第23話 力なら合わせて
「皆無事にゃ!?」
「大丈夫です猫神様。猫神様のおかげで無事です」
茜ちゃんの転生特典スキルの中には〈回復魔法〉もある。事前にかけておいた持続回復によって、モンスターに飲み込まれた冒険者もなんとか一命をとりとめていた。
「良かったにゃぁ……」
「それよりも、この情報を伝えるのが先です」
「そうにゃ! 皆にも注意するにゃ!」
茜ちゃんからの情報によって、愛里ちゃん、彩華ちゃん、明日香さんの担当ダンジョンでは事前に準備ができた。
愛里ちゃんは〈水魔法〉を多層展開して圧殺し、彩華ちゃんはベアトリクスが変形してなんかすごいビームを撃って、明日香さんは龍の姿になって物理でパワーして敵を殲滅した。
茜ちゃんの担当ダンジョンと同じように、どこも〈門〉は消失し、それからモンスターが出現する様子はない。
しかしそれに反比例するかのように、中央のダンジョンではモンスターの数が増していた。狐火をさらに巨大化させることで、なんとかモンスターを抑え込んでいる。
しかし、ついには狐火を抜け出すモンスターも出てきた。理恵さんと君枝ちゃんが対応しているが、段々とその数は多くなっている。
「大変にゃ!」
「猫神様。ここは私たちに任せて、玉藻の前様の援護に行ってください」
「にゃ。でも、ここも何があるか分からないにゃ」
「大丈夫です。私たちも十分休憩できました。そうだな、お前たち!」
「おうっ!」
「まかせでください、猫神様!」
「俺たちにまかせてください!」
「みんにゃ……。分かったにゃ! ここはみんにゃにまかせるにゃ!」
「はい。猫神様もお気をつけて」
「行ってくるにゃ! 全部終わったら打ち上げパーティーにゃ!」
「「「おうっ!」」」
「来るにゃ、『雷猫(らいびょう)』!」
――にゃおーん!
パンッと小さな音を立てて、輪郭がぼやけた猫が1匹現れた。体高が1メートルほどもある大きな猫で、どちらかというと虎と言った方が適切かもしれない。
体は雷で構成されており、そのままでは触れることもできないが、電磁相互作用によって疑似的な体を構成することもできる。ただし、下手に触ると感電する。
「出発にゃ!」
建物を出て、空を駆けていく茜ちゃんを見送って、冒険者たちは気合を入れ直した。ひとまずの危機は去ったようだが、まだ何が起こっても不思議ではない。優しくも頼もしい猫神様に心配をかけないよう、警戒は怠らない。
「しっかり働くぞ!」
「「「おうっ!」」」
中央のダンジョンでは、モンスターの抵抗がより強くなっていた。ただやみくもに現れるのではなく、数匹が一塊となって現れ、連携して狐火の範囲から抜け出そうと試みている。
「少々まずいのう」
「もっと火力を上げられないのかい?」
「街が燃えても良ければできなくはないが」
「それはちょっと……。最終手段だね」
意外とこの狐火を維持するのは大変だ。ただ浮かべているだけじゃなく、周囲へ熱がいかない様に制御もしている。これがもっと大きくなると、制御する範囲もどんどん広くなり、その内私の手に負えなくなるだろう。
「どうしたものか」
「にゃ! 助けに来たにゃ!」
「猫神!」
茜ちゃん! どうしてこっちに来たの、担当するダンジョンはどうなったの?
「周りの4つのダンジョンは、〈門〉が消えちゃったにゃ!」
「そんなことになっておったのか」
抜け出たモンスターへの対応などで、他の場所がどうなっているのか確認ができていなかった。緊急時には直接連絡が来ることになっていたので心配はしていなかったけど、そんなことになっていたとは。
「他の皆も来るにゃ! 一緒にモンスターをやるにゃ! うにゃにゃにゃ、『勇者の雷(いかずち)』!」
茜ちゃんから放たれた雷は、狐火に合わさり、出現するモンスターを炎と一緒に焼き尽くしている。
「ほう。合体技というわけか」
「そうにゃ! 勇者の力にゃ!」
そういうのとっても良いと思います! 仲間と力を合わせるのってロマンだよね。1人でも倒せない敵も、仲間と力を合わせれば倒せる。そういう風にできてる。
「あたいもいるっスよ! 『水景・大水獄』! これで玉藻さんが火力を上げても、周囲は安全っス!」
「良く来てくれた真神」
愛里ちゃん! 狐火を囲うように展開された『水景・大水獄』。周囲の温度が一気に下がった。わずかに漏れていた熱気も遮断されて、私が全力を出しても多少は大丈夫だろう。
「玉藻さん、4つのダンジョンの崩壊時のデータからすると、こちらでも同様のことが発生しそうです。残り時間は2分です」
「さすがはキムンカムイじゃ」
彩華ちゃん! さすが彩華ちゃん。冷静にデータを分析してくれている。周囲の魔法でちょっと見えにくいけど、〈門〉のひびが大きくなっているのは分かる。
いつモンスターの津波が襲ってくるのかが分かれば、そのタイミングに合わせて全力を出せば良さそうだ。
「すごいわね。これが『マヨヒガ』」
「ミズチも、良く来てくれた」
「私は上空で警戒しているわね。ついでにあの2人には〈浮遊〉をかけておくわ」
「おっ、こいつは面白いね」
「わわっ、浮いていますよ!」
明日香さんは上空の警戒と、理恵さんと君枝ちゃんに〈浮遊〉をかけてくれた。2人は気軽に空を飛んだりできないから、正直ありがたい。
「よし。準備は整ったようじゃな。あとは迎え撃つだけじゃ」
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