第10話 張り切るなら蹂躙で

 彩華ちゃんたちと合流した私たちは、一旦家へと戻った。


 溜まっていたゴミの処理、洗濯物、装備の手入れ、いろいろとやることがあり、落ち着いたのは夜も深まってきた時間だった。


「きょ、今日は、一緒に寝ましょうっ」


「テントで一緒に寝るのは難しかったですからね! 久しぶりです!」


「茜ちゃんは真ん中で。はい、ここです」


「私が上なの?」


 珍しく、茜ちゃんの上に私が被さる形での就寝だ。いや、体型的にはおかしくはないんだけどね。いつもは逆だから新鮮だ。


「茜ちゃんがBランク冒険者試験を受けるときは大変そうです」


「うん。一人で試験受けられるかな?」


「茜ちゃんは頑張り屋さんなので、その頃には大丈夫になっていますよ」


 幸せそうに眠る茜ちゃんを見ながら、3人でこそこそ話している。よほど安心したのか、茜ちゃんはベッドに入ってからすぐに眠ってしまった。


 甘えられるのは嬉しい反面、茜ちゃんにもしっかりと自立してもらわないとね。どうやって慣れさせていくか相談しながら、私たちもいつの間にか眠っていた。



「『弐ノ型 剛雷(ごうらい)』! にゃあ!」


 エンチャントによって強化された力で、茜ちゃんがモンスターたちを一刀両断した。ただでさえ転生特典スキルの〈剣術〉があるのに、そのうえ〈雷魔法〉でエンチャントまでして完全なるオーバーキルだ。


 雷を纏った飛ぶ斬撃で、モンスターのグループを倒しきった。


「見てたにゃ? 私はすごいのにゃ!」


「うん。茜ちゃんは強いね」


「かっこいいですよ、茜ちゃん!」


「それにとっても可愛いですね」


「にゃぅ~」


 Bランク冒険者試験が終わってから2日後、私たちは試験場所となっていたダンジョンへ戻ってきていた。


 跡をつけていた彩華ちゃんたちも40階層の〈ダンジョンポータル〉を登録していたので、キリ良く踏破してしまおうという考えだ。


 おそらく50階層か55階層が最奥だろう。


 それで、皆でダンジョン攻略楽しいなと、にゃん語が出るほど茜ちゃんが張り切っている。モンスターが出る、茜ちゃんが倒す、皆に褒めてもらう、茜ちゃんが喜ぶ、この繰り返し。


 45階層の階層ボスですら――、


「『参ノ型 招雷(しょうらい)』!」


 鎧袖一触(がいしゅういっしょく)だ。ちなみに『参ノ型 招雷(しょうらい)』とは、対象に雷を落とす攻撃技で、ピカッと光ったら全部終わってた。


〈雷魔法〉の攻撃速度は私たちの中でも随一で、ダンジョンを進む速さも試験中とは段違い。これは先に進んでいる末永兄妹に追いついてしまうかもね。


「今日はここまでにしよっか」


 とはいっても、急ぐものでもないので、夜は普通にお休みをする。


「テント出しますね! よいしょっと!」


「お夕飯は茜ちゃんと作ったものがありますから。愛里ちゃん、お願いします」


「はーい!」


「もふ玉も出しておくにゃ!」


「〈見守り君4号〉を起動しておくので、寝ずの番は不要です」


 うーん、快適。こちらも試験中とは段違い。


 展開済みのテントに、ベッド。温かいご飯に、ちょっと頑張ればお風呂だって入れちゃう。


 私と茜ちゃんは戦闘に特化しているから、愛里ちゃんと彩華ちゃんのスキルがありがたいね。皆でベッドで横になり、ぐっすり就寝。翌日も元気に攻略だ――、と寝静まった夜半過ぎ、事件は起こった。


 ぐらぐらと地面ごとベッドが揺さぶられる。その感覚に私はすぐに目が覚めた。


「地震!」


 一般的な地震大国民としての技能に、揺れから震度を予測するものがあるが、その技でいえば震度は3くらい。いやふざけてる場合じゃないか。


「皆起きて!」


 ただの地震なら問題――はあるかもしれないけど、緊急ではない。一番危ないのは、これがモンスターの攻撃だったらってこと。


 声を掛け、槍だけを持って外へ飛び出した。〈気配察知〉は全開にして、敏捷性アップの〈呪符〉も使っておく。


 まだ揺れは続いているが、それくらいで崩されるようなやわな体はしていない。


「敵はなし」


〈気配察知〉に反応はない。目視でも異常は見当たらない。


「何があったんですか!?」


「〈見守り君4号〉に反応はありません」


「揺れてるにゃあ!」


 皆も慌ててテントから出てきて、周囲の状況を探っている。ひとまず、モンスターからの攻撃の線は外して良さそうだ。


 そうこうしている内に、揺れは収まった。


「彩華ちゃん、外で地震の速報はある?」


「ありません。それに、ダンジョンはいわば異世界です。地球の地震がダンジョン内に影響したという報告はありません」


「ダンジョン内で地震が起こったという記録はあるんですか?」


「あります」


 あるんだ。火山のフィールドとかそういうのだろうか。


「〈ダンジョンコア〉を回収した際、深層付近では地震のような揺れが観測されます」

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