第18話 戦闘準備なら順調で
結局のところ、とれる戦法はそれしかない。
1つでもダンジョンブレイクを抑え込めなければ、被害は甚大なものになる。そして、冒険者だけで抑え込むのは不可能に近い。
『それで、配置はどうするんだい?』
対策本部でWeb会議に参加している君枝ちゃんが質問した。
君枝ちゃんの服装は、いつものスーツではなく、冒険者然としたものだ。元Aランク冒険者として、今回の『ダンジョンコラプス』では陣頭指揮を執ることになっている。対策本部には副局長が控える予定だ。
「中心を妾が、残りは他の者にまかせるが、出てくるモンスターはどんなものがおる?」
「ゴースト系が2つ、人型が1つ、虫系が1つです」
「ふむ。どう配置したものか」
「あたいはゴースト系の所に行くっス!」
「それなら私もそうしようかな」
愛里ちゃんと明日香さんがゴースト系ね。愛里ちゃんは〈水魔法〉があるし、明日香さんの〈龍爪〉はゴースト系にも普通に効く。
まあ戦えるか?という意味では、私たち全員が普通にゴースト系モンスターと戦えるから、誰でもいいっちゃ誰でもいい。むしろ残りの相性のために2人が立候補した形だ。
「それならボクは虫系相手ですね」
虫系のモンスターは、弱点が豊富だ。熱に弱かったり、冷気に弱かったり、水に弱かったり。多彩な攻め手を持つ彩華ちゃんにピッタリだろう。
「残りは人型にゃ? 私がビリビリさせてやるにゃ!」
最後に残ったのは人型モンスター相手の茜ちゃん。〈雷魔法〉でビリビリしびれさせれば、ほぼ無力化できる。
『わかったよ。冒険者たちも少しは派遣できると思うけど、人数は50人程度が関の山だろうね。頼ってばかりで申し訳ないが力を貸しておくれ』
「その分避難や物資の面で働いてくれておろう。どちらが偉いというわけでもなし。ともに災害へと挑む仲間じゃ」
『はは、嬉しいことを言ってくれるじゃないの。あんたたち、「マヨヒガ」が全力を出せるようにしっかりやるんだよ! 私はすぐにここを出る、後を頼んだよ!』
『『『はい!』』』
おー、士気が高い。皆の目がギラギラと輝いている。でも会議中に出ていくのはどうかと思うよ君枝ちゃん。ほら、山根ちゃんの顔が渋くなってる。
『それでは会議はここまでといたします。「マヨヒガ」の皆さん、ご参加ありがとうございました。後のことは後藤におまかせください。では失礼いたします』
「うむ」
無事?Web会議が終了した。
「ご参加ありがとうございました。周囲のダンジョンの受け入れ態勢が整うまで、しばらくこちらでお休みください」
「了解っス!」
今すぐ移動して戦闘準備、というわけにもいかず、まずはダンジョン周辺の避難誘導が必要だ。それから物資を運び入れ、ようやく冒険者を受け入れられる状態になる。
「しばらく時間がありますから、ボクは〈マジックアイテム〉の手入れをしておきます」
彩華ちゃんは真面目だ。前に使っていた〈回転式魔力クロスボウ〉や四脚の上に銃っぽいのが乗っかったオートタレット、空を飛び回るドローンなどをカチャカチャといじっている。
「私は英気をやしにゃうにゃ」
茜ちゃんは私の膝の上でお休み。一晩や二晩徹夜したくらいでどうにかなるほどやわな獣人ではないので、これは完全に甘えたいだけの行動だ。しょうがないからなでなでしてあげよう。
愛里ちゃんも、もふ玉を取り出して明日香さんと一緒にもふもふしながら休んでいる。
受け入れ態勢が整うまでは今しばらく時間がかかりそうだし、私も少し気を抜いて休んでおこうかな。いでよもふ玉!
およそ3時間後、理恵さんから受け入れ準備が整ったとの連絡があった。もっと時間がかかると思っていたけど、さすがは冒険者協会。普通なら、避難誘導だけで半日とかかかりそうなものだ。
ここからは私たちも移動して、ダンジョンブレイクの対応にあたる。Web会議でも言ったように、中心は私で周囲に皆を配置する。
一番危険なのは中心のダンジョンで、『ダンジョンコラプス』の規模が大きければ撤退も視野に入っている。その場合は、周囲から包囲殲滅に切り替える。できればそうならないように抑え込みたい。
「皆、油断するでないぞ」
「もちろんっスよ! すぐに片付けて玉藻さんの応援に駆け付けるっス!」
「どっちが早いか競争にゃ!」
「ボクはゆっくり確実にいきます」
「これは私も負けていられないね」
心配していたが、皆緊張などはしていないようだ。実際に大量のモンスターと相対したことがあるのは、私と愛里ちゃんだけだけど、皆にも私たちと同じだけの力があるのは分かっている。いつも通りやれさえすれば、問題はない。
「ふふ。元気に戻ってくればそれで良い。さあ、行ってくるのじゃ」
「行ってきますっス!」
「行ってくるにゃぁ!」
「行ってきます」
「また後でね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます