第2話 2人目なら理恵さんで その1
「まあ何の耳が生えてくるかは、実際に生えてくるまで分らないようですし」
しおりちゃんにまでフォローされてしまった。
これは由々しき事態だよ。一刻も早くリスのイメージを払拭して、狐のイメージを復活させないといけない。
それには何が必要なのか。
身長? この世界に来てから背は伸びていないので、たぶん成長期は終わっている。望み薄だ。
武器? 鉄扇を持てばいいのか。これについては試練型ダンジョンで〈鉄扇〉スキルを取得できることは分かっているので、私が使っていても問題はない。
お胸様? ノーコメントで。
何にしても、もっとケモミミが増えないことには、私の狐耳をカミングアウトできない。
ただ、理恵さんがケモミミを生やしたときにはちょっとした事件――、というほど大げさではないけど、一筋縄ではいかない感じがあって、すぐにケモミミが増えるかというと難しい。
しおりちゃんパーティーだと、悠ちゃんは意外とすんなりいけそうだけど、しおりちゃんは苦戦するかもね。
理恵さんのときは、本当にね……。
◇ ◇ ◇
「ほら、もう諦めな」
「局長……」
理恵さんがケモミミを生やすことが(本人の意思を半ば無視して)決定して、すぐに試練型ダンジョンへ、とはいかなかった。
試練型ダンジョンへお願いするには、『1週間1パーティ3回まで』という制限がある。すでに私たちは、マヨヒガから3人に君枝ちゃんと茉莉さんの5人でパーティーを組んで試練型ダンジョンへ入ってしまっているので、ここに理恵さんを加えることはできない。パーティーは5人までだ。
理恵さんがソロで行くのも何かあったときにバックアップができないので、ここは大人しく1週間待ってから、改めてマヨヒガへの依頼として理恵さんにケモミミを生やすこととなった。
そして、1週間がたって、冒険者協会に集まったところで理恵さんのやる気は低迷気味だ。
「局長は良いかもしれませんが、世界で2人目のケモミミですよ? 普通は悩むものですよ」
「どうせその内増えるんだ。2番目なんて誤差みたいなものさ」
今回の参加者は、私・愛理ちゃん・彩華ちゃん・君枝ちゃん・理恵さんの5人だ。茜ちゃんは一緒にダンジョンへは行くけど、明日香さんとペアで料理をする予定。
「理恵ちゃんには何の耳が生えるっスかね?」
「できるだけ目立たない耳が良いです……」
「ウサギの耳はちょっと長いにゃ。ぶつけたりしないにゃ?」
「普段は消しておけば邪魔にもならないね。出してるときも、体の延長の感覚で、ぶつけたりはしないね」
私たちの耳や尻尾は、ずっと隠したままだと違和感というか、なんかうにうにした感じが溜まっていくんだけど、君枝ちゃんはそういった感じはないようだ。
「新しく生えた耳なのに、しっかりと自分の体だと認識できているんですね。不思議です」
彩華ちゃんは、〈魔力見える君〉で熱心に君枝ちゃんのウサ耳を観察している。
「ほら、この中だと理恵だけがケモミミが生えてない。これじゃあ仲間外れじゃないか」
君枝ちゃんが謎理論を言い出したところで、試練型ダンジョンへ出発した。理恵さんのやる気が低迷しているとはいえ、結局やることは変わらない。
それに、理恵さんにとっても、戦闘力が増加するというプラスの面もある。
理恵さんもメインとする〈魔力纏い〉スキルがレベル10とカンストしていて成長できないでいたので、ケモミミを生やすことでその限界を突破してほしい。
「到着したわ。それじゃあ頑張ってね。こっちは猫神ちゃんと一緒にご飯を用意しておくから」
「理恵ちゃん、頑張るにゃ!」
「ミズチ様、乗せていただきありがとうございました。猫神様、応援ありがとうございます。どうなるかは分かりませんが、精一杯やってみます」
上空で2人と分かれ、私たちケモミミ生やし組は姿を消したままダンジョンへと入った。
「それじゃあ早速お願いするかい?」
「いえ、皆さんが良ければ、少し準備運動をしたいんですが」
「大丈夫っスよ!」
「はい。ボクはかまいません」
「うむ。問題ないぞ」
「ありがとうございます。それでは最初のお願いは、準備運動ができる課題をお願いしてみます」
「あ、ついでに私も入れて、2人組でお願いしといておくれ」
「……少し不安ですが、分かりました」
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