ハムロ家

「ナミエ。なぜ怒られるのかわかるかな」


「わかりません!」


今、私はお父さんの前に正座させられている。

中世日本と呼ばれた国の拷問、正座。


お父さんはため息をつく。


そのため息・・・傷つくなあ!!!!!!!


「なぜ私とジオテラーズが骨を折ってザイオンの奴原目どもの襲撃を引き込んだと思う?考えなさい!ここでこの都市の人間や軍事施設に大きな損害が出なければ・・・次の予算委員会でリーゼ開発へのカネが引っ張れないからだよ!」


「・・・ハイ録音しましたー。うpりまーすwwwww」


「よこせ!」


「フン、成人男性、父親とはいえたかが人間如きがワラワに敵うハズがあるまいて・・・ウホホホッwww」


「くっ、このゴリラ娘がぁああああ!!!!!!!」


このオヤジは張り倒すと腐ったおん・・・ヘビの如くグヂュグヂュと嫌がらせをしてくるのでゴ・・・脱兎のごとく逃げる。


「葉室家当主、闇の姦計?!今回、ザイオンの襲撃がどのように仕組まれ・・・云々、ハイうpろーどwww」


そのまま失くなった15人のヒト達の家を回る。




「こんにちはー」


「はーい、あ、タケシの彼女?あいつ死んじゃったのよ~」


「あ、そのタケシ君の伝言聞いてください」


「えぇ?」


『かあちゃん・・・弔慰金とか全部やるから家はそのまま燃やしてくれ・・・たのむ』


「ええ?タケシ?!あんた生きてんのかい?!」


『死んでるって!あああ、もういい!俺が燃やす!!』


あぶぶ、魂を慌ててひっこめる。


「伝えましたよ!そんじゃ失礼しまぁ~♪」


「えぇ・・・すごいねえ、タケシにしかみえんかった・・・」




そんなこんなで辛くキツく悲しくも嬉し楽しい行脚を終えると、カイリーから着信。


「あにー?」


『ナミ姐死んだ?』


「どんな人?女??」


『うん、すんごい美人で白系の・・・』


「あー、まだ死んでないよ。入荷したら教えるね」


切る。


あっちの美女の基準はわからんのよね・・・男は全員天元突破級の美形だけど。



あーあ、学園祭も延期になっちゃったし・・・あ!アフロ某んとこ行くか。


家の前まで歩いていくと、知らん女と出てきた。


「おーいアフロ!きちゃったwww」


知らん女・・・せのちっちゃなキョニュウちゃん、といった感じ・・・はアフロに腕をからませると、言った。


「え・・・ともだち?」


チッ

ほれ、言ってやれアフロ。


「知らない人」


死ね!


アフロは腿筋、女は鼻パンで沈める。


女はシロートか・・・クソが。


掴みやすい頭を固定して念入りに夫々の顔を潰すと、駆けつけた警官に二人(?)からフられた挙句拳骨やヒザを激しく損傷させられたことを訴え、調書や届などは代理の者を後日署へ伺わせる旨とこの二人からなんらかの届や訴えがあれば直ちに家に伝えるコトを家の紋をスマホで表示しながら強力に要請した。


警官の男はあたしの手を包むようにとり、ズル剥けして肉が潰れたあたしの拳骨を見て言った。


「ここまでやんなら・・・なぜ殺さなかったんです?」


あたしは潤ませた目で警官を見上げる。


「あたしの・・・はじめてのひとだったから・・・!」


目をきつく瞑り、涙を絞り流した。ああ、パトラッシュ・・・じゃばばばばばば!!!!!!!!!!!!


”だって、今でも好きなんだもん!”と悩んだけど、コッチだろ。


駆け付けた警官はそれで私の意を察したのか、アフロ某を怒声で蹴りあげ(こわい!)、手錠をかけて警邏車へ引きずり込んだ。


家からアフロ某のおかあさんが心配そうにこちらを見ていたので、お辞儀をする。

返ってきたお辞儀を確認敵性レベルを判断してその場を離れた。


「心が寒い・・・」


かなりどうでもいい存在だったけど、捨てられたと分かるとこんなにも寂寥を感じるものなのね・・・はあ、わたしの胸の内はまるで冬空のよう。


「ようナミエ。・・・ん?機嫌よさそうだなあんた」


ユウか。


「えー?フられておちこんでんだけど・・・」


「いや、なんか飛び跳ねるように機動してたし・・・きどうてwww」


「一人ツッコミか。また男子系マンガでも読んでたの?」


「うん。昨日の楽器屋いくけど落ち込んでんなら付き合えば?」


「そうね、慰めてもらおうかしら。ユウの男気で」


「おう、ナミエ。お前は美しいぜ・・・おっぱい揉ませろ」


「いや、あんたの痛いからヤダよ」


「だって強く揉んだ時の顔がエロすぎんだもんしょーがないじゃん」


「なんという男理論・・・性転換したら人生の半分は拘置所ね」


アホな話を続けてる内に着いた。



会話も重力機関的な距離の伸縮があったりすんのかしら。

時間の伸縮か。


重力が距離を伸縮するように。


速度は主観的なものなのだ・・・


引き戸をあけユウが入る。


「ちわー・・・あれ?カイリーもきてたん」


「ああー、ヤクザこなくなったしもう入り浸りて感じ」


ヤクザに下着一枚でシバかれてるカイリーが見たかった・・・

などと笑うユウがこわい。

ナミエの傍にいりゃあそう遠くない未来の姿だろと寂しげに笑うカイリーはえろい。


「ここ、歩くとけっこうかかるね。ナミエと話してたからカモだけど」


「え!あたしはちょう短く感じたのに・・・ユウにとってあたしとのお喋りは退屈だったのね・・・ショック!!!!!!!」


主観時間の相対性が悲劇というエネルギーへ変換されてしまった!


「それはともかくおやっさんは?」


「あー・・・ずっとあの黒人のコ見てるよー、手弾きとAiで10分くらいまで作編曲してずっと聞いてるみたい」


「十分・・・ながっ!」


「あー、今流れてんのアレか」



野獣ギターにキラキラ光りながら泳ぐサカナの歌声て感じか。

野獣もサカナも映像作品とかでしか見たことないけど。


「ねーユウ、これもべードラて鳴ってんの?」


「ん?ああ、足してあんね。ンーンンカーカー・・・」


ん-かーん-かーでドラムだかを歌ってるらしいのだが・・・わかんない!


「ちょっと買い出しいってくっから、店みといてくれる?」


カイリー・・・すっかりおかみさん的なヌカみ・・・しっとり落ち着いた大人の雰囲気て感じ。


「ん。あたしもいこっか?」


ユウ・・・あたしから離れたいの??


「いや、ナミエだけにまかせんのはな・・・」


こどもじゃないのよ?お留守番くらいよゆーでしょよゆー。


「ダイジョブでしょ?」


ユウがこっちを向く。


「ん。行って来てイイヨ~~~」


不安だ、などと心外なことを言いながらユウと出ていくカイリー。


突然ヒマになってしまった・・・



宛所なく視線が店内をさまよう。


試奏用のエアブースが目に入った。

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