第2話 ダンジョン行くなら観光で
〈水没ダンジョン〉をクリアして、茜ちゃんもBランク踏破証をゲットした。これでBランク冒険者試験を受けられるようにはなったが、肝心の冒険者協会の方がそれを止めた。
単純に忙しすぎたんだ。
世間では『ダンジョンコラプス』の影響は収まってきたが、冒険者協会はどうかというと、ようやく地獄の一丁目を超えたところ。まだ二丁目とか三丁目とかが残っている。
まず、消失した〈門〉の跡地だけど、普通なら1週間ほどで新たな〈門〉が出現する。で、調査やらなんやらが行われて、施設も建設して開放という流れだ。
『ダンジョンコラプス』の跡地では、いまだに新たな〈門〉が出現していない。
5つの〈門〉が同時に消失するという前代未聞の事態が起こったので、その後の展開も全く予想が付かない。予想が付かないから放置で良いかと言うと、当然そんな訳もなく、警備に人員が駆り出されている。
すると、非定常の業務に手いっぱいで、通常の業務が人手不足になる。冒険者ランクアップの試験も、予約優先で月に1件とかそんな感じ。
「い、今から予約しても、実施は、ら、来年度だそうです」
少なくとも今年度中は『ダンジョンコラプス』の影響を考えて、通常業務を縮小するらしい。
「彩華ちゃんの冒険者ランクも上げられないし、どうしよっか」
明確な目標が無くなってしまって、ちょっと迷子だ。しいて挙げるとするなら、レベル上げとかスキル上げかな。ただ、それだけを目標にすると、すぐに飽きてしまいそう。
「それなら、各地にある面白いダンジョンを回ってみるのはどうかしら」
そう提案したのは明日香さん。伊達にダンジョンをめぐっているわけではない。いろいろと面白いダンジョンがあるんだと言う。
「へー、観光みたいで面白そうですね!」
「移動は私に乗っていけば時間もかからないし、彩華ちゃんのお仕事の都合も付けやすいんじゃないかしら」
「そうですね。ポーションの作製はほぼ移管できるようになってきましたし、少し〈マジックアイテム〉を余分に作っておけば問題ありません」
彩華ちゃんが社長を務めるネクター社にも、冒険者協会によるポーション作製の影響がやってきた。冒険者協会所属の出向社員の指導の下、社員に〈調合〉スキルでポーションを作製させている。
もう少したてば、ポーション作製は完全に彩華ちゃんの手を離れるだろう。
「あ、明日香さんの、おすすめダンジョンは、あり、ますかっ」
「そうね。関東局にない珍しいのだと、東北局に『試練型ダンジョン』があるわ」
試練型ダンジョンというのは、ダンジョンの1階層ごとにクリアする課題が提示される珍しいタイプのダンジョンだ。
この課題をクリアすることで階層を進むための〈ダンジョンポータル〉が現れ、次の階層へ進むことができる。
課題の内容は、「モンスターを○○体倒す」のような簡単なものから、「○○体のモンスターを指定範囲内に集める」といった変なもの、「隠しスイッチを○○個押す」という探索系など様々ある。
ダンジョンに挑むパーティーによってはクリア不可能な課題が提示されることもある。
課題がクリアできなかった場合や、クリアを諦める場合は、各階層に設置されている〈ダンジョンポータル〉に触れれば良い。その時点で、課題は中止され、1階層へと移動となる。
この性質上、1階層はモンスターの出現しない単なるホールになっている。
「試練型ですか、面白そう!」
「いつもはフィールド型ばっかりだもんね」
試練型ダンジョンの割合は1割もない。確か日本だと100あるダンジョンの内、試練型は3つだったかな。
「明日香さん、何か用意するものはありますか?」
「特にないかな。どこからでも1階層に戻ってこれるから野営も必要ないし……、お弁当くらい?」
気軽に挑戦できるのも試練型ダンジョンの良い点だ。
また、ダンジョン内はパーティーごとに別空間になっており、内部で他のパーティーと会うことはない。よって混雑とはほぼ無縁のダンジョンになっている。
「〈門〉さえ通ってしまえば、あとはのんびり攻略もできるのよ」
〈門〉だけは1つしかないので、そこは混雑することもある。それでも入ってしまえば関係ない。
「じゃあ明日からは、その試練型ダンジョンに行ってみようか」
「はい!」「はい」「にゃあ!」「楽しみね」
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新作始めました。
『クラスごと異世界に召喚されたら、ひとりだけバイオロイドでした』
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