第8話 水着買うならビキニで
「海に行きましょう!」
唐突でもない愛里ちゃんの宣言で、海に行くことが決まった。
最近、海水浴場とか貸し切りプライベートビーチとかコテージとか調べてたもんね。というか私たちも一緒に調べてたもんね。
「どこに行きたいか決まったの?」
「はい! 彩華ちゃんと選びました!」
私はどこでもよかったので、2人に選んでもらった。特に彩華ちゃんは、前世を含めて初めての海水浴だ。できるだけ希望は聞いてあげたい。
どれどれ。ふむ、宿泊施設付きのプライベートビーチで1泊2日ね。近くには水着でも入れるレストランがあって、夜はバーベキューも可と。あ、食材は準備してくれるんだ。初めてだから、お手軽なプランにしたんだね。
「良いんじゃないかな」
「パラソルとかビーチチェアも貸し出してくれますよ。私たちが用意するのは、水着だけです!」
「水着なんて初めてです」
「早速買いに行きましょう!」
そういうわけで、唐突に買い物へ行くことが決まった。今度は本当に唐突だ。
目指す場所は、やっぱり『東京アドヴェンチャーセンター』。ここが便利すぎるのが悪いんだ。何でもそろってるからね。
「あ、どんな水着を買うかは秘密にしましょう! 当日にお披露目です!」
「別に良いよ」
「わかりました。事前調査はしっかりしておきましたら、適切な水着を選べると思います」
愛里ちゃんははしゃぎすぎで、彩華ちゃんは気負い過ぎだ。自分の好きな水着を買えば良いよ。
「制限時間は1時間です。よーいスタート!」
1時間って、そんなにいる?
疑問に思いつつも2人と別れて水着売り場へ向かう。この時期は水着が多く売れるからか、水着を置いているお店がいくつもある。
どのお店をチョイスするかから考えると、1時間というのはちょうど良いのかもね。
そして私は迷わずに、あるお店を目指す。向かった先は、和ロリ専門店『流々(りゅうりゅう)』だ。そう、玉藻の前コスプレセットを購入したあのお店。
あれからも何度か来ていて、可愛い袴や足袋、下駄なんかを購入している。メンバーズカードももちろんあるぞ。
「いらっしゃいませ~」
あ、見たことあるお姉さんだ。
「あの、水着を見せてもらっても」
「もちろんですよ~。こちらへどうぞ~」
この『流々』でも水着を売っていることは、ちゃんと調べてある。ついでに調べて知ったんだけど、女性は水着の下にもう1枚下着をつけるらしい。調べておいて良かった。
「ここからあっちが水着です~。どのようなタイプをお考えですか~?」
「えっと、折角だからビキニがいいかなって」
「まあ!」
うん、折角だからね。うん。プライベートビーチの貸し切りだし、誰かに見せるでもないけどちょっと大胆にしてみたい。夏の冒険だ。
「お客様はスラリとしていてスタイルも良いですから似合うと思いますよ~」
「ありがとうございます」
「可愛い系にしますか~? それともセクシー系にしますか~?」
いきなり究極の選択みたいな質問がきた。可愛い系はまだ慣れていると思う。セクシー系はちょっと背伸びしてる感があってまだ恥ずかしい。
「クール系もありますよ~?」
クール系、そんなのもあるのか。試しに見せてもらったセクシー系とクール系は、どちらも布面積がとっても小さい。こんなのはまだ無理だ。
「可愛い系、にします」
「あら~」
可愛い系は、しっかりとした布面積にフリルやリボンが付いている。これなら耐えられるレベルの恥ずかしさだ。
「好きな色はありますか~?」
「赤系統があれば」
「こちらとこちら、あとこちらも、こっちもいいわ~」
初めて見る素早さでいくつもの水着をかき集めてくるお姉さん。なんという素早さだ。もしかすると〈身体強化〉スキルを持っているのかもしれない。アパレルショップって力仕事も多そうだから、おかしくないかも。
「この中に気になる物はありますか~?」
左から、フリルでバストが覆われている感じのやつ、ハイネックで胸元から首まで覆われているやつ、肩紐がないやつ、紐を首でつるすやつ、すっごい布面積が小さいやつ。最後のはなんなの。
この中で私が選んだのは、紐を首でつるすやつ。胸全体がしっかりと覆われてて、かつビキニっぽさもある。そしてブラ全体がリボンっぽくなってて可愛い。
「ホルタートップビキニですね~」
そういう名前らしい。
「これが一番可愛いです」
「気に入ったのが一番ですからね~。サイズは、メンバーズカードを見せていただいても~? はい、ありがとうございます。これですね~」
いよし。好きな水着を選べたぞ。ついでに水着の下につける下着と、ラッシュガードも買った。ラッシュガードは白色だ。
「ポイントが溜まってますね~。次回ご利用時に1,000円分の商品券としてご使用になれます。ありがとうございました~」
「ありがとうございました」
ミッションコンプリートだ。
集合場所へは私が一番乗りだった。
その後すぐに2人も来たから、目当てのお店を決めていたのは私だけじゃなかったのかも。
「気に入ったのを買えた?」
「バッチリです!」
「はい。ボクもちゃんと買えました」
「うん。じゃあ日焼け止めとかタオルとか、必要なものを買いに行こう」
愛里ちゃんは水着だけでいいとか言っていたけど、そんなことはない。他にもいろいろと必要なものはある。
ここでは3人そろって買い物を楽しんだ。愛里ちゃんが変なサングラスを買おうとしたり、彩華ちゃんが究極の日焼け止めを作ろうと言い出したり、皆テンションが上がってた。
遠足前の小学生みたいだ。
「明さんも人のこと言えませんよ。あんなに浮き輪を抱えて」
「……はい」
私もだったみたい。
まあそんなこともありつつ、海に行く準備は整った。
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