侵略てもーされる側がどんどん自陣の非戦闘員虐殺して侵略側の非道アピールすっからもうウハウハですよ旦那様!
なんでって?そんなん侵略側にパタパタ寝返らせないため、あらかじめ殺しとかなきゃなんないじゃん。
ちな侵略側だって国内世論操作で虐殺されましたアピールすっけどね。
地上の時代の我らがルーツである日本て国ではカマクラからショウワまで同じ虐殺描写で国内世論や戦意向上を完璧に操作し切ったらしい。
このザイユニ戦争は、いまんとこはユニオンのが千倍くらい多く殺してる。
この前来た三機の戦闘機も、戦艦撃沈したけどドックへの破壊的な行動なんかはしてなかったし。
まぁしたから鬼畜、しないから天使、ってんでもないけどさ~。
ともかく、いまんとこはあたしらユニオンのやり口のが汚くてイヤンな感じ。
嫌がってもしょうがないけど。
だってあたしら人間は目の前の穴に自分より弱い人間を蹴落とし塞いで生きてきたんだから。
「楽器は弾くもので抱きかかえるモノではないよ。絵にはなるがね」
おやっさんだ。
「あ、すいません売りモンなのに」
「今のリアルイメージをポップにして販促に使うから、かまわんよ」
今も昔も女の子はいい看板になる、と奥へ引っ込んでいく。
着信。カイリー?
「あに~?」
『なんかこっち退避警報がハツレーしてんだけど。宇宙都市から退避しろだってさ~。そっち警報出て無い?』
店の外に視線を投げる。
「なんもない・・・平和」
『はぁ~、ひょっとしたら商店街は見捨てられてんのかもね・・・世知辛ぇなあ』
虐殺劇がコッチにもきちゃったのかな~。
・・・やばいじゃん!
「あたしおっちゃん連れてこーか?」
『そーね、あんた残してきてよかったわー。おねがい』
「おっけ」
切る。
「おっちゃーん!避難だってさ、ドックいこー」
あれ?退避だっけ??緊急性高いのか。
「避難~?ヤクザの騙りじゃねーのか」
「退避だって。街の方いったカイリーが言ってたよ」
「んじゃいくかあ。おまえあさっきのギターたのむわ」
「ケースは?」
「そこの高そうなヤツ、ハードのなかの長方形の薄い黄緑色のやつだ」
「うーん、水色に見える・・・」
仕舞い、手持ちで出る。
「あー、おやっさんアコギじゃん交換して」
「若いんだろ、ちいっとは苦労しな」
ドッグへの大通りをリニアやら自転車やらでたくさんのヒトが一方向へ進んでいる。
「おやっさん、どうしたの?」
脚を止めたおやっさんを見る。
「・・・退避?あの人数を?」
え?そりゃ中央街でも退避・・・勧告?いや警報つってたから人生投げた人以外はこの宇宙都市全員が・・・え?そんな箱舟みたいのある?
「はー、今日中になんて無理よね~」
30万人はいないだろうけど、一人一秒で乗って三十万秒、五万分、80時間、休みなく乗り続けて四日目の朝方に漸く、てとこか。乗船口増やしたってそもそもドックの入口とかいくつものボトルネックがあるしここでいい加減に想像するだけで憂鬱になってくる。
なんかすげえめんどくさい・・・
「ええぇ・・・もう四日後に行けばよくない?」
「おいじょうちゃん!あぶねえ!」
「ひゃっ!」
おっちゃんに押し倒される。
ひー!嫌いじゃないけどイヤッ!
道にうんちとか落ちて無くてよかった・・・
「ちょっと、青空の下でイキナリはないんじゃない?」
息がかかるほどの距離にある彫りの深い甘いマスクに不満を言うも、顔が熱い。
「どこも痛くねえか?」
「ん、これから痛くされるんでしょ?やっ、やさしくしてね・・・」
「ばっかおめ、ガキになんか勃つかよ・・・」
苦み走ったシワの立つイケオジ顔の口端から流血、崩れ落ちる。
あたしを避けて。
「ちょっ!」
背中のギターケースは割れ、路面には血が広がっていた。
「ちっ、そっちのセミホロウにしときゃよかったぜ・・・」
ええ・・・
耳へ阿鼻叫喚が入って来た。
通りの人らが叩きつけられた水風船のように弾けている。
空か?
ザイオンとわかる紋章、国章だけがデカデカと張り付けられたユニオンアーミーで正式採用されている宇宙戦闘機が、三機。
退避する人の群れを銃撃していた。
ほーん、そうなの。
「おっちゃん、今日中に乗れそうだよ?」
おっちゃんの腕を取る。
脈は無かった。
涙があふれる。
もち、おっちゃんの死を悼んでの涙じゃない。
命を捨てて守られた、という行為への感動、満足からだ。
周囲に爆発的な炎が吹き上がる。
焼夷攻撃?
逃げ惑う人々を小中火器で十分に弾けさせカメラに収めたら、物証に残らぬよう全て焼き尽くす。
これでリアルデータから読み解けるユニオン臭は全部ザイオンの欺瞞っつえば監査も議会も聴聞会も通るんでしょーね・・・
有象無象の魂と一緒に、今、おっちゃんの魂が流れ込んできた。
『おい、俺のジャケットの内ポケのカードもってってくれ』
「ん・・・エアコムのデータカード?」
『俺の最高傑作、オマエが弾いて・・・寄せて?くれた歌が入ってる。じゃあな』
「あーい。あとでカイリーに・・・うそ!成仏しちゃったよ・・・」
お礼とか言いたかっ・・・すいません、守られついでにウェットなお別れトークを愉しみたかっただけです。
あたしが離れると、おっちゃんの体は灰も残らずに気化してゆく。
「とりあえずドック行くか・・・」
胸糞解消してからな。
いひひひ・・・
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