第8話 課題のお願いなら1回限定で?
「私の〈鉄扇術〉……」
「にゃあ、元気だすにゃ」
「次はちゃんとした鉄扇でやってみましょう。ボクが強い鉄扇を作ります」
「明さん、鉄扇の使い方を愛里ちゃんに教えてあげたらどうかしら。お手本があれば、スキルも覚えやすくなると思うのよね」
「〈鉄扇術〉のコツをまとめておくね」
〈鉄扇術〉を覚えられず落ち込んじゃった愛里ちゃんを、皆で必死に慰めた。本人は結構手ごたえがあったらしく、その落差で落ち込みが深く、なかなか戻ってこれていない。
今は皆でなでなでするんだ。なでなでなでなで!
「私は諦めません!」
「ん、その意気だよ愛里ちゃん」
愛里ちゃんが復活したのに合わせて、少し早いがお昼休憩にすることにした。茜ちゃんと一緒に用意したお弁当は、3段重ねの重箱が2つ。
おにぎり・卵焼き・ウインナーの定番三銃士(諸説あり)に、唐揚げ・肉団子・鶏の照り焼きの追いお肉。そして、バランスを考えてサラダ。もちろんお稲荷さんもある。デザートは苺だ。
「茜ちゃんは新しいスキルをゲットできるよう頑張ってください!」
「にゃ! 私は〈呪符〉だにゃ!」
お昼休憩を終えて、次は茜ちゃんの番だ。でも〈呪符〉が得られる課題ってどんなものなのか想像できない。まあそこは、試練型ダンジョンさんが良い感じにしてくれることを期待しよう。
「移動するにゃ! 課題は何かにゃ?」
『全てのエリートモンスターの討伐』
「にゃ?」
ん? ダンジョンさん?
「〈呪符〉はどこに行ったんでしょうか?」
「モンスターを倒すだけで〈呪符〉が覚えられるにゃ?」
「それは難しいと思う」
うん。この課題は〈呪符〉とは関係ないね。
「どうして今回は、お願いとは関係ない課題になったんでしょうか?」
「制限かしら。回数とか時間とか」
「初回限定ログインボーナスってことですか!?」
愛里ちゃんがめちゃくちゃな事を言っているが、言いたいことは分かる。課題のお願いが1回だけだとしたら、〈鉄扇術〉を覚えるチャンスが遠ざかってしまう。
「とにかく、ここの課題をクリアしてしまいましょう。茜ちゃん、お願いします」
「分かったにゃ」
この階層は、広めのフィールドに、ゴースト系モンスターが大量に配置されている。課題になっているエリートモンスターは、見える範囲だとエリートリッチが数体だが、別の場所にもいるだろう。
「まとめてやるにゃ! 『勇者の雷(いかずち)』!」
破裂音とオゾン臭を伴って、周囲一帯のモンスターがまとめて消滅した。モンスターからモンスターへと広がっていく茜ちゃんの新技は、大量のモンスターを相手には特に有効だ。
「余裕にゃ!」
「待って。モンスターが復活してるわ」
「にゃにゃ!?」
茜ちゃんが倒したモンスターは、ゆっくりとリポップしてその数を戻している。しかし、エリートモンスターは復活していない。
「通常モンスターは無限沸きですか!」
「通常モンスターに対応しながらエリートモンスターを倒していく、っていう課題みたいね」
「普通なら苦労しそうですね」
ゴースト系モンスターってだけで、倒す手は限られてくる。主な手段は魔法になるが、モンスターが大量なら、消費するMPも大量だ。
通常モンスターを無視してエリートモンスターだけ狙うという方法も無くはないが、後をついてくるモンスターの対応を誤れば一気に窮地に陥るだろう。いわゆるトレインというやつ。
で、そんな普通なら苦労しそうな課題も、転生特典スキルを持つ私たちなら。
「全部倒せばいいにゃ!」
転生特典スキルのMP消費は、圧倒的な燃費の良さで、1発なんと1MP(※ただし例外はある)。さらに範囲攻撃もできる。
ならば、ちまちまなんてせずに、2階層で愛里ちゃんがやったように全部倒して進めば良い。
バリバリと雷音を響かせながら、無人の野を行くように、階層全体を回り、課題をクリアした。
「茜ちゃん、スキルの成長はどうですか?」
「確認してみるにゃ。うんと……、〈魔力操作〉スキルが4になってるにゃ!」
「ありがとうございます、茜ちゃん。スキルレベルが上がりやすいという効果は、まだあるのかもしれません」
狙ったスキルを取得したり上げたりすることはできないけど、スキル自体を上げることはできるなら、試練型ダンジョンの有用性はある。あとは課題をお願いできる条件が分かればいいんだけど、1回限定だけならお手上げだ。
「なるほど。キャラ限定ガチャじゃなくて、ランダムガチャですか」
また愛里ちゃんがめちゃくちゃな事を言ってる。
「次は彩華ちゃんの番だけど、どうする?」
「課題をお願いしてみます」
9階層に移動して課題を確認してみるも、前の階層と同じようにお願いとは関係ないランダムな課題だった。続く10階層は、私の番で、やっぱり課題はランダム。
ちょうど2巡目が終わりとなる11階層もランダムな課題だったので、一旦ダンジョンを出て休憩することにした。
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