第12話 事前知識なら十分で
そのままだと柔らかく加工がしやすいが、付与をすると一気に硬くなる木を確保した。
他には、紙の原料として優れた樹皮、なめし液として使用できる樹液、とにかく硬い木なども採取できた。
素材として利用できる植物って結構ある。生産系スキルが広まっていけば、こういった知識も自然と知られるようになるだろう。
「残りはモンスター素材ですね」
採取している間にモンスターと出会えるかと思ったが、採取系は森、モンスターは草原ときれに分かれているようだ。
モンスター素材を集めるには草原へ移動しなければならない。
「次はモンスターを切ればいいにゃ?」
「はい。モンスターは好きに切っても大丈夫ですよ」
「分かったにゃ!」
「私も行きますよ!」
木こりマスターとなった茜ちゃんと、鑑定我慢でうっぷんのたまった愛理ちゃんが揃って飛び出した。2人してモンスターを切り飛ばしながらドロップアイテムを集めている。
落ちたアイテムを回収するのは私の役割で、明日香さんは茜ちゃんと愛理ちゃんの見守り係。あとは彩華ちゃんがドロップアイテムの情報をまとめて、課題に必要なアイテムを確保する。
「これならすぐに集まりそうです。いくつかは少し試験をして納品するアイテムを決めましょう」
「うん。次のアイテムはこれね」
とにかくモンスターを倒せばドロップアイテムが手に入るので、アイテムの集まるスピードは、採取が必要なものと比べて段違いだ。倒すスピードが速すぎて、リポップ待ちになるほど。
ほどなくして、必要なアイテムはすべて集まった。
「それでは納品しますね」
「合ってるかドキドキにゃ!」
「大丈夫ですよ!」
〈ダンジョンポータル〉へ集めたアイテムを納品する。愛理ちゃんは〈鑑定〉を封印しているので、正確なところは分からないが、自信があるようだ。あるいは彩華ちゃんへの信頼か。
「課題は……、成功です。クリアです」
「やったにゃあ!」
「やりましたね!」
「ふふ、おめでとう」
「おめでとう。スキルはどう?」
皆で成功をお祝いしているが、気になるのはスキルが取得できたかどうか。しっかりと時間をかけて採取したり、検証したりして納品アイテムを吟味したので、その成果があると嬉しい。
「ありました。〈物品鑑定1〉です」
見える、見えるぞ! 彩華ちゃんの頭上に高速ピコピコする熊耳が見える!
「どんなスキルなんですか?」
「ダンジョン産のアイテムを鑑定できる、アイテム限定の鑑定スキルのようです。愛理ちゃんの〈鑑定〉よりも、表示される情報は少ないですね」
スキルレベル1の段階で見れるのは、アイテムの名前と、ふんわりした説明のみ。ふんわりした説明というのは、先ほどMP回復ポーションの素材として採取した草なら「健康に良さそう」みたいな感じ。
まだスキルレベルが低いので有用とは言いづらいが、レベルが上がっていけば詳細な情報も分かるだろう。
また、使用者――つまり彩華ちゃん――の知識もある程度関係しているようで、先ほど挙げたMP回復ポーションの素材となる草だと、「MP回復ポーションの素材となる」という説明文も表示されていた。
全く知らない物でも、スキルレベルに応じて自動で情報を表示してくれるスキル、という感じだろうか。
「皆が協力してくれたおかげです」
「うにゃあ、スキルが取れて良かったにゃ!」
「すごいですよ! 1発でスキルです!」
「きっと今までの知識も加味されて、スキル取得につながったのね」
「そうですね。昨日、明日香さんのお願いに私も加わったのが影響している可能性もあります。」
「お願いが課題になった時点で基礎的な経験値が入っているのかもしれないわね。加えて、課題を実行することで経験値が手に入る」
「パーティーの内の力量を一定範囲内に保つ仕掛けとしてはありえます。でなければ、活躍できる冒険者だけが強くなりすぎます」
私や茜ちゃん、愛理ちゃんは素直に喜んでいる一方、彩華ちゃんと明日香さんはやっぱり仕組みの方が気になっている。
「挑戦ボーナス経験値ですね! あんまり多いと、寄生や放置が増えて大変です!」
愛理ちゃん的解釈によるとそういう感じになるらしい。ボーナス経験値がすごく多ければ、ただパーティーについてきているだけの人でも、どんどんスキルレベルが上がっていく。
それはちょっと不公平感があるよね。
試練型ダンジョンを作った人?も、きっと苦労して設定したんだろうな。あまりに変な設定だとクソゲー!なんて言われちゃう。サイレント修正とかも行われているんだろうか?
「次は明さんの番ね。どんな課題にするのかしら?」
むふふ。良い質問だね明日香さん。実は、昨日の〈呪符〉の課題の時から考えていたんだ。どんなスキルを上げれば、もっとミステリアスになれるか。
そういう意味で、〈呪符〉スキルの使い方を覚えられたのは良かった。単純な力押しではない、相手を手玉に取る〈呪符〉スキルは、良いミステリアスだ。
そこをさらに一歩進めるスキルは、
「私が上げたいスキルは、〈疾駆〉だよ」
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